• 2025年10月24日

整形外科手術の際に関節リウマチ患者にMTXは休薬しない方がよいエビデンスが多いです。

整形外科周術期にメトトレキサート(MTX)を休薬しないのは、関節リウマチの関節破壊が進行するリスクの方が、手術後の感染リスクを上回るためです。MTXは免疫抑制作用があるため感染リスクを高めますが、休薬した際の実際のデータと休薬しなかった場合の実際のデータを比較し、慎重に判断する必要があります。しっかりエビデンスを確認し、主治医は総合判断できる必要があります。

□RCT

・338人のRA患者。A:休薬なし群88例、B:術後2週間休薬群72例、C:もともとMTX投与なし 228例を感染・術後合併症の割合を解析。

A:2/88(2%)、B:11/72(15%)、C:24/228(10%)であり、A群は周術期合併症がB群、C群に比して有意に少なかった。

術後6週間でRAの再燃は

A:0/88、B:6/72、C:6/228であり、MTX使用により感染・術後合併症の頻度があがることはなく、休薬はすべきでないとされた。

※ただし、MTXの平均使用量は10mg/週であった。

・MTXを休薬した患者(平均10mg/週)とMTXを継続した患者(平均10mg/週)において、術後合併症・創傷治癒遅延を比較。

→いずれも有意差なし。

周術期において、MTXを継続使用することのメリットが示されています。

□後ろ向き試験

・整形領域においてMTX継続で周術期合併症4/16例、MTX休薬で周術期合併症0/22例だった。

この後ろ向き解析ではMTXを使用しないことが推奨される内容でした。

試験の信憑性を踏まえてエビデンスを総合判断すると整形外科領域において周術期に「MTX休薬は推奨されない」とコンセンサスが得られています。

まとめ(整形外科領域において周術期にMTXを中止しない理由)

  • 関節破壊の進行を防ぐため:MTXは関節炎による骨や軟骨の破壊を抑制する働きがあります。休薬によって再燃すると、関節破壊が進行してしまうリスクがあります。
  • 関節リウマチの活動性を維持するため:手術という侵襲的なストレスによって、関節リウマチの活動性が高まることがあります。MTXの継続により、この活動性の急激な高まりを防ぎ、術後の回復をサポートします。
  • 感染リスクの増加と関節破壊リスクのバランス:免疫抑制薬であるMTXは手術後の感染リスクを増加させる可能性があります。しかし、多くの専門機関では、MTXの継続による関節破壊進行の抑制というメリットの方が、感染リスクの増加というデメリットを上回ると考えており、整形外科手術の周術期に休薬は不要であるとされています。
  • 手術の必要性:関節リウマチ患者の整形外科手術は、関節の機能改善や痛みの緩和、生活の質の向上を目的として行われます。MTXを休薬せずに継続することで、手術の効果を最大限に引き出し、関節の変形を最小限に抑えることができます。

柏五味歯科内科クリニック

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