• 2026年7月8日

【柏市我孫子市・総合内科】人工関節手術から20年後の激痛と骨破壊:その原因は?91歳男性症例

ひざの痛みの原因は「5年前のがん治療」だった。全身を巡る菌と、過去の病歴を紐解く重要性

「20年前に人工ひざ関節の手術をして、ずっと調子が良かったのに、最近になって急に激しく痛み出した」——このような場合、人工関節の部品のすり減りや緩みが原因であることが多いですが、時には「細菌の感染(人工関節周囲感染:PJI)」が潜んでいることがあります。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine』にて、マサチューセッツ総合病院から非常に興味深く、かつ教訓に富んだ91歳男性の症例が報告されました。彼は20年前の人工関節が突然感染を起こしてひざの骨が破壊されてしまいましたが、その原因はなんと「5年前に受けた膀胱がんの治療」にありました。今回は、細菌が全身を巡って関節に棲みつく「体の仕組み」と、過去の病歴から原因を推理する総合内科的アプローチの重要性を柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 人工関節手術から20年後の激痛と骨破壊

患者さんは91歳の男性で、20年前の左人工ひざ関節全置換術(TKA)以降、全く問題なく生活していましたが、半年前からひざの痛みが悪化し、車椅子が必要な状態になりました。 病院でMRIなどの画像検査を行うと、人工関節の部品自体に異常はないものの、ひざの骨が大きく溶けて破壊され、周囲に大きな炎症の塊(腫瘤)ができていることが分かりました。ひざに針を刺して関節液を抜くと、白血球(特に好中球)が異常に増殖しており、強い「感染」が起きていることが強く疑われました。

2. 膀胱がんの治療薬「BCG」が関節を破壊する体の仕組み

通常、ひざの関節液を培養すれば黄色ブドウ球菌などの一般的な細菌が検出されますが、この患者さんの場合は何度検査をしても「陰性(菌が育たない)」でした。 ここで鍵となったのが、彼の「過去の病歴」です。彼は5年前に膀胱がんを患い、「BCG(ウシ型結核菌の弱毒生ワクチン)」を膀胱内に注入する治療を受けていました。BCGは膀胱がんに対する強力な免疫治療として標準的に使われますが、稀にこの菌が血液に乗って全身を巡り(血行性感染)、人工関節などの「人工物」に定着してしまうという恐ろしい体の仕組みが存在します。定着した結核菌の仲間は、数ヶ月から数年という長い期間をかけて静かに増殖し、遅れてひどい炎症と骨破壊(肉芽腫や腫瘤の形成)を引き起こすのです。

3. 最新の遺伝子検査が暴いた真犯人と治療の成功

手術を行ってひざの壊れた組織を直接採取し、特殊な培養検査や最新の遺伝子検査(MALDI-TOF質量分析など)を行った結果、予想通り「Mycobacterium bovis BCG(ウシ型結核菌BCG)」が検出され、ようやく真犯人が特定されました。 患者さんは壊れた人工関節を取り除き、感染に強い特殊なセメントを用いた新しい人工関節への再置換手術を受けました。その後、結核菌に対する複数の専用の抗生物質(リファンピシン、イソニアジド等)による治療を慎重に行うことで、半年後には見事に回復し、再び自立した生活を取り戻すことができました。

4. 過去の治療歴から「全身の繋がり」を紐解く重要性

この症例は、ひざの痛みの原因が「ひざだけ」にあるとは限らないことを私たちに教えてくれます。「5年前の膀胱がんの治療」が、「20年前に入れた人工ひざ関節」に感染を引き起こすという、点と点が線で繋がるような「体の仕組み」を見抜くには、患者さんの過去の病歴や全身の状態をくまなく把握する総合的な視点が不可欠です。 長引く関節の痛みや、原因不明の腫れにお悩みの方は、「ただの加齢や関節炎だろう」と自己判断せず、全身の繋がりを的確に評価できる総合内科やリウマチ専門医へご相談ください。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、目の前の症状だけでなく、患者様の過去の病歴や現在服用しているお薬、そして隠れた感染症リスクがどのように関係しているのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、正確な診断と最適な治療への道筋をご提案します。当院では人工関節の手術自体は行っておりませんが、手術後の長期的な内科的フォローアップや、感染症を防ぐための全身管理、そして医科歯科連携を通じた徹底したお口のケア(血行性感染の予防)を全力でサポートいたします。全身の健康に不安がある方は、柏・我孫子エリアの相談窓口である当院へお気軽にご相談ください。

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Sandra B. Nelson, Tina Shiang, Erik T. Newman, Barbra M. Blair, Sarah M. Schrader. “Case 7-2026: A 91-Year-Old Man with Left Knee Pain.” New England Journal of Medicine. 2026;394:907-916.

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