- 2026年7月16日
三叉神経栄養症候群:顔に「虫が這う感覚」がして掻きむしってしまう?治らない顔の潰瘍に隠された神経の体の仕組みを柏我孫子の総合内科専門医が解説
皮膚の病気ではなく、脳の病気だった。三叉神経のダメージが引き起こす奇妙な感覚と自傷のメカニズム
「顔に虫が這っているようなムズムズした感覚があり、どうしても掻きむしってしまう」「顎や鼻に深い傷(潰瘍)ができているのに、ちっとも治らない」——このような症状が長く続いている場合、それは単なる皮膚のかぶれや乾燥ではなく、顔の感覚を司る「神経」の奥深くに問題が潜んでいるかもしれません。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、顎の深い潰瘍を主訴に受診した47歳女性に隠されていた「三叉神経栄養症候群(Trigeminal Trophic Syndrome)」という非常に教訓的な症例が報告されました。今回はこの最新報告に基づき、神経の異常が皮膚を破壊してしまう「体の仕組み」と、皮膚の症状から全身の隠れた病気を見抜く総合内科的アプローチの重要性について専門医が解説します。
1. 絆創膏を外すと再発する「顔の潰瘍」
この47歳の女性は、1年前から右の顎(あご)に「虫が這うような感覚」があり、無意識にその部分を強く掻きむしってしまうため、皮膚科を受診しました。彼女の右顎には深くえぐれた潰瘍ができていましたが、不思議なことに右側の唇や顎の「痛みや温度」を感じる感覚は鈍くなっていました。 医師が潰瘍を絆創膏などでしっかりと覆い(密封ドレッシング)、物理的に触れないようにすると傷は綺麗に治りますが、覆いを外すと彼女は再び掻きむしってしまい、すぐに潰瘍が再発してしまいました。皮膚そのものの病気ではなく、彼女の「感覚」に異常が起きていることは明らかでした。
2. 異常感覚と自傷行為を引き起こす「体の仕組み」
精密検査として頭部のMRIを撮影したところ、脳の奥深くにある「三叉神経(顔の感覚を脳に伝える極太の神経)」の根本の部分に、異常な腫瘤(しゅりゅう)が見つかりました。 この病気は「三叉神経栄養症候群」と呼ばれます。脳梗塞や腫瘍、あるいは手術などによって三叉神経がダメージを受けると、その神経が担当している顔の領域に、強烈なムズムズ感や痛みなどの「知覚異常(dysesthesia)」が生じます。患者さんはその不快感を紛らわせようとして無意識に皮膚を深く引っ掻き続けてしまい、結果として治らない自傷性の潰瘍を作ってしまうという体の仕組みなのです。
3. 真犯人は全身の免疫疾患「サルコイドーシス」だった
この女性の三叉神経を侵していた腫瘤を脳外科手術で摘出し、顕微鏡で詳しく調べた結果、真犯人は「神経サルコイドーシス」であることが判明しました。サルコイドーシスとは、原因不明の免疫の異常によって全身のあらゆる臓器(肺、目、皮膚、神経など)に「肉芽腫(炎症の塊)」ができてしまう指定難病です。 手術によって原因となっていた神経の圧迫や炎症が取り除かれると、4ヶ月後には彼女を苦しめていた「虫が這うような不快な感覚」はすっかり消え去り、顎の潰瘍も綺麗に治癒しました。
4. 治らない皮膚症状から「全身の繋がり」を紐解く
この症例は、「治らない顔の傷」の原因が、実は「脳の神経」や「全身の免疫疾患」にあるという、人間の体の複雑な繋がりを私たちに教えてくれます。皮膚の症状だけを見て塗り薬を出し続けていても、決して根本的な解決には至りませんでした。 長引く顔の痛み、しびれ、ムズムズ感、そして原因不明の皮膚のトラブルにお悩みの方は、「ただの肌荒れ」と自己判断せず、全身の繋がりを的確に評価できる総合内科・リウマチ専門医へご相談ください。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医・リウマチ専門医の視点から、目の前の症状がどのような**「体の仕組み」で起きているのかを的確に分析し、一見無関係に思える皮膚や神経の症状から、隠れた自己免疫疾患(サルコイドーシスや膠原病など)を丁寧に紐解きます。当院の内科・発熱外来は土曜日の午後も17時まで**診療を行っており、平日お忙しい方の長引く不調や原因不明の症状のご相談にもしっかり対応いたします。また、お顔周りの神経痛に対しては、当院の歯科(土曜日は14時まで診療)と連携し、歯や顎の関節が原因ではないかを迅速に鑑別できる強みを持っています。柏・我孫子エリアで原因不明の症状にお悩みの方は、手遅れになる前にかかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。
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Anna Kersh, Janine Lobo Lopes. “Trigeminal Trophic Syndrome.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: e16.
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