• 2025年10月7日

被膜性腹膜硬化症(肥厚した壁側腹膜)

52歳女性。末期腎不全にて腹膜透析にて管理されている。1ヵ月前から腹部違和感が持続し、内科外来受診。

既往としては12年間の腹膜透析中に3回の細菌性腹膜炎歴がある。

今回は発熱や下痢・便秘等は認めなかった。

身体所見においても特記事項なし。

採血所見においてもCa値やintact-PTH値を含め正常範囲であった。

精査のためCT施行。臓側腹膜および壁側腹膜に沿って広範囲な石灰化が認められた。

「被膜性腹膜硬化症」の可能性が高いため、診断を確定するために腹腔鏡検査が施行された。

チョーク状の沈着物で覆われた著しく肥厚した壁側腹膜が見られた。

また腹膜と炎症を起こした腸管膜とのあいだの癒着も見られた。

病理組織検査では、壁側腹膜の線維化と石灰化が認められ、広範囲の石灰化を伴う「被膜性腹膜硬化症」の確定診断となった。

腹膜透析の稀な合併症である被膜性腹膜硬化症の注意事項として進行性の腹膜線維化がある。後期になると腸ループが覆われて閉塞を起こすことがある。

治療として腹膜カテーテルが抜去され、維持血液透析が開始された。

6か月後、部分的な小腸閉塞を起こしたが、保存療法で軽快している。

N Engl J Med 2023; 388:833

DOI: 10.1056/NEJMicm2206513

柏五味歯科内科クリニック

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