• 2025年10月25日

全身性強皮症の皮膚硬化に対する治療薬のエビデンス

現在、全身性強皮症の根治的治療法はなく、症状を緩和するための対症療法が中心となります。その中でもどのような薬がどのように作用するのか、エビデンスは積み上げられており、把握しておくことは重要です。まず「皮膚硬化」に対する各薬剤のエビデンスを共有しておきます。

■PSL

・35例のSScを対象としたRCT。

デキサメタゾン静注パルス療法100mg/月、6か月間とプラセボを比較検討。

治療群ではmRSSが28.5±12.2→25.8±12.8に低下

プラセボ群ではmRSSが30.6±13.2→34.7±10に増加した。

・早期の浮腫性硬化を呈し急速に進行している23例に対して低用量ステロイドを投与した症例報告

mRSSが20.3±9.3から1年後に12.8±7.0に低下した。

初期のPSL投与量は20~30mg/日が目安とされ、2~4週続けた後、皮膚硬化の改善を見ながら2週~推移ヵ月ごとに約10%ずつ漸減していくことが目安とされる。5mg/日が目安の維持量とされるが、「皮膚硬化の進展が長期間止まる」ことや「萎縮期」に入ったと判断できれば漸減中止してよい。 

PSLは腎クリーゼを誘発する可能性が示唆されていることは、念頭にはおいておくことも重要です。

 

■CY

肺線維症に対するRCTにおいてCY(1㎎/㎏/日)内服は肺線維症の進行を緩やかにするのみならず、皮膚硬化においても有意な改善が認められたことが示された。

(CY群:mRSS 15.5±1.3→11.9±1.3、プラセボ群:mRSS 14.6±1.4→13.7±1.4)

特にdsSScにおいて効果が高かった(21.7±10.1→15.9±11.0)とされるが、24ヵ月後の評価においてはプラセボと比して有意差なしと報告されている。

 IVCYによる報告はなし。しかしながらCY内服においては総投与量が多くなることを考慮するとICVYを選択する方が良い場合も多いと考えられる。

 IVCYは主にSScの肺病変の治療に用いられるが、皮膚硬化の改善も示されているため、GC無効例やGC投与できない例では投与を検討してよいと考えられる。

 

■MTX

RCTは2報ある。

・29例を対象にしたRCT。MTX筋注(15mg/週、24週)により皮膚硬化が改善するかプラセボと比較検討。

→有意差は認められなかった(p=0.06、MTX群mRSS -0.7、プラセボ群+1.2)。

・73例を対象にしたRCT。MTX経口投与(10mg/週、52週)により皮膚硬化が改善するかとプラセボを比較。

→有意差なし。(p=0.17、MTX群27.7→21.4、プラセボ群27.4→26.3)

しかし2RCTをベイズ統計学によって解析するとMTX群において有意な改善が示されている。

したがって、MTXの皮膚硬化に対する有効性は立証されていないと言わざるえないが、他の治療が無効である例に対しては投与を検討してもよいというエビデンスレベル。

 MTXはIP誘発リスクがあるので、使用には総合判断となる。

 

■CsA

RCTあり。

CsA 2mg/kg/日の内服は1年後に皮膚硬化をプラセボと比して有意に改善させた。

mRSS 15.2±2.0→11.3±1.8(p=0.008)

ただしCsA内服は腎クリーゼのリスク・高血圧のリスクとなることも多数報告されているので相対的判断となる。

 

■Tac

症例報告レベル。

Tac(平均0.07mg/㎏/日)を8名に投与したところ4例において皮膚硬化の改善を認めた。

 

■AZP

CYに対して非劣勢であるという報告がある。

 

■MMF

症例報告レベル

・早期のdsSSc 15例に対しMMF(1g/日→漸増、3g/日まで増量可)投与し12か月前向きに観察。

mRSSは22.4→13.6、試験終了時に8.4まで改善。

・早期で未治療のSSc 25例にMMFを単独で使用(平均2g/日)。前向き観察。18か月後にmRSS 24.5→14.5まで改善

・早期SSc 109例にMMF、63例に他の免疫抑制剤を投与。5年間の経過を後ろ向きに観察。mRSSの変化には両群有意差を認めなかった。

  

■RTX

・RTX(初期は375mg/m2を4週)を6ヵ月間隔で2クール投与を受けた14例で1年後の皮膚硬化観察。

mRSSが13.5±6.84→8.73±6.45へ改善した。

・RTXを6ヵ月間隔で皮膚硬化を観察。

(スタート時)mRSSは24.8±3.4

(24週後)mRSS 14.4±8.4

(24か月後)mRSS 13.0

 いずれも有意差あった。

・その他にも同様な症例報告は多数あり。

・63例の前向き研究。

 RTX群はコントロール群に比してmRSSの改善率が有意に大きく、mRSSの平均も有意に低下していた (mRSS 26.6±1.4 vs 20.3±1.8、p=0.0001)

上記報告などから皮膚硬化の治療に有効であることが示唆される一方、感染症を含めたRTXの副作用の懸念もあり、「慎重に使用を考慮することが望ましい」とされる。

  

皮膚メインなら「早期の浮腫期にはPSLは有効」で、追加治療とするとCYがこれまでメインだったが、エビデンスとしてはRTXに移行しつつあります。 

柏五味歯科内科クリニック

ホームページ