• 2026年3月29日

アルツハイマー病への抗ウイルス薬バラシクロビルの効果:第2相臨床試験(VALAD試験)の結果報告

アルツハイマー型認知症(AD)に対して単純ヘルペスウイルス(HSV)に対する治療薬であるバラシクロビルがADの症状改善や進行抑制に寄与するかを検証するため、大規模な二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験である「VALAD試験」が実施されました。

この治験では、HSV-1またはHSV-2の抗体が陽性で、初期症状(軽度認知障害または早期AD)を呈する成人120名が対象で、参加者は、バラシクロビル(4g/日)を投与する群とプラセボを投与する群に分けられ、78週間にわたって経過が観察されました。

主要評価項目である認知機能検査(ADAS-Cognitive)のスコア変化において、極めて重要な結果が得られました。78週時点でのスコア変化は、プラセボ群の6.92に対し、バラシクロビル群では10.86であり、バラシクロビル群の方が統計的に有意に認知機能の悪化が大きかったことが示されました(群間差 3.93、P = 0.01)。また、日常生活動作(ADCS-ADL)の維持や、脳内のアミロイドPETおよびタウPETによるイメージング指標においても、バラシクロビルによる改善効果や病理変化の抑制は認められませんでした。

安全性については、バラシクロビル群で血清クレアチニン値の上昇(腎機能への影響)がわずかに多く見られましたが、深刻な副作用の頻度は両群で同程度でした。

結論として、早期アルツハイマー病患者に対するバラシクロビルの投与は、認知機能を改善させないだけでなく、むしろ悪化を招く可能性があることが判明しました。そのため、HSV陽性の早期AD患者の治療としてバラシクロビルを使用することは推奨されないと結論付けられています。本研究の結果は、単純ヘルペスウイルスを標的とした現在の抗ウイルス療法がADの治療戦略として有効ではないことを強く示唆する重要なエビデンスとなります。

JAMA. 2026;335(6):511-522. doi:10.1001/jama.2025.21738

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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