• 2026年7月17日

心筋梗塞における非責任病変に対するPCIのタイミング:iMODERN試験の結果を柏我孫子の総合内科専門医が解説

緊急時に無理してすべての血管を治す必要はない。後日のMRI評価でも十分に命を守れるという画期的な証明

急性心筋梗塞(STEMI)は、心臓の血管(冠動脈)が突然詰まり、一刻も早くカテーテルで血流を再開させなければならない命に関わる病気です。無事に詰まった血管(責任病変)の治療が終わった後、実は多くの患者様で「まだ完全には詰まっていないけれど、狭くなっている別の血管(非責任病変)」が見つかります。 これまでは、「せっかくカテーテルを入れているのだから、その場で一緒に治してしまった方が安全ではないか」という意見(即時治療)と、「心筋梗塞のショック状態の時に無理をして治療せず、後日落ち着いてから本当に治療が必要か見極めた方が良い」という意見(待機的治療)があり、世界中で議論が続いていました。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、このジレンマに答えを出す重要な臨床試験(iMODERN試験)の結果が発表されました。今回はこの最新データに基づき、心筋梗塞時の心臓の「体の仕組み」と、最適な治療のタイミングについて柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 心筋梗塞時の心臓は「正しい評価が難しい」

心筋梗塞が起きている真っ最中、心臓は大きなダメージを受け、全体の血流が非常に不安定になっています。このとき、心臓の血管の圧力を測る特殊なワイヤー(iFRなど)を使って「残りの狭い血管を今すぐ治療すべきか」を判断しようとしても、心臓の血流のバランスが崩れているため、正確な評価が難しいという体の仕組み(血行力学的なエラー)が存在します。 実際、今回の試験では、緊急時にiFRを用いて評価した場合と、後日落ち着いてからMRIを用いて評価した場合とで、治療が必要だと判断された血管の割合に大きな差が出ることが確認されました。

2. iMODERN試験が証明した「待つことの安全性」

この試験では、1,146人の急性心筋梗塞の患者様を対象に、「その場ですぐに残りの血管も評価して治療するグループ(即時iFRガイド下PCI)」と、「退院後(6週間以内)に心臓のMRI検査を行い、本当に血流が不足している部分だけを治療するグループ(待機的MRIガイド下PCI)」に分け、3年間の経過を比較しました。 その結果、3年後に「死亡、心筋梗塞の再発、心不全による入院」が起きた患者様の割合は、即時グループで9.3%、待機的グループで9.8%と、統計学的な差は全くありませんでした。 つまり、緊急時に急いですべての血管を治療しなくても、後からじっくりと心臓のダメージをMRIで評価してから治療を行う戦略で、十分に患者様の命を守れることが証明されたのです。

3. 「無駄な治療」を減らし、安全性を高める

この結果は、患者様の体への負担を減らすという点で非常に大きな意味を持ちます。心筋梗塞の急性期に長時間の追加治療を行うことは、造影剤の使用量が増えて腎臓に負担をかけたり、合併症のリスクを高めたりする恐れがあります。 心臓がダメージから回復し、血流が安定した状態で「本当に血流が不足している血管(虚血)」だけをMRIで見極めるアプローチは、無駄なステント治療を減らし、人間の「体の仕組み」に寄り添った非常に理にかなった戦略と言えます。

4. 治療が終わってからが「本当のスタート」です

心筋梗塞は、カテーテル治療で血管を広げれば「完治」するわけではありません。血管が詰まった根本的な原因である「動脈硬化」は全身の血管に及んでおり、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病を徹底的にコントロールしなければ、必ずまた別の血管が詰まってしまいます。 大きな病院での緊急治療を無事に終えられた方は、その後の心臓を守り抜くためのトータルケアが極めて重要です。「血圧の管理がうまくいっていない」「お薬がたくさんあって不安だ」という方は、全身の血管の繋がりを的確に管理できるかかりつけ医へぜひご相談ください。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、血管の詰まりや動脈硬化がどのような**「体の仕組み」で起きているのかを丁寧に紐解きながら**、心筋梗塞の再発を防ぐための徹底した生活習慣病管理(血圧・血糖・脂質のコントロール)をご提案します。当院ではカテーテル治療自体は行っておりませんが、高度医療機関での治療後のフォローアップや、心不全を防ぐための最新のお薬(SGLT2阻害薬など)を用いた内科的アプローチに力を入れています。当院の内科・発熱外来は、土曜日午後も17時まで診療を行っておりますので、平日の通院が難しい方でも安心して治療を継続していただけます。 また、心臓に持病がある方にとって「お口の細菌」が血液に乗って全身に回ることは致命的なリスクとなります。当院の歯科は、土曜日午後2時(14時)まで診療を行っております。 医科と歯科が一つ屋根の下で連携し、心臓と全身の健康を守り抜く体制を整えておりますので、柏・我孫子エリアでトータルな健康管理をご希望の方はお気軽にご相談ください。

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Robin Nijveldt, Michael Maeng, Casper W.H. Beijnink, et al. “Immediate or Deferred Nonculprit-Lesion PCI in Myocardial Infarction.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: 958-968.

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