• 2025年10月24日

脳嚢胞性エキノコックス症:14歳健康児に認めた頭痛・視力低下から診断に至った症例

14歳少年。特記すべき既往なし。

約1か月前から嘔吐を伴う頭痛を散発的に認めるため内科外来を受診した。

身体所見では視力低下を認めたため眼科も受診。乳頭浮腫が著明であった。

その他特記すべき身体所見を認めなかった。

頭部MRI施行。T1強調像では右側頭頂部領域に60×62×58mmの多房性膿疱を認め、T2強調像では低信号の縁と小突起(矢印↓参照)を認めた。

(A:T1強調像、Sagittal)(B:T2強調、axial)

全身CTではその他の部位に疾患は認めなかった。

嚢胞を切除するために開頭術が施行された。

破裂を避けるために生理食塩水洗浄を使用し嚢胞壁を脳から分離した(C)。

病理検査では娘嚢胞(D)および鉤状突起(矢印)を有する原虫を認めた。

「原発性脳嚢胞性エキノコックス症」と診断された。

エキノコックス嚢胞(包中嚢胞とも呼ばれる)は最も一般的には肝臓で形成される。

エキノコックスは感染した家畜や犬の糞便との接触を通じて人間に伝染する。

(本症例の少年も農場に住んでいた)

嚢胞が質量効果を及ぼす場合、症状が進行する。

開頭手術に加え、アルベンダゾールの3ヵ月内服が施行され、治療後、症状は完全消失した。

N Engl J Med 2023; 388:e10

DOI: 10.1056/NEJMicm2208104

柏五味歯科内科クリニック

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