• 2026年7月14日

TP53 Y220C変異腫瘍に対するp53再活性化薬「レザタポプト(rezatapopt)」の第1相試験(PYNNACLE試験)について柏我孫子の総合内科専門医が解説

治療不可能とされた遺伝子変異への挑戦。がん細胞の自滅スイッチを再びオンにする画期的な証明

人間の体の中には、細胞が勝手に増殖して「がん」になるのを防ぐための強力なブレーキが存在します。その代表格が「p53」というがん抑制遺伝子です。しかし、多くの固形がん(半分以上のがん)では、このp53遺伝子に変異が起こり、ブレーキが壊れてしまっていることが知られています。これまで、この「壊れたp53」を元通りにする薬を開発することは極めて難しく、治療の大きな壁となっていました。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、この常識を覆す全く新しいメカニズムの飲み薬「レザタポプト(rezatapopt)」の第1相臨床試験(PYNNACLE試験)の結果が発表されました。今回はこの最新データに基づき、がんの増殖を抑える「体の仕組み」と、遺伝子の形を修復する最先端の個別化医療について柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 壊れたタンパク質の「ポケット」を埋める体の仕組み

p53遺伝子の変異の中でも、「TP53 Y220C」と呼ばれる特定の変異は、全固形がんの約1%に見られます。この変異が起こると、作られたp53タンパク質の構造が不安定になり、表面に小さな「ポケット(くぼみ)」ができてしまいます。これにより、がん細胞を自滅(アポトーシス)に導く本来の機能が失われてしまいます。 今回開発された新薬「レザタポプト」は、この変異によってできた特殊なポケットにピタッとはまり込み、不安定になったタンパク質を正常(野生型)の構造へとカチッと安定させる「再活性化(reactivator)」の働きを持ちます。これにより、がん細胞の中で再びブレーキが機能し始め、腫瘍の縮小をもたらすという、極めて精密で理にかなった体の仕組みを利用しています。

2. 複数のがん種で確認された「腫瘍縮小」の証明

今回の臨床試験では、これまでに複数の治療を受けてもがんが進行してしまった「TP53 Y220C変異」を持つ77名の患者様(卵巣がん、乳がん、膵臓がんなど)を対象に、レザタポプトが投与されました。 その結果、患者様全体での奏効率(がんが明確に縮小した割合)は20%でした。さらに注目すべきは、がんの増殖を促す別のアクセル遺伝子である「KRAS」に変異がない(野生型)患者様に限ると、有効な用量(1150mg以上)を投与された群で「30%」という高い奏効率が証明されたことです。卵巣がんや乳がんなど、幅広いがん種で腫瘍の縮小(部分奏効や完全奏効)が確認され、p53を再び目覚めさせるという世界初のアプローチが実際に人間で有効であることが示されました。

3. 副作用の管理と「食事」の意外な効果

新しいお薬であるため、副作用(有害事象)の確認も慎重に行われました。最も多く見られた副作用は「吐き気(58%)」「嘔吐(44%)」「疲労(39%)」などの消化器症状でした。 しかし興味深いことに、このお薬を「食事と一緒に飲む(食後投与)」ことで、薬の吸収が良くなって血液中の濃度が安定し、胃腸の副作用が大きく軽減されることが判明しました。この結果をもとに、今後の第2相試験では「1日1回 2000mgを食後に内服する」という安全で効果的な飲み方が推奨用量として決定されています。

4. 自分の「遺伝子」を知ることで未来が開ける時代へ

この研究は、がん治療が「臓器ごとの治療」から「一人ひとりの遺伝子変異に合わせた治療(プレシジョン・メディシン)」へと完全にシフトしていることを物語っています。現在、多くのがん診療拠点病院で「がんゲノムプロファイリング検査」が行われており、ご自身のがんがどのような遺伝子の異常(体の仕組みのエラー)によって起きているのかを調べることができるようになっています。レザタポプトのような画期的な新薬の恩恵を受けるためには、まずご自身の「敵の正体」を正確に知ることが第一歩となるのです。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、遺伝子や免疫の異常がどのようにして全身の病気やがんに繋がっていくのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、皆様のトータルな健康管理をサポートいたします。当院では直接の抗がん剤治療は行っておりませんが、がん予防のための生活習慣の改善、がん治療中の免疫力低下に伴う感染症予防(ワクチン接種)、そして抗がん剤の副作用からお口を守る医科歯科連携を通じた徹底した口腔ケアをご提供しています。全身の健康やご家族の病歴に不安がある方は、柏・我孫子エリアの相談窓口である当院へお気軽にご相談ください。私たちは、皆様が病気の不安から解放され、ご家族揃って安心で健やかな毎日を楽しめるよう全力で伴走いたします。

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Ecaterina E. Dumbrava, Geoffrey I. Shapiro, Aparna R. Parikh, et al. “Phase 1 Study of Rezatapopt, a p53 Reactivator, in TP53 Y220C–Mutated Tumors.” New England Journal of Medicine. 2026;394:872-883.

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