- 2025年11月6日
川で感染したレプトスピラ症症例:発熱・下痢・結膜下出血・げっ歯類の尿による汚染の可能性のある水への暴露・黄染・腎不全など複合要因から疑います。
18歳男性。特記すべき既往なし。
2日前から発熱・嘔吐・下痢が出現し救急外来受診。
来院3週間前に川に落ちている。
来院時現症として、BT 38.4、HR 110
身体所見としては眼瞼結膜軽度黄染ならびに結膜下出血を認めた。また肝脾腫は伴わない軽度腹部圧痛があった。

採血所見では腎機能悪化と肝機能障害、Bil上昇を伴っていた。
発熱・下痢・結膜下出血・げっ歯類の尿による汚染の可能性のある水への暴露・黄染・腎不全から重篤なレプトスピラ症が疑われた。
ペニシリンの静脈内投与による経験的治療が開始された。
のちのち、レプトスピラ種に対するIgM抗体が到着し、320倍であることが明らかになった(基準値:陰性)。
PCR検査ではレプトスピラ種が陽性となり、その後、菌種はイクテロヘモルハジア(Icterohaemorrhagiae)であることが同定された。
1週間の抗生剤加療により軽快し退院。3週間後のフォローでは結膜下出血・肝機能・腎機能はいずれも正常化していた。
※レプトスピラ症
病原性レプトスピラを保有しているネズミ・イヌ・ウシ・ウマ・ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に、時には汚染された飲食物の摂取によりヒトに感染する。
黄疸、出血、腎障害(尿蛋白を含む)などの症状がみられる。
潜伏期は3~14日で、突然の悪寒、戦慄、高熱、筋肉痛、眼球結膜充血が生じ、4~5病日後に黄疸や出血傾向が増強する場合もある。
上記経過からレプトスピラ症を疑った場合は、血液や尿や髄液からPCRにより病原体の遺伝子を検出、血清から抗体検出により診断する。
軽症~中等度のレプトスピラ症の場合はドキシサイクリンの内服でOK。
ペニシリン系を用いた場合はJarisch-Herxheimer 反応(抗菌薬投与後に起こる、破壊された菌体成分によるとみられる発熱、低血圧を主症状とするショック)がみられることがあるので、もし起きたら逆に疑う根拠になる。
日本では届け出が必要な人獣共通感染症(4類感染症)。
N Engl J Med 2022; 387:e71
DOI: 10.1056/NEJMicm2202675
柏五味歯科内科リウマチクリニック
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