• 2026年3月2日

乳児期テイ・サックス病:全エクソームシークエンス検査が施行されHEXA遺伝子の病原性バリアントの複合ヘテロ接合性が示された一例

8か月女児。斜視と発達遅延がある。

斜視精査目的に眼科受診となった。

発達遅延はその発達履歴により全てのマイルストーンが生後5か月レベルであることが分かった。

眼底検査では両目に黄斑状のチェリーレッド斑点が見られた。

遺伝性疾患が疑われ、小児神経科において精査する方針となった。

頭部MRIではびまん性の髄鞘形成不全と脳梁形成不全を認めた。

全エクソームシークエンス検査が施行されHEXA遺伝子の病原性バリアントの複合ヘテロ接合性が示され、この所見により、「乳児期テイ・サックス病」の確定診断となった。

出生前遺伝子検査では、患者の母親は変異保因者であることが判明していたが、父親の検査は陰性だった。

しかし、患児の確定診断後、再度遺伝子検査が施行されると、父親が新たな変異体を保有していることが判明した。

「テイ・サックス病」は進行性の神経変性を引き起こす常染色体劣性のリソソーム貯蔵障害。

チェリーレッドスポットは他のリソソーム蓄積症でも見られる特徴的な所見で、正常な中心窩を取り囲み、その色を強調する異常に白くなった資質を多く含んだニューロンが特徴的。

患者は遺伝子治療の試験に参加したが痙攣が多発し、発達停止を引き起こした。

これまでの治療法の歴史も調べてみると…

まず遺伝性により失活した酵素(ヘキソサミニダーゼA)に変わる機能的酵素を患者に注入するというものでインスリン注射に類似した方法がとられたが、BBBは通過することが出来ず無効と判断された。

次に脳脊髄液にヘキソサミニダーゼAの注入試験が試行されたが、神経細胞は効率的に取り込むことはできず、無効と判断された。

現在はウイルスベクターを用いて、ニューロン内に新しいDNAを取り入れる方法が推し進められている。

N Engl J Med 2022; 386:e72

DOI: 10.1056/NEJMicm2116238

柏五味歯科内科リウマチクリニック

ホームページ