• 2026年9月7日

【NEJM2026】SLEに対するオビヌツズマブ|B細胞を標的とする次世代治療とALLEGORY試験を専門医が解説

活動性SLEでSRI-4反応率76.7%。ステロイド減量とフレア抑制にも効果を示した第3相ALLEGORY試験

全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫システムの調節がうまく働かなくなり、自分自身の細胞や組織に対する免疫反応が生じる自己免疫疾患です。

皮膚や関節だけでなく、血液、腎臓、肺、心臓、神経系など、さまざまな臓器に症状を起こすことがあります。

その病態に深く関わっている免疫細胞の一つが、B細胞(Bリンパ球)です。

B細胞は、

  • 自己抗体の産生につながる
  • 炎症性サイトカインを介して炎症反応に関与する
  • T細胞に抗原を提示し、自己免疫反応を維持する

など、複数の経路を通じてSLEの病態に関与しています。

近年、SLEではベリムマブやアニフロルマブなど複数の分子標的薬が使用されるようになり、治療は大きく進歩しました。

それでも一部の患者さんでは病気の活動性が十分に抑えられず、副腎皮質ステロイドを長期間使用しなければならないことがあります。

そのため、

「病勢を十分に抑えながら、ステロイドをどこまで安全に減らせるか」

は、現在のSLE治療における非常に重要な課題です。

NEJMに発表された第3相ALLEGORY試験

2026年3月6日、『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に、第3相国際共同試験であるALLEGORY試験の結果がオンライン公開され、同年7月16日号に掲載されました。

この試験では、標準治療を受けていても活動性が残る成人SLE患者303人を対象として、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)を標準治療に追加した場合の有効性と安全性が検討されました。

なお、この試験では活動性の増殖性・膜性ループス腎炎などを有する患者は対象から除外されており、主として腎外病変を有する活動性SLEに対する効果を検証した試験であることが重要です。

患者さんは、

  • オビヌツズマブ群:151人
  • プラセボ群:152人

に1対1で無作為に割り付けられました。


オビヌツズマブとは?

オビヌツズマブは、B細胞表面に発現するCD20を標的とする、糖鎖改変型のタイプII抗CD20モノクローナル抗体です。

従来から使用されてきたリツキシマブはタイプI抗CD20抗体ですが、オビヌツズマブは抗体の糖鎖構造などを工夫することにより、NK細胞などを介した抗体依存性細胞傷害作用を高めるよう設計されています。

また、直接的なB細胞死を誘導する作用も持っています。

その結果、従来の抗CD20抗体よりも強力かつ持続的なB細胞除去をもたらす可能性があると考えられています。

重要なのは、

「B細胞をすべて永久に消してしまう薬」ではない

という点です。

CD20は主として成熟B細胞に発現しており、造血幹細胞や多くの形質細胞には発現していません。

オビヌツズマブは、SLEの病態に関与するB細胞集団を強力に減少させることで、自己免疫反応を抑える治療と考えると分かりやすいでしょう。

海外ではすでにループス腎炎に対する治療薬として承認されている地域がありますが、日本におけるSLE・ループス腎炎への承認状況とは異なるため、現時点では海外と国内の適応を区別して考える必要があります。


主要評価項目:SRI-4反応率76.7%

52週時点の主要評価項目は、SRI-4(SLE Responder Index-4)反応率でした。

SRI-4とは、SLE全体の病勢が明確に改善し、同時に他の臓器病変が悪化していないことなどを総合的に評価する指標です。

結果は、

オビヌツズマブ群:76.7%

プラセボ群:53.5%

でした。

調整後群間差は23.1ポイントで、統計学的にも明らかな差が認められました。

つまり、標準治療だけを続ける場合と比較して、オビヌツズマブを追加することで、より多くの患者さんが52週時点で明確な病勢改善を達成しました。


注目すべき「ステロイド減量効果」

SLE治療で非常に重要なのが、副腎皮質ステロイドをできるだけ少ない量まで減らすことです。

ステロイドは強力な抗炎症作用を持つ一方、長期間使用すると、

  • 骨粗鬆症
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 感染症
  • 白内障
  • 緑内障
  • 筋力低下

などの副作用につながることがあります。

ALLEGORY試験では、試験開始時にプレドニゾン換算10mg/日以上を使用していた患者さんについて、40週から52週まで7.5mg/日以下を維持できた割合も評価されました。

結果は、

オビヌツズマブ群:80.0%

プラセボ群:54.1%

でした。

単に病気の活動性を下げるだけではなく、ステロイドを減量しながら病勢を維持できたことは、臨床的に非常に重要な結果です。


より厳しい治療目標でも良好な結果

その他の主要副次評価項目も、オビヌツズマブ群がプラセボ群を上回りました。

たとえば52週時点のSRI-6反応率は、

68.9% vs 38.9%

でした。

また、40週時点でSRI-4を達成し、その状態を52週まで維持できた患者さんは、

72.0% vs 46.4%

でした。

つまり、単に一時的に改善するだけでなく、改善した状態を持続できる患者さんが増えたことも重要なポイントです。


SLEのフレアも減少

SLEでは病状が一度改善しても、その後再び悪化する「フレア」が問題になります。

ALLEGORY試験では、BILAGで定義された最初のフレアまでの時間についても、オビヌツズマブ群が有意に良好でした。

ハザード比は0.58でした。

これは、試験期間中のフレア発生リスクがプラセボ群と比較して低かったことを示しています。


SLEの「寛解」を目指せる可能性

近年のSLE治療では、

「症状が少し改善すればよい」

という考え方から、

「寛解あるいは低疾患活動性を目標にする」

Treat to Targetという考え方へと移行しています。

52週時点でDORIS基準による寛解を達成した割合は、

オビヌツズマブ群:33.8%

プラセボ群:13.8%

でした。

ただし、このDORIS寛解は主要評価項目ではなく、多重性調整の対象外となる追加副次評価項目です。

そのため、「寛解効果が確立された」と断定するのではなく、寛解を達成できる可能性を示す重要な結果として解釈するのが適切です。


B細胞を強力かつ持続的に減少させる

オビヌツズマブの特徴の一つが、B細胞を強力に減少させる作用です。

ALLEGORY試験でも、治療開始後早期から末梢血中B細胞の著明な減少が認められ、その状態が長期間維持されました。

また、

  • 抗dsDNA抗体
  • 補体C3
  • 補体C4

など、SLEの病勢を反映する免疫学的指標にも改善がみられました。

こうした結果は、

「SLEの病態を駆動するB細胞を十分に抑えることが、臨床的な病勢改善につながる可能性」

を支持しています。


安全性:感染症には注意が必要

強力なB細胞標的治療では、安全性、とくに感染症への注意が重要です。

ALLEGORY試験では有害事象は、

オビヌツズマブ群:88.7%

プラセボ群:81.5%

に報告されました。

重篤な有害事象は、

15.9% vs 11.9%

でした。

また、感染症はオビヌツズマブ群でより多く認められており、治療中には感染症の早期発見と適切な管理が必要です。

点滴時にはインフュージョンリアクション(輸注反応)を起こすこともあります。

そのため、抗CD20抗体治療では、

  • 感染症の有無
  • 血球数
  • 免疫グロブリン
  • B型肝炎ウイルス感染歴
  • ワクチン接種歴

などを総合的に確認しながら治療することが重要です。

なお、CD20は多くの形質細胞には発現していないため、

「B細胞が減る=すぐにすべての抗体がなくなる」

という意味ではありません。

免疫状態は患者さんごとに異なるため、適切なモニタリングが必要です。


ALLEGORY試験がSLE治療に与える意味

これまでSLEに対する抗CD20療法では、リツキシマブを用いたランダム化比較試験が期待された主要評価項目を達成できなかった歴史があります。

その中で今回、タイプII抗CD20抗体であるオビヌツズマブが、

  • SRI-4
  • BICLA
  • SRI-6
  • ステロイド減量
  • 持続的な治療反応
  • フレア抑制

という複数の評価項目で良好な結果を示したことには大きな意味があります。

SLE治療では、

「炎症を抑える」

だけでなく、

「免疫異常の仕組みに合わせて治療標的を選び、ステロイド依存から離れていく」

方向へ治療が進歩しています。

オビヌツズマブは、その流れをさらに進める可能性を持つ治療薬の一つと考えられます。

ただし、今回のALLEGORY試験は52週間の第3相試験です。

長期的な有効性・感染症リスク・低ガンマグロブリン血症などについては、今後も長期間の観察が必要です。

また、日本でのSLEに対する使用については、今後の承認状況を確認する必要があります。


□クリニックからのメッセージ

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医・リウマチ専門医・肝臓専門医が、それぞれの専門性を活かしながら診療を行っています。

SLEをはじめとする膠原病では、関節痛や皮疹だけでなく、

  • 発熱
  • 倦怠感
  • 貧血
  • 血小板減少
  • 腎機能異常
  • 尿蛋白
  • 肝機能異常
  • 感染症

など、複数の臓器にまたがる変化を総合的に評価することが重要です。

当院では、一つ一つの症状や検査値を単独の「点」として見るのではなく、体の仕組みという「線」でつなげて考えることを大切にしています。

当院の内科は土曜日午後も17時まで診療を行っております。

平日の通院が難しい患者さんにも、定期的な血液・尿検査や治療経過の確認を受けていただける体制づくりに努めています。


膠原病治療では、お口の健康管理も大切です

SLEなどの膠原病では、ステロイドや免疫抑制薬、分子標的薬を使用する患者さんも少なくありません。

そのような場合には、治療開始前から、

  • むし歯
  • 歯周病
  • 根尖病変
  • 口腔乾燥
  • 義歯による粘膜障害

など、感染源となり得る口腔内の問題を把握しておくことが重要です。

歯周病があると、歯周ポケットの炎症部位から一過性に細菌が血液中へ入り込むことがあります。

健康な人では通常大きな問題にならないことも多い一方、強い免疫抑制状態では感染症への注意が必要になるため、日頃から口腔衛生状態を整えておくことには意味があります。

ただし、

「PMTCを行えば重症感染症を予防できる」

とまで証明されているわけではありません。

重要なのは、内科治療の内容や免疫抑制の程度を歯科側も理解し、必要な歯科治療や口腔ケアを安全なタイミングで行うことです。

当院では医科と歯科が同じ院内で診療している利点を生かし、必要に応じて内科医と歯科医師が情報を共有しながら診療を行っています。

血球数や免疫抑制治療の内容、感染症リスクなどを考慮しながら、患者さん一人ひとりに適した口腔管理を心がけています。

当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで診療しております。


■受診をご希望の方へ

👉 【医科】アレルギー・リウマチ膠原病内科/総合内科/発熱外来

関節痛、原因不明の発熱・だるさ・皮膚症状、SLEを含む膠原病についてのご相談、健康診断異常などに対応しています。

※当院の内科・発熱外来は土曜日午後も17時まで診療しております。

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正式な引用文献

Furie RA, Dall’Era M, Vital EM, et al.
Efficacy and Safety of Obinutuzumab in Active Systemic Lupus Erythematosus.
N Engl J Med. 2026;395(3):243-254.
doi:10.1056/NEJMoa2516150


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ALLEGORY試験で注目されたポイントの一つも、病勢を抑えながらステロイドを減量できたことでした。

ステロイドの作用と副作用を理解し、安全に治療を続けるための考え方を専門医の視点から解説します。


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SLEなどでステロイドや免疫抑制薬、分子標的薬を使用している患者さんでは、感染源となり得るむし歯や歯周病を放置しないことが重要です。

毎日の歯みがきに加え、必要に応じて歯科医院で歯周病の評価や専門的な口腔ケアを受けることは、口腔環境を良好に保つために役立ちます。

当院では医科と歯科が情報を共有しながら、免疫抑制治療中の患者さんにも配慮した歯科診療を行っています。


3.健診データを「点」ではなく「線」で見たい方へ

【総合内科】定期健診の血液データを点から線へ。自覚症状のない初期病態を見逃さない健康診断の活用法

SLEをはじめとする自己免疫疾患では、ときに白血球・血小板・腎機能・尿検査などの小さな変化が診断の手がかりになります。

一方で、血液検査の異常には感染症や生活習慣病、肝疾患など多くの原因があります。

一つの異常値だけで判断するのではなく、過去からの変化や他の検査結果、症状を合わせて総合的に評価することが重要です。

健康診断のデータを「点」ではなく「線」で読み解く考え方について詳しく解説します。

【執筆・監修医師プロフィール】

■ 福田 匡志(ふくた まさし)
成田赤十字病院 リウマチ膠原病内科部長 / 柏五味歯科・内科リウマチクリニック 医師。
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医。

■ 福田 涼子(ふくた りょうこ)
日本大学松戸歯学部歯内療法学講座兼任講師。
日本歯内療法学会専門医、日本歯科保存学会認定医。

■ 春原 優子(はるはら ゆうこ)
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

全国の患者様やご家族に向けて、関節リウマチ・膠原病・総合内科・消化器・歯科疾患を中心に全身に関する最新の医学論文や正しい知識を分かりやすく解説・発信しています。

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