• 2026年7月16日

正常組織における放射線治療の影響:がん放射線治療の進化と副作用。正常組織を守る「体の仕組み」と最新の放射線治療を柏我孫子の総合内科専門医が解説

ピンポイントでがんを狙い撃つ時代へ。細胞の「老化と炎症」が引き起こす副作用のメカニズム

がんと診断された患者様の多くが経験する「放射線治療」。手術、抗がん剤と並ぶがん治療の大きな柱ですが、患者様が最も不安に感じるのは「正常な細胞までダメージを受けて、重い副作用が出るのではないか?」という点です。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、放射線が正常な組織にどのような影響を与えるのか(急性および晩期の副作用)、そして最新の照射技術がいかにしてそのリスクを減らしているのかを詳細にまとめたレビュー論文が発表されました。今回はこの最新報告に基づき、放射線が引き起こす副作用の「体の仕組み」と、副作用を乗り切るためのトータルケアについて柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 劇的な進化を遂げた「ピンポイント照射」

かつての放射線治療は、がんの周辺にある正常な臓器にも広い範囲で放射線が当たってしまい、深刻なダメージを残すことがありました。しかし現代では、IMRT(強度変調放射線治療)やSABR(定位体幹部放射線治療)といった画期的な技術が登場しています。 これにより、放射線のビームを腫瘍の形に合わせて「曲げ」、正常な組織を避けてギリギリまで高い線量をがんにだけ集中させることができるようになりました。例えば前立腺がんの治療では、直腸と前立腺の間に「スペーサー(ゼリー状の物質)」を入れて物理的に距離を離すことで、直腸からの出血などの晩期副作用を劇的に(1%未満にまで)減らす工夫も標準的になりつつあります。

2. 副作用が起こる生物学的な「体の仕組み」

では、なぜ放射線が当たると正常な組織に副作用が起こるのでしょうか?放射線が組織を通過すると、細胞のDNAが傷つき、活性酸素(フリーラジカル)が発生します。これが「急性炎症」を引き起こし、治療中から治療直後に見られる皮膚炎や粘膜炎、肺炎などの急性副作用の原因となります。 さらに厄介なのは、治療後数か月から数年経ってから現れる「晩期副作用」です。傷ついた正常組織の細胞(幹細胞)が修復しきれずに「老化(細胞老化)」してしまい、そこから周囲に炎症を引き起こす物質(SASP:細胞老化関連分泌表現型)を出し続けます。この慢性的な炎症が、組織の線維化(硬くなること)や血管のダメージを引き起こし、臓器の機能を低下させるという体の仕組みが働いているのです。

3. 臓器の構造(直列と並列)によるダメージの違い

放射線に対する強さは、臓器の「作りの違い(体の仕組み)」によって大きく異なります。 例えば「腎臓」や「肺の末梢(肺胞)」は、小さなフィルターや風船が「並列」にたくさん並んでいる構造のため、一部が放射線で壊れても、残りの部分が機能を補ってくれます。しかし、「気管支」や「脊髄(神経)」は1本のパイプとして「直列」に繋がっているため、たった一か所でも放射線で潰れてしまうと、そこから先の機能が全て失われてしまうという弱点があります。最新の治療では、こうした臓器の構造を計算し尽くして照射計画が立てられています。

4. 未来の治療:AIと超高速照射(FLASH)

現在、治療のその日の「臓器の動きや腫瘍の縮み具合」に合わせて、ベッドに寝たままAIなどを用いてその場で照射計画を修正する「オンライン適応放射線治療」が実用化されつつあります。さらに、わずか1秒以下の超短時間で超高線量の放射線を当てる「FLASH放射線治療」という夢のような技術の研究も進んでおり、これが実現すれば、がん細胞だけを殺し、正常組織にはほとんどダメージを与えない時代が来ると期待されています。がん治療は「がんを叩く」ことと同じくらい、「正常な細胞を守り、副作用を管理する」ことが重要です。最新の医学は、患者様がより安全に治療を受けられるよう確実に進歩を続けています。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、がん治療や様々なお薬が全身の臓器にどのような影響を与えるのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、トータルな健康管理をご提案します。当院では直接の放射線治療は行っておりませんが、がん治療中は免疫力が低下しやすく、肺炎や帯状疱疹などの感染症リスクが高まるため、適切なワクチン接種と全身状態のモニタリングが極めて重要です。また、当院の内科・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方や、週末に急な体調不良を感じたがん治療中の患者様のご相談にもしっかり対応いたします。医科と歯科が一つ屋根の下で連携し、お口の粘膜炎ケアから全身のフォローアップまで、柏・我孫子エリアの皆様が安心して治療を乗り越えられるよう全力で伴走いたします。

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Deborah E. Citrin, Robert D. Timmerman. “Effects of Radiotherapy in Normal Tissue.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: 996-1009.

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