• 2026年4月18日

ボクロスポリンにおける薬物相互作用(DDI)の包括的解析:CYP3AおよびP-糖タンパク質を介した影響

ボクロスポリン(Voclosporin: VCS)は、シクロスポリンA(CsA)のアミノ酸-1領域に単一炭素延長を施した新規カルシニューリン阻害薬(CNI)である。この構造改変により、CNへの結合能向上(高力価)と代謝プロファイルの変更が達成され、CsAと比較して低用量での投与が可能となっている。VCSの代謝は、その99%以上が肝臓のシトクロムP450 3A(CYP3A)アイソフォームによる代謝および胆汁排泄に依存しており、同時にP-糖タンパク質(P-gp)の基質かつ阻害剤としての特性も有する。以下に、健康成人を対象とした5つの臨床試験に基づくDDI解析結果を述べる。

【臨床薬理学的解析結果】

1. CYP3Aを介した相互作用

  • 強固な阻害(ケトコナゾール併用): 強力なCYP3A阻害剤であるケトコナゾール(400 mg QD)の定常状態下において、VCSのCmax​は6.4倍、AUC(0–12)は18倍へと著明に上昇した。この超治療域の血中濃度上昇に伴い、一部の被験者で可逆的な血清クレアチニン値の上昇(平均88%増)が認められた。
  • 強固な誘導(リファンピン併用): 強力なCYP3A誘導剤であるリファンピン(600 mg QD)の投与後では、VCSのCmax​は約70%減、AUCは約90%減(0.1倍)となり、消失半減期は5時間から1時間未満へと激減した。
  • CYP3A基質への影響(ミダゾラム併用): VCSはin vitroでCYP3Aの競合的阻害剤とされるが、臨床用量(0.4 mg/kg Q12H)の定常状態下において、CYP3A基質であるミダゾラムの曝露量(AUC)に有意な変化は認められなかった。

2. P-糖タンパク質(P-gp)を介した相互作用

  • P-gp阻害(ベラパミル併用): P-gp阻害剤であるベラパミルの併用により、VCSのCmax​は2.1倍、AUCは2.7倍に上昇した。これは主に消化管におけるP-gp介在性の排出抑制によるバイオアベイラビリティの向上に起因すると考えられる。
  • P-gp基質への影響(ジゴキシン併用): VCSはP-gp基質であるジゴキシンのCmax​を50%、AUCを25%上昇させた。一方、ジゴキシンの腎クリアランスに変化はなく、VCSによるP-gp阻害は主に消化管レベルでの吸収過程に影響を及ぼすことが示唆された。

【結論と臨床的推奨事項】

VCSは強力なCYP3A調節剤との併用により劇的な曝露量変化を呈するため、強力なCYP3A阻害剤(ケトコナゾール等)および誘導剤(リファンピン等)との併用は禁忌と考えるべきである。一方で、VCS自身は臨床用量においてCYP3A基質の代謝を阻害しないため、多剤併用時における他のCYP3A代謝薬(ミダゾラム等)の用量調節は不要である。P-gpに関しては、VCSが阻害剤および基質として機能するため、P-gp基質(ジゴキシン等)や阻害剤(ベラパミル等)との併用時には、適切な血中濃度モニタリングと安全性監視(TDMの検討)が推奨される。

British Journal of Clinical Pharmacology. 2014;77(6):1039-1050. doi:10.1111/bcp.12284.

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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