• 2026年4月4日

脳底動脈閉塞症に対するテネクテプラーゼ静注療法の有効性と安全性:TRACE-5試験の結果

脳底動脈閉塞症(BAO)は脳梗塞の一種です。現在、発症24時間以内の血栓回収療法(EVT)が有効とされていますが、設備や専門医の不足により、世界的にそのアクセスは限られているのが現状です。こうした背景から、静注による血栓溶解療法の適応時間を延長できるかが重要な課題となっていました。

中国の66施設で実施された第3相臨床試験「TRACE-5」では、発症24時間以内のBAO患者452名を対象に、次世代の血栓溶解薬テネクテプラーゼ(TNK)の効果を標準治療と比較検証しました。その結果、投与90日後において「障害なし(mRS 0–1)」または「発症前の状態への回復」を達成した割合は、TNK群で38%に達し、標準治療群の29%を有意に上回る良好な結果を示しました。

安全性に関しては、最も懸念される症状を伴う頭蓋内出血(sICH)の発現率はTNK群で2%、標準治療群で3%と低く、90日時点の死亡率についても両群間で有意な差は認められませんでした。本研究の特筆すべき点は、高度な灌流画像(パーフュージョン)による選別を必要とせず、通常のCTやMRI検査のみで治療を開始できる「実用的なアプローチ」にあります。

この結果は、EVTが即座に実施できない医療機関や移送に時間を要する遠隔地においても、TNKがBAO患者の予後を改善し得る強力な選択肢であることを示しています。単回投与(ワンショット)で済む利便性も含め、今後の脳卒中救急医療における標準治療の枠組みを広げる画期的なエビデンスと言えるかもしれません。

Lancet. 2026;407(10531):763-772. doi:10.1016/S0140-6736(25)02633-9

柏五味歯科内科リウマチクリニック

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