• 2026年3月1日

肺ムコール症:L-AMBにて治療開始され手術も検討された中で15日目に死亡。

51歳女性。

急性リンパ芽球性白血病の病歴を持つ。3ヵ月前に骨髄移植を受けており、GVHDを発症し、CsAと高用量GCによる治療を受けていた。

今回、3日前から左胸部に痛みが出現するようになり、救急外来を受診した。

受診時発熱や咳嗽を認めなかった。

身体検査では、SpO2 96(r.a)

左側の呼吸音の減少が著明であった。

採血所見としては、炎症反応の上昇とHbA1c 9.6%(基準4.0~5.6)と上昇していた。現病の再燃は示唆されなかった。

胸部CTでは、密な硬化リングに囲まれたすりガラス状の不透明な領域が示された。これは逆ハローサインとして知られている。気管支肺胞洗浄が施行され、ラクトフェノールコットンブルー染色(糸状菌の形態の観察に優れる染色法)にて糸状菌であることが同定され(B)、培養結果からムコール感染であることが同定された。

「肺ムコール感染症」と診断。

ムコール症は主に高度の免疫抑制状態にある患者が罹患する侵襲性真菌感染症。危険因子は、長期間の好中球減少、ステロイド投与、リンパ球減少、骨髄移植、コントロール不良の糖尿病などがあげられる。

特徴的な臨床症状に乏しく、また、実用化された血清診断がないため、確定診断には病理組織学的検査・真菌学的検査が必要になる。検体は、各病型に応じて、鼻腔分泌物・掻把組織片・副鼻腔吸引物(鼻脳型)、喀痰・肺組織片(肺型)などを用いるが、適切な検体を得ることは容易ではなく、診断確定は困難であることが多い。

 治療は抗真菌薬治療を行うことと病巣切除(あるいはデブリードマン)となる。日本では使用可能な抗真菌薬のうち、アゾール系抗真菌薬やキャンディン系抗真菌薬は無効であり、AMPH-B(脂質製剤も含む)が第一選択となる。

本症例ではリポソームアムホテリシンBによる治療が開始され、手術が計画されたが、患者は発症から15日後に死亡した。

N Engl J Med 2021;384: e69

DOI: 10.1056/NEJMicm2030205

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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