- 2026年7月6日
「敗血症」の真実:免疫の暴走と免疫麻痺を見極める最新の「免疫療法」ImmunoSep試験を解説
全員に同じ治療をする時代の終わりの始まり。あなたの免疫状態に合わせて薬を使い分けるオーダーメイド治療
「ただの肺炎だと思っていたら、急に血圧が下がり、意識が朦朧として集中治療室(ICU)に入ることになった」――このような恐ろしい事態を引き起こすのが「敗血症(はいけつしょう)」です。敗血症は、感染症をきっかけに全身の臓器が次々と機能しなくなる命に関わる病態であり、世界中で多くの命を奪っています。 これまで、敗血症に対する様々な「免疫治療」が試されてきましたが、大規模な臨床試験では失敗続きでした。しかし今回、医学誌『JAMA』にて、敗血症治療の歴史を変える画期的な臨床試験(ImmunoSep試験)の結果が発表されました。その鍵は、患者様お一人おひとりの免疫の状態に合わせて薬を使い分ける「精密免疫療法」にありました。今回はこの最新データに基づき、感染症が命を脅かす「体の仕組み」と、未来の医療の姿について柏我孫子市の総合内科専門医が解説します。
1. 敗血症で臓器が壊れる「体の仕組み」:暴走か、麻痺か
なぜ、ばい菌(細菌やウイルス)の感染から全身の臓器が壊れてしまうのでしょうか?実は、臓器を壊している最大の原因はばい菌そのものではなく、ばい菌と戦うための私たちの「免疫システム」の異常にあります。 最新の医学では、敗血症の患者様の体の中では、大きく分けて2つの極端な異常が起きていることが分かっています。
- 免疫の暴走(マクロファージ活性化様症候群):免疫細胞が過剰に興奮し、サイトカインという強力な炎症物質を大量に放出して、自分自身の血管や臓器を焼き尽くしてしまう状態です。
- 免疫の麻痺(敗血症誘発性免疫麻痺):逆に、免疫細胞が戦いに疲れ果てて機能しなくなり、ばい菌の増殖を全く抑えられなくなってしまう(免疫不全)状態です。
2. 状態を見極めて薬を変える「精密免疫療法」の衝撃
これまでの治療が失敗していた理由は、「暴走している人」と「麻痺している人」全員に同じ免疫抑制薬を使っていたからです。麻痺している人に免疫を抑える薬を使えば、かえって命を縮めてしまいます。 そこで今回のImmunoSep試験では、血液検査(フェリチンやHLA-DRという特殊なマーカー)を用いて、患者様がどちらの状態にあるのかを正確に見極めました。そして、免疫が暴走している人には「アナキンラ」という強力に炎症を抑える注射を、免疫が麻痺している人には「インターフェロンγ」という免疫を活気づける注射を使い分けるという、まさに「精密な」治療を行ったのです。
3. 臓器障害を劇的に改善する画期的な成果
世界6カ国で行われたこの試験の結果は素晴らしいものでした。従来の標準治療に加えて、この「精密免疫療法」を行った患者様は、プラセボ(偽薬)を行ったグループと比較して、治療開始から9日目までの全身の臓器障害(SOFAスコア)が有意に大きく改善することが証明されました(改善達成率 35.1% vs 17.9%)。 また、感染症そのものの治癒を早め、免疫の異常状態から抜け出せる(免疫機能障害の回復)割合も劇的に高まることが確認されています。
4. 重篤な感染症を防ぐための「普段の備え」
この研究は、集中治療の最前線における大きな希望です。同時に私たちに教えてくれるのは、「人間の免疫システムは非常に複雑であり、一度バランスが崩れると命に関わる」という体の仕組みの恐ろしさです。 敗血症の引き金となるのは、肺炎や尿路感染症などの身近な感染症です。持病がある方や高齢の方は特に重症化しやすいため、「風邪をこじらせないための早期受診」や「ワクチンによる確実な予防」が、ご自身の命を守る最大の防衛策となります。少しでも体調に不安がある場合は、自己判断せずに総合内科専門医へご相談ください。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、ただ単に風邪や感染症の薬を出すだけでなく、その感染が全身の免疫や臓器にどのような影響を与えるのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、最適な治療を行います。また、重症化を防ぐための大人の予防接種(肺炎球菌や帯状疱疹ワクチンなど)にも力を入れています。私たちは、柏・我孫子エリアの皆様が、重篤な病気の不安から解放され、ご家族揃って安心で健やかな毎日を楽しめるよう、全力でサポートいたします。
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※Sepsis-3:感染に対する制御不能な宿主反応(免疫の異常)によって引き起こされる、生命を脅かす臓器障害(life-threatening organ dysfunction due to the dysregulated host response to an infection)と定義










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