• 2025年9月29日

鉛中毒(慢性変化)

47歳男性。約3年前からの腹痛・便秘を認めていたが、原因不明であり、14ヵ月前には錯乱歴があり、問題患者とされていた。

約1年前から舌と歯茎が黒ずんできた。今回約6か月前からリストドロップがありうまく動かせないことを主訴に内科外来受診となった。

来院時現症

舌は色素沈着を認めた。

口腔内観察では歯肉の線にそって青みがかった色素沈着を認めた。

両手の手首は水平に維持する事できず、下落した。

腹部は軟で、圧痛を正中部に認めた。

また診察中全体を通して、注意力散漫であり、作業記憶は低下し、従命も入らなかった。

上記より「中毒」を疑い、職歴を聴取すると、自動車バッテリー工場で肉体労働をしていることがわかった。

採血所見では小球性貧血、腎機能正常、マンガン濃度正常、血中鉛濃度 83µg/dl(正常 <10µg)

以上より「慢性鉛中毒」と診断された。

キレーション療法が開始され、工場での労働を辞め、職業性Zn暴露を報告した。

6か月後のフォローアップ時点で、胃腸症状は消失し、神経症状は軽減していた。粘膜の色素沈着過剰は変化していなかった。

N Engl J Med 2023; 388:e63

DOI: 10.1056/NEJMicm2210842

柏五味歯科内科クリニック

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