• 2025年10月25日

全身性強皮症のレイノー(Raynaud)現象の治療

全身性強皮症におけるレイノー現象は、主に寒冷刺激が原因で、手足の指先が白くなったり紫になったりする、血流障害の一種です。治療法は、まず寒冷刺激を避け、指先を温めるなどの保温が基本となります。症状がひどい場合は、血管拡張薬などの薬物療法や、根本的な原因となる全身性強皮症自体の治療も行います。

※レイノー現象とは

  • 症状:寒冷刺激などで指先が蒼白になり、次に紫色(チアノーゼ)に変化し、最後に赤くなります(白色→紫色→赤色の三相性)。痛みやしびれを伴うこともあります。
  • 原因:手足の指先の細い血管が過剰に収縮することで、血流が悪くなります。全身性強皮症では、血管が硬くなる線維化も血流障害の一因となります。
  • 全身性強皮症との関連:全身性強皮症の約80〜90%の患者にみられる代表的な症状で、初期症状となることも多いです。

□生活上の対策(セルフケア)

  • 保温:寒冷刺激を避けることが最も重要です。手袋やマフラーで防寒し、冬場の部屋の温度差にも注意します。手足は常に温めるようにします。
  • 禁煙:喫煙は血行を悪化させるため、禁煙が大切です。
  • その他:振動工具の使用を避けるなど、症状を誘発する要因を避けます。

薬物療法

  • 血管拡張薬:カルシウム拮抗薬などが一般的に使用されます。
  • 抗血小板薬:血小板の働きを抑える薬が使われることもあります。
  • プロスタグランジン製剤:難治性の指尖潰瘍など、重症例では点滴加療を行います。

薬物療法に関してはエビデンスを共有しておきます。

■SScのレイノー症状に対するCa拮抗薬

SSc患者16例においてニフェジピンとプラセボをランダム化クロスオーバー試験。

プラセボと比較しニフェジピンは有意にレイノー現象の頻度、期間、程度を改善させた。

SSc患者のレイノー現象に対するCa拮抗薬のメタアナリシスでは5つの試験でニフェジピン(10~20mg/day)がプラセボに対し有意にレイノー現象の頻度、期間、程度を改善させていた。

→実臨床で頻用されています。

■SScのレイノー現象に対するサルボグレラート(アンプラーグ🄬)

57名のSSc患者にアンプラーグを投与。冷感が29%で改善、しびれ間が35%で改善、疼痛が28%で改善。更に43%でレイノー現象の頻度の減少を認め、持続時間が43%で減少した。

レイノー現象の頻度および持続時間はベラプロストNaに比較して有意に改善したという報告もある。

11例のSSc例の検討でも皮膚潰瘍経およびSkin-index16が有意に改善した、と報告ある。

→ベラプロスト徐放剤と同様のエビデンスでレイノー現象に対して投与推奨とされている。

■SScのレイノー現象に対するシロスタゾール

10名のSSc患者がシロスタゾールを内服。3か月後にはレイノースコアが有意に改善。

この結果をもとに施行された「レイノー現象を有するSSc患者」に対するシロスタゾールとプラセボによるRCT。

シロスタゾール群では投与4週後にレイノー現象の有意な改善が見られ、副次的評価項目として平均橈骨動脈径の有意な拡大を認めた。

多くのエビデンスはないが、位置づけとしては「ベラプロスト」「アンプラーグ」と同列に「シロスタゾール」も位置付けられている。

■SScのレイノー現象に対するベラプロスト(プロスタグランジンI2製剤)

107名のSSc患者を対象としたRCTでは、ベラプロスト徐放剤はプラセボに比較して、指尖潰瘍やレイノー現象に対する有意な抑制効果を示さなかったが、指尖潰瘍を改善させる「傾向」を見せており、overall well beingは有意に改善させていた。

SSc患者12例の検討ではベラプロストNa徐放剤(ケアロードLA🄬)はレイノースコアや自覚症状を有意に改善させた、という報告もある。

→以上のエビデンスから投与を検討してよい推奨レベルとなっており、実臨床でも使用します。 

■SScのレイノー現象に対するプロスタグランジン製剤(入院中の場合)

36例のSSc患者に冬季アルプロスタジル(リプル🄬)を5日間連続投与/週を6週間行ったところ、レイノー現象と指尖潰瘍の治療に関して有意に改善を認めた。

レイノー現象(1週間後に20%減(p<0.05)、2週間後に41%減(p<0.005)、3週間後に53%減(P<0.0005))

14例の指尖潰瘍を有する症例のうち12例が完全に治癒した。

エビデンスレベルとするとベラプロスト、アンプラーグ、シロスタゾールと同程度とされています。

その他の治療:

  • 基礎疾患の治療:原因となる全身性強皮症自体の治療を並行して行うことが重要です。
  • 潰瘍の処置:指先の潰瘍は血流が悪いために治りにくく、形成外科と併診し処置を行っていきます。

柏五味歯科内科クリニック

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