• 2025年12月8日

慢性ヒ素中毒:井戸水の汚染による重大公害症例

34歳女性。3年間にわたる皮膚の色調変化を心配し皮膚科を受診した。

身体所見としては、色素沈着過剰を背景に無数の色素脱失斑が認められ、胸部(A)や背部に雨滴のような外観を生じていた。手のひら(B)と足の裏には同様の色素沈着の変化と角質増殖性丘疹が見られた。

追加問診で、周囲にも同様の症状が多発していることが分かった。

「同じ井戸水を飲んだ近所の人」が患者と同様の皮膚変化が起きていることが分かった。

臨床検査では、患者の爪と髪、および井戸水中から高濃度のヒ素が検出された。

「慢性ヒ素中毒」と診断された。

慢性ヒ素中毒は通常、皮膚の色素沈着の変化、皮膚の肥厚、感覚運動神経障害として現れる。

この患者が住んでいた地域はインドの西ベンガル州とバングラデッシュでは井戸水の汚染による重大公衆衛生が問題となっている。

患者には代替の水源を見つけるようアドバイスされ、汚染された井戸は密閉された。

3ヵ月のフォローアップ外来では皮膚の変化は軽減していた。発癌性ヒ素への暴露がなくなった後もリスクは依然として高いため、彼女は皮膚癌やその他悪性腫瘍の出現を定期的にチェックしていくこととなっている。

N Engl J Med 2022; 387:1414

DOI: 10.1056/NEJMicm2203290

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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