• 2026年7月4日

弁膜症と冠動脈疾患の合併に対するQFR/FFRガイド下CABG:FAVOR IV-QVAS試験:手術による体への負担と最新の治療戦略について総合内科専門医が解説

「見た目の狭さ」だけで手術をしない。本当に必要な血管だけを治療することが合併症を防ぐ画期的な証明

「心臓の弁を治す手術と同時に、細くなっている血管(冠動脈)のバイパス手術もしましょう」――弁膜症を患っている方の約20%は冠動脈疾患も合併しており、このように複数の心臓手術を同時に勧められることがあります。これまで、どの血管をバイパスするかは、血管造影検査で「見た目が50%以上狭くなっているか」という解剖学的な基準で決められるのが世界的な常識でした。 しかし今回、医学誌の一つ『The Lancet』にて、その常識を覆す中国での大規模な臨床試験(FAVOR IV-QVAS試験)の結果が発表されました。見た目だけでなく、「実際に血流が不足しているか」を最新技術で評価してから手術を行うことで、心臓への負担が減り、術後の命に関わる合併症が劇的に減少することが証明されたのです。今回はこの最新データに基づき、心臓手術のダメージが全身に及ぼす「体の仕組み」と、より安全な医療への進化について専門医が解説します。

1. 人工心肺による「長時間のダメージ」の体の仕組み

心臓の手術をする際、心臓を一時的に止めて血液を全身に循環させる「人工心肺装置」を使用します。実はこの人工心肺を使っている時間が長引けば長引くほど、全身の血液がダメージを受け、強い炎症が引き起こされます。 さらに、心臓の筋肉や腎臓に十分な酸素がいかない状態(虚血再灌流障害)が続くことで、術後に心筋梗塞を起こしたり、腎臓が機能しなくなって透析が必要になったりするという、非常に恐ろしい体の仕組みが潜んでいます。つまり、手術中の時間をいかに短くし、体への余計なダメージ(侵襲)を減らすかが、患者様の命を守る最大の鍵なのです。

2. 最新の評価法「FFR(冠血流予備量比)」とは?

そこで今回注目されたのが、「見た目の狭さ」ではなく「血流の悪さ」を測る「FFR(冠血流予備量比)」という評価法です。実は、血管が70〜80%狭く見えても、実際には十分に血液が流れており、バイパス手術を急がなくても問題ないケースがたくさんあります。 本試験では、血管造影の画像からAIなどを駆使して血流を計算する最新の「血管造影由来FFR」を用い、「本当に血流が足りていない血管(FFR 0.80以下)にだけバイパスを行う」というグループと、「見た目で狭い血管すべてにバイパスを行う」という従来のグループを比較しました。

3. 大規模試験が証明した「合併症リスクの劇的な低下」

約800人を対象としたこの試験の結果は、驚くべきものでした。FFRを用いて「本当に必要な血管だけ」に手術をしたグループは、従来の方法に比べて一人あたりのバイパス本数が減り、人工心肺の時間が平均で約23分短縮されました。 その結果、術後30日以内の「死亡・心筋梗塞・脳卒中・新規の透析」といった重大な合併症の発生率が、従来グループの13.4%から、FFRグループでは7.8%へと(リスク比0.58)減少したことが証明されました。特に術後の心筋梗塞のリスクは73%低下していました。

4. 適切な評価が「安全な手術」への第一歩

この研究は、「とりあえず狭いところは全部治しておく」という足し算の医療から、体の仕組みを理解して「不要なダメージを引き算する」医療へと、心臓手術のパラダイムシフトを示す極めて重要な結果です。 ご自身やご家族が心臓の病気を指摘された際、「すぐに手術が必要なのか」「本当にそこまで大規模な手術が必要なのか」と不安になることがあると思います。そのような時は自己判断で思い悩まず、まずは全身の血管や心臓の状態を的確に評価できる総合内科・循環器内科へご相談いただき、高度医療機関での最適な治療への橋渡しを受けることが大切です。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、病気そのものだけでなく、治療や手術が全身の臓器にどのような影響を与えるのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、患者様お一人おひとりの状態を正確に評価します。心臓の異常を見逃さず、高度医療機関(循環器専門病院や心臓血管外科)での専門的な治療が必要な際には、最新の知見に基づいた最適なタイミングで橋渡しを行います。私たちは、柏・我孫子エリアの皆様が、心臓や重大な病気への不安から解放され、ご家族揃って安心で健やかな毎日を楽しめるよう、全力でサポートいたします。

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Yunpeng Zhu, Zhaoyun Cheng, Yuan Zhao, et al. “Angiography-derived fractional flow reserve versus coronary angiography to guide coronary artery bypass grafting in patients undergoing surgical valve procedures with concomitant coronary artery disease in China (FAVOR IV-QVAS): a multicentre, triple-blind, randomised trial.” Lancet 2026; 407: 1161-1170.

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