- 2026年6月27日
【柏我孫子市・総合内科】非島細胞腫瘍性低血糖(NICTH)糖尿病薬を飲んでいないのに「危険な低血糖」。巨大腫瘍が引き起こす意識障害(NICTH)と体の仕組み
お腹の腫瘍が「偽のインスリン」を作り出す?ホルモンの暴走が脳のエネルギーを奪う驚きのメカニズム
「低血糖」と聞くと、糖尿病の治療でお薬が効きすぎたときに起こるもの、というイメージをお持ちの方が多いかもしれません。しかし、糖尿病でもなく、お薬も飲んでいない健康な子どもや大人が、突然危険な低血糖を引き起こして倒れてしまう病気があります。 今回ご紹介するのは、マサチューセッツ総合病院に救急搬送された12歳の少女の実際の症例です。朝、突然目を覚まさず、意味不明な言葉を発するようになった彼女の血糖値は「30 mg/dL」という極めて危険な状態(重症低血糖による意識障害)でした。医師たちの必死の謎解きによって明らかになったのは、一見無関係に思える「お腹の中に潜んでいた巨大な腫瘍」でした。今回は腫瘍が全身のホルモンバランスを狂わせる「体の仕組み」について柏我孫子の総合内科専門医が解説します。
1. 血糖値が下がる「体の仕組み」と低血糖の謎
私たちの体は、脳や筋肉を動かすエネルギー源である血液中の糖分(血糖値)を、膵臓から出る「インスリン」などのホルモンによって一定に保っています。通常、健康な人が食事をとらずに血糖値が下がると、体はインスリンの分泌をストップさせて糖分の消費を抑えます。 しかし、この少女の血液を調べたところ、インスリンは「検出限界未満(出ていない)」にもかかわらず、血糖値だけが異常に下がり続けていました。つまり、インスリン以外の「何者か」が、体に無理やり糖分を消費させていたのです。
2. 犯人はお腹の巨大腫瘍が作る「偽のインスリン(IGF-II)」
全身の精密検査(CT・MRI)を行った結果、少女の腹部に重さ5kg(28cm大)にも及ぶ巨大な腫瘍が発見されました。実はこの腫瘍が、**「インスリン様成長因子II(IGF-II)」という、インスリンにそっくりな形をした物質を大量に作り出して血液中に放出していたのです。この「偽のインスリン(IGF-II)」が全身の細胞に張り付き、「血液中の糖分をどんどん取り込め!」という強力な指令(インスリンシグナル)を出し続けた結果、血液中の糖分が枯渇し、脳にエネルギーがいかなくなって意識障害を引き起こしていました。これが「非島細胞腫瘍性低血糖(NICTH)」**と呼ばれる非常にまれで恐ろしい病態のメカニズムです。
3. 腫瘍の摘出と、劇的な回復
幸いなことに、組織の検査でこの巨大な腫瘍はがん(悪性)ではなく、平滑筋から発生した「良性腫瘍」であることが分かりました。小児外科医・内分泌内科医の連携チームによってこの5kgの腫瘍が全摘出されると、少女の血糖値は「手術直後」に嘘のように正常化しました。その後の経過も極めて良好で、18ヶ月後には再発もなく、スポーツや学校生活といった元気な日常を完全に取り戻しています。
4. 「原因不明の不調」には専門的な評価を
この症例から学べるのは、私たちの体は頭の先から足の先まで「ホルモン」という目に見えないネットワークで密接に繋がっているということです。「意識がない・ボーッとする」という脳の症状の原因が、実は「お腹の腫瘍」にあったように、一見関係のないような症状の裏に大きな病気が隠れていることがあります。 「最近ずっと疲れやすい」「意図せず体重が減ってきた」「お腹が張って少ししか食べられない(早期満腹感)」といった少しでも気になる体のサインがあれば、自己判断せずに総合的な視点を持つ総合内科専門医へご相談ください。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、症状が起きている表面上の部分だけでなく、ホルモンや免疫のネットワークがどう関わっているのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、原因不明の不調に対する正確な診断と最適な治療への道筋をご提案します。私たちは、柏・我孫子エリアの皆様が、見逃されやすい重大な疾患の不安から解放され、ご家族揃って安心で健やかな毎日を楽しめるよう、全力でサポートいたします。
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Katherine Lord, Pallavi Sagar, Rachel C. Whooten, Danielle B. Cameron, and Katelyn C. Dannheim. “Case 9-2026: A 12-Year-Old Girl with Altered Mental Status and Hypoglycemia.” N Engl J Med 2026;394:1216-1225.
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