- 2026年3月21日
長期ステロイド使用者に対する周術期ステロイドカバー戦略
ステロイド長期投与患者における周術期管理は、外科手術や麻酔の現場において極めて重要です。長期間の薬剤使用により、体内の「HPA系(視床下部-下垂体-副腎皮質系)」が抑制されると、自力で十分なコルチゾールを分泌できなくなり、手術侵襲をきっかけに治療抵抗性の低血圧やショックを伴う「急性副腎不全」に陥る危険があるためです。
これまでの臨床では、一律に大量のステロイドを補充する「ステロイドカバー」が主流でしたが、近年は高血糖や感染症、創傷治癒遅延といった副作用を避けるため、手術の負荷(低・中・高侵襲)に応じた「段階的低用量ステロイドカバー」へと移行しています。具体的には、小手術なら25mg、開腹手術などの中侵襲なら50〜75mg、心臓手術などの大侵襲では100〜150mgのハイドロコルチゾンを投与し、術後数日で速やかに通常量へ戻すスケジュールが提唱されています。
特に注意が必要なのは、過去1年間にプレドニゾロン換算で15mg/day以上を3週間以上服用していたケースですが、投与量と副腎の抑制程度は必ずしも相関しないため、正確な予測は困難です。一方で、維持量のステロイドさえ継続すれば追加のカバーは不要とする報告もあり、最適なレジメンについては今なお議論が続いています。
患者一人ひとりのリスクと手術ストレスを正しく評価し、過剰投与を防ぎつつ安全を確保する柔軟な管理戦略が、合併症のないスムーズな術後回復(周術期ケア)の鍵となります。













柏五味歯科内科リウマチクリニック
ホームページ