• 2025年11月1日

上腕ロコモーター徴候:重度の弁膜症に伴う幅広い脈圧と拡張期の流れの逆転により、大動脈弁逆流の患者に見られます

60歳男性。既往に脳梗塞あり。

3ヵ月前から労作時呼吸困難感が出現し内科外来受診。

受診時BP 141/55、HR 86。

身体所見では右第2肋間腔に2/6の収縮期雑音と3/4の拡張期雑音を認めた。

両側の上腕動脈は蛇行し、目に見えて拍動性を示した。

(下記の通り上腕動脈が太くなっている。収縮期に拍動し、拡張期に虚脱する)

「上腕ロコモーター徴候」と診断。

上腕ロコモーター徴候は、重度の弁膜症に伴う幅広い脈圧と拡張期の流れの逆転により、大動脈弁逆流の患者に見られることがある。またこの徴候は重度の動脈硬化患者にも見られることがある。

経胸壁心エコーが施行され、severe ARを認め、左心拡大、大動脈起始部拡張も確認された。

上腕動脈のドップラー超音波検査により、拡張期の血流の逆転が明らかになった。

最終的にはsevere ARに対し、外科的大動脈弁置換術が施行された。

N Engl J Med 2023; 388:e1

DOI: 10.1056/NEJMicm2206470

上腕ロコモーター徴候 (Locomotor Brachii Sign)の解説

主に大動脈弁逆流症で観察される特定の身体所見です。これは、上腕動脈の強い拍動と、それ伴う上腕の屈曲(動き)が視覚的に観察される徴候です。心臓から駆出された血液が逆流するため、脈圧(最高血圧と最低血圧の差)が非常に大きくなり、その結果、末梢動脈で強い拍動が認められることが原因です。 

聴取される身体所見は下記の通りになります。

  • 視診: 患者の上腕部を見ると、動脈の拍動に合わせて腕がぴくぴくと動くのが確認できる。
  • 触診: 上腕動脈を触知すると、非常に強い脈動を感じる。 

この徴候は、重度の大動脈弁逆流症を示唆する重要な手がかりの一つとなります。

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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