- 2026年5月26日
手にできる「赤いしこり」とリンパの腫れ:スポロトリコイド型結節性リンパ管炎とは?~ガーデニング後の小さな傷から起こることがある感染症~
「庭仕事をしたあと、手に赤いしこりができた」
「傷のあとから腕に沿って赤いできものが増えてきた」
「抗菌薬を飲んでもなかなか治らない」
このような症状の背景に、“特殊な感染症”が隠れていることがあります。
今回ご紹介するのは、
スポロトリコイド型結節性リンパ管炎
と呼ばれる病態です。
少し難しい名前ですが、簡単にいうと、
土や植物にいる菌が傷口から入り、リンパの流れに沿って広がる感染症
です。特に、
- ガーデニング
- 農作業
- 園芸
- 土いじり
- 野外活動
のあとに起こることがあります。
今回は、患者さん向けにわかりやすく解説します。
■リンパ管とは?
体の中には、
- 血管
- 神経
- リンパ管
という“通り道”があります。
リンパ管は、
「体内の老廃物や免疫細胞を運ぶルート」
です。
感染が起こると、菌がこのリンパ管を伝って移動し、
「数珠のように赤いしこりが並ぶ」
ことがあります。これが、
結節性リンパ管炎
です。
■スポロトリコイド型とは?
「スポロトリコイド型」とは、
スポロトリコーシス(皮膚真菌感染症)に似た広がり方
をするタイプを意味します。特徴は、
- 最初の傷口付近に赤いしこり
- その後、腕や脚に沿って次々に結節が出る
- リンパ管に沿って広がる
というパターンです。
■今回のようなケース
今回の症例では、
- ガーデニング中に手をけが
- その後、手に赤いしこり
- 前腕へ向かって病変が拡大
- 肘近くにも赤い結節
- 腋窩リンパ節(わきのリンパ節)腫大
がみられました。これは典型的な
「リンパ管に沿った感染拡大」
のパターンです。
■原因となる菌
今回検出されたのは、
ノカルジア(Nocardia brasiliensis)
という菌でした。ノカルジアは、
- 土壌
- 植物
- 水
- ほこり
など自然環境に存在する細菌です。
健康な方にも起こりますが、
- 高齢者
- 糖尿病
- ステロイド使用
- 免疫抑制薬使用中
では重症化しやすいことがあります。
■ノカルジア感染症とは?
ノカルジアは特殊な細菌で、
一般的な抗菌薬では治りにくい場合があります。
また、
- 真菌(カビ)
- 結核菌
- 非結核性抗酸菌
などに似た振る舞いをするため、診断に時間がかかることがあります。

■どんな症状が出る?
主な症状は、
- 赤いしこり
- 押すと痛い結節
- 皮膚の腫れ
- 熱感
- 膿
- リンパ節腫大
などです。進行すると、
- 発熱
- 倦怠感
- 深部感染
につながることもあります。
■なぜ診断が難しいの?
普通の湿疹や細菌感染に見えることがあるためです。
しかし、
- 治療しても改善しない
- ガーデニング歴がある
- リンパに沿って広がる
- 結節が並ぶ
場合には、
「特殊感染症」
を考える必要があります。
■診断方法
診断には、
- 皮膚生検
- 培養検査
- 特殊染色
- 遺伝子検査
などを行います。特にノカルジアは、
「培養で見つかるまで時間がかかる」
ことがあります。
■治療は?
原因菌に応じた抗菌薬治療を行います。
ノカルジアでは、
- ST合剤(バクタ®など)
が使われることが多いです。
重症例では、
- 点滴治療
- 長期間治療
が必要になることもあります。

■放置するとどうなる?
感染が進行すると、
- 深部組織感染
- 潰瘍
- 慢性化
- 全身感染
につながることがあります。
特に免疫が低下している方では注意が必要です。

■予防のポイント
ガーデニングや土いじりでは、
- 手袋を使う
- 傷を放置しない
- 作業後に手洗い
- 傷が赤くなったら早めに受診
が重要です。
■まとめ
スポロトリコイド型結節性リンパ管炎は、
「土壌中の菌がリンパ管に沿って広がる特殊感染症」
です。特に、
- ガーデニング後
- 土いじり後
- 傷のあと
- 数珠状に広がる赤いしこり
がある場合には注意が必要です。
一般的な皮膚炎とは異なり、
「特殊な菌による感染」
の可能性があります。
早期診断・適切治療によって改善が期待できるため、気になる症状がある場合は、早めに皮膚科・内科を受診しましょう。
※今回のもと症例はこちらです。
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