• 2025年10月21日

HTLV-1陽性の関節リウマチ(RA)患者ではRNAを測定しながら通常診療が可能です

HTLV-1陽性の関節リウマチ(RA)患者は、HTLV-1プロウイルス量(RNAではなく、HTLV-1がT細胞のDNAに組み込まれたものを定量する手法)を定期的に測定しながら、通常診療を受けることが可能です。ただし、いくつかの注意点があります。 

プロウイルス量の測定

HTLV-1はRNAウイルスですが、細胞に感染するとその遺伝子がDNAに組み込まれるため、主にこの「プロウイルス量」を測定して感染状態や病態を評価します。定期的にプロウイルス量を測定し、急激な上昇がないかを確認することで、成人T細胞白血病(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)といった関連疾患の発症リスクをモニタリングします。

通常診療は可能

HTLV-1陽性であっても、RAの治療法は原則として陰性の患者と同じです。その根拠を共有しておきます。

コホート研究

・HTLV-1陽性RA患者とHTLV-1陰性RA患者におけるTNF阻害薬の治療効果の比較。

 HTLV-1陽性RA患者66.7%(40/60)

 HTLV-1陰性RA患者81.3%。

→TNF阻害薬はHTLV-1陽性RA患者にも有効であることが示された一方HTLV-1陰性RA患者と比較すると成績が悪い理由は分かっていない。

観察研究

・HTLV-1陽性RA患者50人にTNF阻害薬を投与したが、24週のフォローでATL、HAM、HU/HAUの発症はなかった。42/50にMTXが使用され、31/50にPSLが併用されていた。

・HTLV-1陽性RA患者10人にTNF阻害薬2年投与したがATL、HAM、HU/HAUの発症はなかった。

・HTLV-1陽性RA患者20人に5年間csDMARDやbDMARDで加療したがHTLV-1-RNA量やsIL2R上昇は見られなかった。

・HTLV-1陽性RA患者にTNF阻害薬とMTXを使用していたら慢性型ATLを発症。TNF阻害薬とMTX中止したところ消退した。

→ほぼ症例報告レベル。RA治療がATL発症リスクとする論文は皆無。

 HTLV-1陽性患者がATLを発症するリスクは年間0.1%と低いため、2年10人投与を行っても一人も発症しない可能性の方が高いことから正確には「DMARDはATL化のリスクかどうか」は分かっていない。

→HTLV-1陽性RA患者ではV-1HTLV-1RNAを経時的に測定しながら通常診療が推奨されている。

 JAK阻害薬に至ってはデータなし。

これらの情報から、HTLV-1陽性RA患者はプロウイルス量を測定しながら通常診療を受けることは可能ですが、定期的なモニタリング、感染症への注意、治療薬の選択における慎重な検討が不可欠といえます。診療にあたっては、日本リウマチ学会が公表している「HTLV-1陽性関節リウマチ患者診療の手引」などを参考に、日常診療にあたっています。

柏五味歯科内科クリニック

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