- 2025年11月10日
遺伝性顎けいれん(遺伝性顎振戦):生まれながらにあることが多いです。良性疾患なので安心です。
生後4か月の男児。特記すべき既往なし。
上気道感染を認め、近医を受診し、その際、顎の筋肉が「ぴくぴく」痙攣し続けていることが指摘されたため紹介受診。
来院時現症としては顎と下唇に不随意ミオクローヌスが観察された。神経学的にはそれ以外は正常だった。
皮膚にも特記すべき所見を認めなかった。

患者の両親は、患者が生まれた時から顎が震えていた、と報告した。
この患者の家族歴は、父親、父方の叔母、父方の祖母、父方の大祖母において、乳児期から成人期にかけて同様の顎ミオクローヌスが顕著であった。
「遺伝性顎けいれん(遺伝性顎振戦)」と診断された。
遺伝性顎振戦は常染色体優性の遺伝的運動障害であり、オトガイ筋の単独のミオクローヌスを引き起こす。
これは稀な良性疾患であり、年齢と共に解消される場合が多い。
舌を噛んだり、精神的苦痛を伴う重篤な症状の場合、ボツリヌス毒素注射が行われることもある。
患者の両親には注意深く経過観察するようアドバイスがなされ、遺伝子検査は施行されなかった。
患者が生後12か月の時の再診では顎の震えは安定していたため、治療は行われなかった。
N Engl J Med 2022; 387:e63
DOI: 10.1056/NEJMicm2102977
柏五味歯科内科リウマチクリニック
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