- 2025年9月26日
ターソン症候群(くも膜下出血後の合併症)
41歳男性。2日前から目のかすみと嘔吐を伴う頭痛を認め、改善を認めないため救急外来受診。
高血圧の治療を受けており、既往としては10年前にくも膜下出血(右側の前交通動脈動脈瘤→コイル塞栓術)がある。
現在も喫煙している。
バイタルはBP 147/93、神経学的検査において異常を認めず。
視力は右:0.05、左は指を数えられる程度に低下していた。
眼底検査施行され、両眼に網膜前出血を認めた。
右眼は網膜下出血(矢印)

両眼とも網膜内出血あり(矢印)

頭部CTも救急外来にて施行。左側にくも膜下出血を認めた。
急性発症の病歴と眼底出血・硝子体出血所見+くも膜下出血の所見から「ターソン症候群」と診断。
脳血管造影施行し、左中大脳動脈瘤の解離を確認した。ステント留置。
4か月後の時点では、視力は右眼で0.05、左眼で0.33に改善した。
軽度の硝子体出血と網膜下出血は両眼に続いている。
※ターソン症候群=くも膜下出血後の合併症。頭蓋内圧亢進により眼球内の静脈が破綻。硝子体出血をきたす。
頻度はくも膜下出血の20%程度に認める脳外科領域では非常に有名な病態にもかかわらず、一般的にはあまり知られていない病態のため共有。
報告では617例のくも膜下出血の患者のうち59.7%(367人)がターソン症候群の有無についての眼科検査を受け、78例(21.3%)に確認された。ターソン症候群の独立予測因子とすると「くも膜下出血の重症度(WFNSグレード)」と「けいれん発作の有無」であった。
眼科的手術が必要になった12例では全ての患者で視力は0.03→0.76程度に改善した。
N Engl J Med 2023; 388:e79
DOI: 10.1056/NEJMicm2215931
柏五味歯科内科クリニック
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