- 2025年10月7日
疥癬(かいせん:掻痒を伴う皮膚感染症)
20歳男性。3ヵ月前からの全身性の痒みを訴えて皮膚科受診した。
患者の性的パートナー(女性)も同様の掻痒を伴った。
身体所見としては胴体、生殖器領域、手首の屈筋面に複数の紅斑性丘疹が認められた。

目に見える皮膚の傷口は認めなかった。
しかし手首の丘疹を紫色のスキンマーカーで覆い(B)、その後アルコール綿棒で拭くと皮膚に傷口が出現した(C)。

これは「巣穴のインク検査」と呼ばれ、陽性の場合、疥癬が示唆される所見である。
「疥癬」と診断された。
疥癬はSarcoptes scabiei var(ヒト科ダニ)によって引き起こされる掻痒を伴う皮膚感染症。
ヒト科のダニは角質層に傷口を作ることが知られている。
巣穴インクテストは、特徴的な巣穴を可視化するための簡単、迅速、安価な方法として知られている。
ただし検査が陰性であっても疥癬が除外されるわけではなく、ダーモスコピーまたは皮膚の掻把物の顕微鏡的検査が必要になる。
患者の症状が重症だったため、イベルメクチンと局所ペルメトリン(日本国内に販売なし)の両方における治療が行われた。患者の濃厚接触者にも診断が通知され、治療を受けた。
最初の症状が出てから4週間後、患者の症状は完全に消失した。
N Engl J Med 2023; 389:e12
DOI: 10.1056/NEJMicm2216654
柏五味歯科内科クリニック
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