• 2026年10月27日

非糖尿病性CKDにフィネレノンは有効か|腎機能低下を緩やかにしたFIND-CKD試験

糖尿病がなくても、慢性腎臓病(CKD)は進行することがあります。血圧管理や腎臓を保護する治療を続けていても、尿にアルブミンが漏れ、腎機能が少しずつ低下していく患者さんは少なくありません。

2026年に『The New England Journal of Medicine』に発表されたFIND-CKD試験では、糖尿病のないCKD患者さん1,584人を対象に、フィネレノンを従来の治療に追加する効果が検討されました。

その結果、フィネレノン群では、プラセボ群よりも腎機能の低下が緩やかになりました。一方、高カリウム血症は増加し、腎イベント単独の減少には統計学的な有意差が認められませんでした。

この研究が明らかにしたことと、まだ分かっていないことを、研究対象・主要結果・安全性・実際の診療への示唆に分けて解説します。

慢性腎臓病では「腎機能」と「アルブミン尿」の両方が重要

慢性腎臓病は、腎機能の低下や尿の異常などが3か月以上続く状態です。糖尿病だけでなく、高血圧、慢性糸球体腎炎、その他の腎疾患でも生じます。

診療では、主に次の2つを組み合わせて評価します。

  • eGFR: 腎臓が血液をろ過する働きを推定した指標
  • 尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR): 尿に漏れるアルブミンの量を評価する指標

eGFRが同じでも、アルブミン尿が多い患者さんでは、腎機能低下や心血管疾患のリスクが高くなることがあります。

そのため、採血のクレアチニン値だけでなく、尿検査と経時的な変化を合わせて確認することが大切です。

CKDの評価と管理の全体像は、慢性腎臓病:2025年最新知見と管理戦略でも解説しています。

フィネレノンとはどのような薬か

フィネレノンは、非ステロイド型の選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬です。

ミネラルコルチコイド受容体は、塩分や水分の調節に関わる一方、過剰に活性化すると、炎症や線維化に関係する経路にも影響します。フィネレノンはこの受容体の働きを抑える薬です。

これまで、2型糖尿病を合併するCKDでは、フィネレノンによる腎・心血管アウトカムの改善が報告されていました。

FIND-CKD試験は、その効果が糖尿病のないCKDにも認められるかを調べた研究です。

ただし、この試験で直接検証されたのは、腎機能の推移や臨床イベントです。患者さんの腎組織で炎症・線維化がどの程度改善したかを直接証明した研究ではありません。

FIND-CKD試験はどのような研究か

FIND-CKD試験は、国際共同・第Ⅲ相・二重盲検・無作為化・プラセボ対照試験です。

糖尿病のないCKD患者さんを、フィネレノン群793人とプラセボ群791人に割り付けました。

対象はアルブミン尿を伴うCKD

主な組み入れ条件は、次のいずれかでした。

eGFR(mL/min/1.73m²)UACR(mg/gCr)
25以上60未満200~500
25以上90未満500~3,500

さらに、スクリーニング時の血清カリウム値が4.8 mmol/L以下で、ACE阻害薬またはARBを少なくとも4週間、安定した用量で使用していることが条件でした。

アルブミン尿の少ないCKDや、eGFRが25未満の患者さんまで広く対象にした試験ではありません。

非糖尿病性CKD患者1,584人を対象としたFIND-CKD試験の組み入れ条件、群分け、主要評価項目。

図説:糖尿病のない、アルブミン尿を伴うCKD成人1,584人を、フィネレノン群793人とプラセボ群791人に無作為に割り付けた。主な組み入れ条件は、eGFR 25以上60未満かつUACR 200~500 mg/gCr、またはeGFR 25以上90未満かつUACR 500~3,500 mg/gCrであり、血清カリウム4.8 mmol/L以下、安定したACE阻害薬またはARB治療を要した。主要評価項目は開始時から32か月までのtotal eGFR slope。ループス腎炎、ANCA関連血管炎、多発性嚢胞腎などは対象外である。

参加者の特徴

項目試験全体の特徴
参加人数1,584人
平均年齢54.7歳
女性33.8%
ベースラインeGFR両群とも約47 mL/min/1.73m²
UACR中央値818.9 mg/gCr
主な原疾患慢性糸球体腎炎:約57%、高血圧性・虚血性腎症:約29%
RAS阻害薬使用99.7%
SGLT2阻害薬使用17.0%

ループス腎炎、ANCA関連血管炎、多発性嚢胞腎の患者さんは除外されました。また、スクリーニング前6か月以内に免疫抑制療法を受けていた患者さんも対象外でした。

投与方法

試験では、eGFRに応じてフィネレノン10 mgまたは20 mgを1日1回で開始し、血清カリウム値と腎機能を確認しながら調整しました。

これは臨床試験の投与方法であり、非糖尿病性CKDに対する一般的な処方推奨を示すものではありません。

主要結果:腎機能の低下速度が緩やかになった

主要評価項目は、開始時から32か月までの「eGFRの年間平均変化量(total eGFR slope)」でした。

主要評価項目フィネレノン群プラセボ群
eGFRの年間平均変化量−3.3−4.0
95%信頼区間−3.6~−3.1−4.3~−3.8

単位:mL/min/1.73m²/年

群間差は、年間0.7 mL/min/1.73m²でした。

  • 95%信頼区間:0.3~1.1
  • P<0.001

つまり、両群とも平均的には腎機能が低下しましたが、フィネレノン群では低下の速さが緩やかでした。

フィネレノン群とプラセボ群のeGFR年間変化量と95%信頼区間。群間差は年間0.7。

図説:開始時から32か月までのeGFR年間平均変化量は、フィネレノン群−3.3[95%信頼区間−3.6~−3.1]、プラセボ群−4.0[−4.3~−3.8]mL/min/1.73m²/年であった。群間差は0.7[0.3~1.1]mL/min/1.73m²/年(P<0.001)。初期のeGFR変化を含む主要解析であり、腎機能の回復を示すものではない。

「腎機能が回復した」という結果ではありません。

また、この平均値から、個々の患者さんについて「透析を何年遅らせられる」と計算することもできません。腎機能の経過は、原疾患、血圧、アルブミン尿、合併症などによって異なります。

開始直後と、その後の変化は分けて考える

フィネレノンでは、投与開始初期にeGFRが低下することがあります。

本試験では、開始3か月までと、それ以降の変化を分けたモデルで解析しました。主要評価項目には、初期の変化も含まれています。

一方、3か月以降の慢性期のeGFR低下速度をみた探索的解析でも、フィネレノンを支持する結果でした。

ただし、実際の診療で腎機能が急に悪化した場合には、薬による血行動態の変化だけでなく、脱水、感染症、併用薬などの評価が必要です。

腎・心血管イベントは減ったのか

副次評価項目は、あらかじめ定めた順番に従う階層的検定で評価されました。

評価項目フィネレノン群プラセボ群ハザード比[95%信頼区間]
腎・心血管複合イベント110人(13.9%)134人(16.9%)0.77[0.60~0.99]
腎複合イベント104人(13.1%)125人(15.8%)0.78[0.60~1.01]
心血管複合イベント10人(1.3%)16人(2.0%)0.60[0.27~1.33]

腎・心血管複合イベントは、次のいずれかが起きることと定義されました。

  • 4週間以上持続する、ベースラインから57%以上のeGFR低下
  • 腎不全
  • 心不全による入院
  • 心血管死

腎不全には、確認されたeGFR 15未満、30日以上の長期透析、腎移植が含まれます。

腎・心血管複合イベントには有意差があった

腎・心血管複合イベントのハザード比は0.77で、統計学的に有意な低下が認められました(P=0.04)。

これは追跡期間中のハザードが相対的に23%低かったという意味であり、患者さん全体の23%でイベントを防いだという意味ではありません。

腎イベント単独では有意差に届かなかった

腎複合イベントは、フィネレノン群で少ない方向でしたが、95%信頼区間は1をまたぎ、P=0.06でした。

したがって、「腎イベント単独を有意に減らした」とは表現できません。

心血管複合イベントも発生数が少なく、信頼区間が広いため、この試験だけで心血管保護効果を確定することは困難です。階層的検定の解釈上も、その後の評価項目を独立した確証的結果として扱うことはできません。

FIND-CKD試験の腎・心血管複合、腎複合、心血管複合イベントのハザード比を比較した図。

図説:腎・心血管複合イベントのハザード比は0.77[95%信頼区間0.60~0.99]、腎複合イベントは0.78[0.60~1.01]、心血管複合イベントは0.60[0.27~1.33]であった。副次評価項目には階層的検定が適用され、腎複合イベントはP=0.06で有意差に届かなかった。心血管複合イベントの結果は確証的な効果として解釈しない。

アルブミン尿も減少した

探索的評価では、6か月時点のUACRに、プラセボと比較して35.4%の相対的低下が認められました。

  • 95%信頼区間:30.9~39.6%

これは、各群のベースラインからの変化を踏まえた群間比較です。「フィネレノンを服用した全員で尿中アルブミンが35.4%減った」という意味ではありません。

また、アルブミン尿の減少は重要な所見ですが、それだけで将来の透析回避を保証するものではありません。腎機能の推移や臨床イベントと合わせて評価する必要があります。

安全性:高カリウム血症が増加した

フィネレノンの使用で特に注意する副作用が、高カリウム血症です。

カリウムは筋肉や心臓の電気的活動に必要ですが、血液中で過剰に増えると、不整脈などにつながることがあります。

安全性項目フィネレノン群プラセボ群
高カリウム血症として報告された有害事象17.0%13.3%
高カリウム血症による永久中止1.5%0.1%
高カリウム血症による入院0.9%0.6%
急性腎障害2.9%3.2%
重篤な有害事象全体20.9%21.2%

高カリウム血症による死亡は報告されませんでした。

一方、中央検査室での測定値では、血清カリウム6.0 mmol/L超がフィネレノン群4.3%、プラセボ群2.3%で認められました。有害事象として報告された高カリウム血症と、採血で一定の基準値を超えた割合は、別の指標です。

この試験は、開始時のカリウム値を制限し、定期的な採血と休薬・用量調整を行う条件で実施されました。

したがって、結果を診療に生かす際も、血清カリウム、腎機能、血圧、併用薬を確認できる管理体制が前提となります。

フィネレノン群とプラセボ群の高カリウム血症、関連する治療中止・入院、急性腎障害の割合。

図説:高カリウム血症として報告された有害事象はフィネレノン群17.0%、プラセボ群13.3%であった。高カリウム血症による永久中止は1.5%対0.1%、入院は0.9%対0.6%、急性腎障害は2.9%対3.2%であった。記述的な安全性比較であり、各項目の有意差を示すものではない。結果は、組み入れ時の血清カリウム値を4.8 mmol/L以下に限定し、定期的な採血と休薬・用量調整を行った試験条件下で得られた。

SGLT2阻害薬に追加する効果は、どこまで分かったのか

CKDの治療では、RAS阻害薬やSGLT2阻害薬が重要な役割を担います。

SGLT2阻害薬による腎保護の研究については、SGLT2阻害薬と腎予後:SMART-Cメタ解析をご参照ください。

FIND-CKDでは、開始時にSGLT2阻害薬を使用していた参加者は17%でした。

SGLT2阻害薬使用の有無で分けた解析では、効果の方向はおおむね一致していました。しかし、併用していた患者さんは270人にとどまり、その集団の推定値には不確実性があります。

SGLT2阻害薬にフィネレノンを追加する効果を、独立した十分な規模の試験で直接検証したわけではありません。

したがって、「RAS阻害薬・SGLT2阻害薬・フィネレノンの3剤併用が、非糖尿病性CKDの全患者さんで標準治療になった」と解釈することはできません。

ループス腎炎やANCA関連血管炎にも使えるのか

本試験では、ループス腎炎とANCA関連血管炎の患者さんは除外されました。

また、直近6か月以内に免疫抑制療法を受けた患者さんも対象外です。

そのため、今回の結果を、活動性のある自己免疫性腎炎や、免疫抑制療法中の患者さんへそのまま当てはめることはできません。

自己免疫疾患に伴う腎障害では、免疫学的な炎症を抑える治療と、残存する腎機能を守る治療を区別して考える必要があります。本試験は、フィネレノンが免疫抑制療法の代わりになることを示していません。

この研究の限界

主要評価項目は腎機能低下速度という代替指標

eGFR slopeは腎保護薬の評価に用いられる重要な指標ですが、透析導入や死亡そのものとは異なります。

腎・心血管複合イベントの結果は臨床的意義を補強しますが、腎イベント単独には有意差がなく、臨床イベントを評価する検出力にも限界がありました。

対象はアルブミン尿を伴う、特定のCKD集団

アルブミン尿の少ないCKD、eGFR 25未満、多発性嚢胞腎、ループス腎炎、ANCA関連血管炎などへの一般化はできません。

現在の治療への上乗せ効果には検討の余地がある

SGLT2阻害薬の使用率が17%であったため、SGLT2阻害薬を十分に使用している患者さんに対する追加効果は、さらに検証が必要です。

他のMRAとの直接比較ではない

本試験はプラセボとの比較です。スピロノラクトンやエプレレノンより有効、あるいは安全であることを直接証明した研究ではありません。

企業資金による試験

研究はバイエルの資金提供で実施されました。二重盲検・無作為化という研究上の強みとともに、資金提供元や解析体制も確認して読む必要があります。

日本の承認適応と研究結果は分けて考える

2026年10月時点で国内で承認されているフィネレノンの効能・効果は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病と、所定の条件を満たす慢性心不全です。

糖尿病のないCKDの腎保護を目的とする使用は、今回の研究結果だけで国内承認適応になるものではありません。 一方、糖尿病がなくても、承認条件を満たす慢性心不全に対して使用される場合があります。処方の可否は、最新の電子添文と患者さんの病態に基づいて判断します。

FIND-CKD試験で示された効果、未確立の点、対象外疾患と国内承認適応を整理した図。

図説:FIND-CKDは、RAS阻害薬を背景治療とするアルブミン尿を伴う非糖尿病性CKDで、フィネレノンによるeGFR低下速度の改善を示した。一方、腎イベント単独の減少、SGLT2阻害薬との十分な併用効果、対象外疾患への適用は確立していない。研究による有効性の評価と国内承認適応は区別する。

この研究を診療にどう生かすか

FIND-CKD試験は、RAS阻害薬を使用している、アルブミン尿を伴う非糖尿病性CKDにおいて、フィネレノンが32か月間のeGFR低下を緩やかにしたことを示しました。

腎・心血管複合イベントにも減少が認められましたが、腎イベント単独の効果、SGLT2阻害薬との併用効果、対象外の腎疾患への適用には不確実性が残ります。

現時点では、既存の腎保護治療を適切に行いながら、アルブミン尿、腎機能の推移、カリウム値、原疾患を評価し、新たな研究成果と承認情報を診療へ反映していくことが重要です。

尿蛋白や腎機能の低下を指摘された方へ

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、健診で指摘された尿の異常や腎機能低下について、血圧・生活習慣・内服薬・全身疾患を含めて評価します。腎炎が疑われる場合や腎機能低下が進む場合には、腎臓内科と連携して診療を進めます。

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一次文献・出典

  1. Heerspink HJL, Neuen BL, Agarwal R, et al. Finerenone in Persons with Chronic Kidney Disease without Diabetes. N Engl J Med. 2026;395:533–545.
    DOI:10.1056/NEJMoa2604625
    試験登録:NCT05047263
  2. Heerspink HJL, Agarwal R, Bakris GL, et al. Design and baseline characteristics of the FIND-CKD randomized trial. Nephrol Dial Transplant. 2025;40:308–319.
  3. バイエル薬品.ケレンディア製品情報。国内承認適応・使用条件は最新の電子添文を参照。
    PMDA 医療用医薬品情報検索

【本記事の執筆・医学監修】
■ 福田 匡志(ふくた まさし)
成田赤十字病院 リウマチ膠原病内科部長 / 柏五味歯科内科リウマチクリニック 医師
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医
👉 福田匡志医師の詳しい経歴・専門資格はこちら

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