- 2025年11月24日
TNF阻害薬の方がcsDMARDに比して腎機能障害の進行を遅らせる可能性がある

関節リウマチ患者において、TNF阻害薬はcsDMARD(従来型合成抗リウマチ薬)単独療法と比較して、腎機能障害の進行を遅らせる、あるいは腎機能に悪影響を与えない可能性が高いと考えられます。
主な理由の詳細は以下の通りです。
- 関節リウマチにおける腎障害の原因: 長期間にわたるコントロール不良の炎症は、アミロイドA蛋白の過剰産生を引き起こし、これが腎臓に沈着することで腎障害(アミロイドーシス)を引き起こす可能性があります。
- TNF阻害薬の腎機能への影響:
- TNF阻害薬は脾臓で代謝されるため、腎機能への影響は少なく、腎機能障害のある患者でも安全な治療選択肢となり得ます。
- 複数の研究で、TNF阻害薬による治療を行った患者の推算糸球体濾過量(eGFR)の変化は、csDMARD単独療法や非TNF阻害薬による治療を行った患者と比べて、有意な差がないことが示されています。
- これは、全身の炎症を効果的に抑えることで、炎症に伴う腎障害のリスクも低減できるためと考えられます。
- csDMARDsの腎機能への影響:
- 最も重要な薬剤の一つであるメトトレキサート(MTX)は、腎機能が低下している患者では排泄が遅れ、副作用が強く出る可能性があるため、腎機能に応じて減量や中止が必要です。
- 他の免疫抑制薬(タクロリムスなど)も、腎障害を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
TNF阻害薬は腎機能に対する懸念が少なく、関節リウマチに伴う腎障害のリスク低減に寄与する、または少なくとも腎機能の悪化を進行させないという点で、csDMARDsよりも有利な場合が多い、という理解です。エビデンスの詳細についても共有しておきます。
事実:RA患者はCKDに進展するリスクが健常人と比較し1.5倍。
コホート研究
・eGFR<60のRA患者70人を対象に腎機能障害の進展度合いを観察。
→TNF阻害薬投与群はcsDMARD投与群に比してeGFRの低下が有意差をもって見られにくいことが分かった。
(年間変化量 TNF阻害薬:csDMARD=2.0±7.0 vs -1.9±4.0、p=0.006)。
・ADA投与を受けたRA患者においてeGFR<60群:39人、eGFR>60群:26人の腎機能推移を観察。
→いずれの群でもeGFRの低下を認めず、腎機能障害の有無に関わらず腎機能を保つことが分かった。
・アミロイドーシスと確定診断された透析中のRA患者28人を対象に死亡率を検討。
bDMARD使用者(n=10)はcsDMARD使用者と比較して死亡率に有意差を認めなかった。
(HR=1.03、95%CI 0.43~2.48)
bDMARDの主な死因は感染症(6例)
csDMARDの主な死因は心不全(8例)
→eGFR<60のRA患者に対してTNF阻害薬はeGFRを低下させず、csDMARDに比して疾患活動性を低下させるため検討する価値がある。
透析まで至った患者(アミロイドーシス合併透析患者)においてはTNF阻害薬は予後を改善させない。
(csDMARDに切り替えれば死因は心不全が最多となる=普通の透析患者の死因と同一ということになる)
→疾患コントロールが図れている場合は、透析患者さんにはコストも考え、TNF阻害薬からcsDMARDへ切り替えも検討できる、NSAIDsも使ってOK、という理解です。
柏五味歯科内科リウマチクリニック
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