• 2026年3月28日

環状紅斑と高度徐脈を呈するライム心筋炎:診断のポイントと最新の治療戦略

ライム病は、ボレリア菌(Borrelia burgdorferi)を保有するマダニ(Ixodes scapularis)の咬傷によって伝播する、北米などで極めて一般的なベクトル媒介性疾患です。初期症状は発熱、倦怠感、筋肉痛などの風邪に似た症状に加え、遊走性紅斑と呼ばれる特徴的なターゲット状の環状紅斑が出現します。しかし、感染から数週間から数ヶ月経つと、細菌が心臓へと播種し、心伝導系に障害を来す「ライム心筋」を発症することがあります。

本ソースに記載された症例では、32歳の女性がアウトドア活動の後に発熱と皮疹、そして強いめまいを訴えて受診しました。心電図検査では当初「1度房室ブロック」でしたが、翌日には心拍数が50回/分台まで低下し、3度房室ブロック(完全房室ブロック)へと進行しました。ライム心筋炎はライム病患者の4〜10%に発生し、その約90%が心伝導系への影響(房室ブロックなど)として現れます。

診断の鍵は、マダニの生息域での活動歴に加え、特徴的な環状紅斑と心ブロックの組み合わせを認識することです。治療において最も重要な点は、一般的な完全房室ブロックとは異なり、永久ペースメーカーの植込みを避けることです。ライム心筋炎による心ブロックの多くは抗菌薬に速やかに反応して改善するため、ガイドラインではセフトリアキソンの静脈内投与が第一選択として推奨されています。

本症例でも、セフトリアキソンの点滴開始からわずか4日間で伝導障害が改善し、その後経口のドキシサイクリンへと切り替えて合計21日間の抗菌薬治療を完了しました。最終的には心電図も正常化し、完全な回復に至っています。キャンプやハイキングなどのマダニ咬傷のリスクがある地域において、原因不明の不整脈や皮疹を認めた場合には、迅速にライム病を疑い適切な抗菌薬治療を開始することが、不要な外科的手術を避けるための極めて重要なステップです。

JAMA. 2026;335(7):628-629. doi:10.1001/jama.2025.24574

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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