- 2025年10月21日
関節リウマチ(RA)患者さんはリンパ増殖性疾患に罹患しやすいです。その対応も確認してください。

関節リウマチ(RA)患者がリンパ増殖性疾患(LPD)に罹患するリスクが高いのは、RA自体の慢性的な免疫異常と、治療薬による免疫抑制が主な原因です。特に、メトトレキサート(MTX)の長期使用は、MTX関連LPD(MTX-LPD)と呼ばれるLPDの一種を引き起こすことが知られています。
以下に、RA患者のLPDに対する一般的な対応方法を示しますが、個々の状況によって最適な対応は異なります。
症状の観察: 首、わきの下、足の付け根などのリンパ節の腫れに注意する。
全身症状のチェック: 原因不明の発熱、倦怠感、体重減少、寝汗といった「B症状」がないか確認する。
血液検査: 定期的な血液検査で、リンパ球数の変化などを観察する。特に、LPD発症リスクの高い患者は、末梢血のリンパ球数の変動を綿密にフォローする。
細かなエビデンスは下記の通りになります。
メタ解析
・SLE、SjS、RAと非ホジキンリンパ腫(NHL)の標準化罹患比はSLEで7.4、SjSで18.8、RAで3.9であった。(Zintzaras E, et al : Arch Intern Med 2005 ; 2025-2030)
・RAにおいてリンパ増殖性疾患(LPD)の危険因子をCox回帰分析で解析すると、年齢とMTXが有意な因子であった。MTXは8mg/週を超えると優位にリスクが増加する。
・疾患活動性が高い症例は悪性リンパ腫合併リスクがあがる。(Honda S, et al : Mod Rheumatol online ahead of print. doi:10.1080/14397595.2020.1869370)
MTX-LPDの特徴
・B症状(38℃以上の発熱/10%以上の体重減少/盗汗)のいずれかでも出現した割合は約3割。
・リンパ節腫脹は単リンパ節腫脹であることが約半数。頚部・腋窩・腹腔内どこでもありうる。
・節外病変とすると口腔・咽頭粘膜・消化管・皮膚・皮下組織の順に多い。
・発症時におけるsIL2Rの中央値は1080 U/ml。2000以上は約25%。
・疾患活動性が良好であるにも関わらず、血性LDH上昇、CRP上昇、リンパ球減少が見られたら疑う。
LPD発生時の対応
・免疫抑制薬中止→治療なしで自然退縮する症例が約4割。MTX-LPDに限れば約7割が自然退縮する。
・自然退縮する場合は、免疫抑制薬中止後2週間で9割以上退縮が始まる。
・MTX中止後、リンパ球数の回復がみられる症例は自然退縮する可能性が有意に高い。一方自然退縮しない症例はリンパ球の回復が見られなかった、との報告あり。(Saito S, et al : Rheumatology(Oxford)2017 ; 56 : 3045-3051.)
※リンパ球の減少の解析ではTh1細胞、エフェクターメモリーCD8細胞の減少によるもので、MTX中止後4週目にはこれらのT細胞が回復していたとの報告あり。(Saito S et al : Front Immunol 2018 ; 9 : Article 621)
・自然退縮後、5年再発率は25%。
LPD発生後のRA治療
・MTX-LPDの場合はMTXの再投与は推奨されない。
・その他のLPDの場合は明確な結論が出ていない。
柏五味歯科内科クリニック
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