- 2026年10月17日
【歯科・総合内科】味覚障害の原因と治し方|「味が薄い」「口の中が苦い」は亜鉛不足?お口と体の仕組みを柏・我孫子の総合内科専門医・根管治療専門医が解説
食事がおいしく感じられないのはなぜ? 味覚障害の原因は、亜鉛不足だけではありません。
「いつもの料理の味が薄い」「何を食べても苦く感じる」「食事がおいしくなくなった」。
このような症状は、「味覚障害(みかくしょうがい)」と呼ばれることがあります。
味覚障害の原因には、亜鉛不足、お薬の影響、お口の乾燥、舌の炎症、風邪やウイルス感染後の変化など、さまざまなものがあります。
特に大切なのは、味覚障害は舌だけの病気とは限らないということです。鼻の働きや全身の栄養状態、隠れた病気が関係している場合もあります。
原因を調べて適切に治療すれば、改善が期待できるケースも少なくありません。
今回は、味覚を感じる「体の仕組み」から、原因・検査・治療・受診の目安まで、わかりやすく解説します。
1.そもそも、私たちはどうやって味を感じているの?
食べ物の味は、主に「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」という5つの基本的な味によって感じられます。
舌などには、味蕾(みらい)と呼ばれる小さな味覚センサーがあります。
食べ物に含まれる味の成分が唾液に溶け、味蕾の味細胞に届くことで、味の情報が神経を通じて脳へ伝わります。
さらに、鼻で感じる香りも、食事のおいしさを大きく左右しています。
例えば、風邪で鼻がつまったときに、料理の味がわかりにくくなった経験はありませんか?
実はこの場合、舌の味覚そのものよりも、嗅覚(においを感じる働き)が低下していることがあります。
味覚は、舌・唾液・神経・鼻・脳が協力して生み出す感覚なのです。

図:食物中の味物質が唾液に溶け、味細胞を刺激し、神経系を介して中枢に伝達される過程を示す模式図。嗅覚情報も風味の知覚に関わる。
2.味覚障害と亜鉛不足にはどんな関係があるの?
味を感じる細胞は、日々新しく生まれ変わっています
味蕾を構成する味細胞の多くは、比較的短い周期で入れ替わっています。細胞の種類によって寿命は異なりますが、おおむね10日前後で更新されるものもあります。
この細胞の維持や正常な働きを支える栄養素の一つが、必須ミネラルである亜鉛です。
亜鉛は細胞の増殖や分化、さまざまな酵素の働きに関わっています。
亜鉛が不足すると、味覚を感じる仕組みに影響し、「味が薄い」「味がしない」といった症状が起こることがあります。
亜鉛不足が起こりやすいのはどんな人?
- 食事量が少ない方や、偏った食生活が続いている方
- 極端なダイエットをしている方
- 高齢で食事量が減っている方
- 消化管の病気などで栄養を十分に吸収できない方
- 慢性肝疾患や腎疾患など、亜鉛の代謝に影響する病気がある方
ただし、味覚障害があるからといって、必ず亜鉛不足とは限りません。
また、血液中の亜鉛がやや低いだけで、すべての人に亜鉛のお薬が必要になるわけでもありません。
症状、食生活、持病、血液検査の結果を合わせて判断することが大切です。
3.亜鉛不足以外にもある、味覚障害の主な原因
① お薬の影響
日常的に飲んでいるお薬が、味覚に影響することがあります。
一部の降圧薬、抗菌薬、抗がん薬など、さまざまな薬剤で味覚の変化が報告されています。
その仕組みは薬によって異なり、味覚細胞や神経への作用、唾液分泌への影響、亜鉛代謝との関係などが考えられます。
自己判断でお薬を中止することは避け、処方医に相談してください。
② お口の乾燥(ドライマウス)
味の成分が味蕾に届くためには、唾液が重要な働きをしています。
唾液が減ると、味の成分が十分に溶けず、味を感じにくくなることがあります。
口腔乾燥は、加齢に伴う変化、お薬の副作用、脱水、口呼吸、唾液腺の病気など、複数の原因で起こります。
特に、目と口の乾燥が続く場合には、シェーグレン症候群という自己免疫疾患が隠れていることもあります。
③ 舌の炎症やお口の病気
舌炎、口腔カンジダ症、口腔粘膜の異常などによって、味覚に違和感が生じる場合があります。
鉄やビタミンB12などの不足が、舌の痛みや炎症に関係することもあります。
舌の表面が赤い、ヒリヒリする、白いものが付着しているといった症状がある場合には、口腔内の診察が大切です。
④ 風邪やウイルス感染後の変化
風邪やCOVID-19などの感染症に伴って、味覚や嗅覚が変化することがあります。
味覚障害と思っていても、実際にはにおいが感じにくくなっている場合もあります。
鼻づまりや嗅覚低下を伴う場合には、耳鼻咽喉科での評価が役立ちます。
⑤ 全身の病気や心理的な要因
糖尿病、肝臓や腎臓の病気、栄養障害などが味覚異常に関係する場合があります。
また、ストレスや心理的な負担が味覚症状と関連することもあります。
ただし、原因がすぐに見つからない場合でも、安易にストレスだけの問題と決めつけるべきではありません。

図2:味覚障害を起こす主な原因
味覚障害の主な原因を概念的に示した図。原因として、①亜鉛不足・栄養不足、②薬剤の影響、③口腔乾燥・舌や口腔の疾患、④かぜ・感染後および嗅覚障害、⑤糖尿病・肝疾患・腎疾患・シェーグレン症候群などの全身疾患、⑥ストレス・睡眠不足・自律神経の乱れ、を示す。味覚障害は単一の原因で生じるとは限らず、複数の要因が重なって発症することがある。患者ごとに背景が異なるため、症状だけで原因を断定せず、問診・診察・必要な検査を組み合わせて評価することが重要である。
4.「味が薄い」「何も食べていないのに苦い」――症状にも種類があります
味覚障害には、いくつかのタイプがあります。
| 症状 | 味覚障害の種類 |
|---|---|
| 以前より味が薄く感じる | 味覚減退 |
| 味がほとんど、または全くわからない | 味覚脱失 |
| 何も食べていないのに苦い・金属のような味がする | 自発性異常味覚 |
| 本来とは違う味に感じる | 異味症 |
ただし、症状の種類だけで原因を決めることはできません。
「いつから症状があるか」「急に始まったか」「鼻づまりがあるか」「口が乾くか」「新しく飲み始めた薬があるか」といった情報が診断の手がかりになります。
5.味覚障害では、どんな検査をするの?
味覚障害の診察では、まず問診と口腔内の診察を行い、必要に応じて血液検査や専門的な味覚検査を組み合わせます。
血液検査
患者さんの症状に応じて、次のような項目を確認します。
- 亜鉛:亜鉛欠乏の有無
- 血算・鉄・フェリチン:貧血や鉄欠乏の評価
- ビタミンB12など:栄養障害が疑われる場合
- 血糖・HbA1c:糖尿病の評価
- 肝機能・腎機能・アルブミン:全身状態や栄養状態の評価
すべての検査が全員に必要なわけではなく、症状に合わせて選択します。
口腔内・唾液の評価
舌炎、口腔カンジダ症、口腔乾燥などの有無を確認します。
シェーグレン症候群が疑われる場合には、必要に応じて自己抗体検査や唾液・涙液の検査を検討します。
専門的な味覚検査
耳鼻咽喉科などの専門医療機関では、味のついた小さな濾紙を舌に当てて調べる濾紙ディスク法や、電気刺激を利用した電気味覚検査などが行われることがあります。
当院では問診、口腔内診察、必要な血液検査などを通じて原因を評価し、専門的な味覚検査が必要な場合には適切な医療機関への相談をご案内します。

図3:味覚障害の診断から治療まで
味覚障害の診療の流れを模式的に示した図。まず、発症時期や症状の内容(味が薄い、苦い、においが分かりにくいなど)を確認し、服薬状況、食事内容、体重変化、口腔乾燥の有無などを問診で評価する。次に、舌炎、口腔乾燥、口腔カンジダ症、鼻づまりなどの口腔・鼻の所見を診察し、必要に応じて血液検査(亜鉛、鉄、ビタミン、血糖など)や専門的味覚検査を追加する。治療は原因に応じて、亜鉛補充、薬剤の見直し、口腔乾燥や舌炎の治療、原疾患の治療を選択し、数週間から数か月の経過観察で改善を評価する。耳鼻咽喉科・歯科・総合内科の連携が有用となる場合がある。
6.味覚障害は治るの? 原因に合わせた治療が大切です
亜鉛不足がある場合
亜鉛欠乏が確認され、症状との関連が考えられる場合には、食事の改善や亜鉛補充療法を検討します。
亜鉛を含む食品には、牡蠣、牛肉、魚介類、卵、大豆製品などがあります。
必要に応じて亜鉛製剤を使用しますが、効果が出るまでには数週間から数か月かかることがあります。
また、亜鉛を過剰に長期間摂取すると、銅欠乏による貧血や神経障害などが起こることがあります。
そのため、自己判断で高用量のサプリメントを飲み続けるのではなく、医師の管理のもとで治療を行うことが重要です。
お薬が原因と考えられる場合
原因として疑われるお薬について、処方医と相談しながら、必要性や代替薬の有無を検討します。
お口の乾燥や炎症がある場合
口腔乾燥には、原因に応じた保湿ケアや唾液分泌を助ける治療などを検討します。
舌炎や口腔カンジダ症があれば、それぞれに適した治療を行います。
歯科での口腔衛生管理も、お口の健康を保つうえで重要です。
ただし、歯のクリーニングだけですべての味覚障害が改善するわけではありません。 原因に合わせた医科・歯科の連携が大切です。

図:日本臨床栄養学会の診療指針2024に基づく血清亜鉛濃度の区分。60 μg/dL未満を亜鉛欠乏、60以上80 μg/dL未満を潜在性亜鉛欠乏とする。検査値のみで診断・治療の適応は確定しない。
7.味覚障害は早めに相談した方がよい? 「6か月」が一つの目安になる理由
味覚障害では、症状を長く放置しないことが大切です。
日本で行われた味覚障害患者1,059例の研究では、症状が出てから6か月未満で受診した患者さんは、6か月以上経過してから受診した患者さんと比べて、改善率が高く、回復までの期間も短いという結果が報告されています。
ただし、これは患者さんの治療経過を振り返った観察研究です。
早く治療したこと自体が回復率を高めたと断定できるわけではなく、原因や症状の重さなどが結果に影響した可能性もあります。
また、6か月以上経過した場合でも、改善する可能性はあります。
大切なのは、6か月になるまで待つことではなく、違和感が続いた時点で相談することです。
味覚の異常に加えて、食事量の減少、体重減少、お口の乾燥や痛みがある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
なお、突然の味覚異常とともに顔の麻痺、ろれつが回らない、片側の手足に力が入らないといった症状が現れた場合には、脳卒中などの可能性があるため、救急受診が必要です。

図5:味覚障害では早めの受診が大切です
味覚障害における早期受診の重要性を示した概念図。左側には、症状出現から6か月未満で相談した場合の一般的な流れとして、味の違和感に気づいた後に早期受診し、原因評価と適切な治療を早く開始しやすいことを示す。右側には、受診が6か月以上遅れた場合の一般的な流れとして、原因の特定や改善までに時間がかかることがある点を示す。下段の模式グラフは、早期受診群で改善しやすく回復期間が短い傾向、受診遅延群で回復に時間を要する傾向を概念的に表現したものである。これは日本の観察研究の傾向をわかりやすく示した概念図であり、すべての患者に同一の経過を保証するものではない。
8.味覚を守るために、日常生活でできること
日常生活では、次のことを意識してみましょう。
- 食事を極端に制限せず、たんぱく質やミネラルを含むバランスのよい食事を心がける
- こまめな水分補給と、お口の乾燥対策を行う
- 歯磨きや歯科受診など、適切な口腔衛生管理を続ける
- 服用しているお薬やサプリメントを確認する
- 味が薄く感じても、塩分や糖分を過剰に増やさない
味覚障害によって食事量が減ってしまうと、栄養不足がさらに進む悪循環につながる場合があります。
食べる楽しみと健康を守るためにも、原因を確認することが大切です。
9.クリニックからのメッセージ――味覚障害を「お口」と「全身」の両方から考える
「最近、味がわかりにくい」「何を食べても苦く感じる」。
こうした変化の背景には、亜鉛不足などの栄養状態の変化だけでなく、お薬の影響、口腔乾燥、糖尿病、自己免疫疾患などが関係していることがあります。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医・リウマチ専門医や肝臓専門医が在籍し、症状、服薬歴、栄養状態、血液検査の結果を総合的に評価しています。
また、医科と歯科を併設しているため、お口の乾燥や舌のトラブルについても、必要に応じて情報を共有しながら診療を進めることができます。
シェーグレン症候群などの全身疾患が疑われる場合にも、内科と歯科それぞれの視点が役立ちます。
「食事がおいしく感じられない」という症状を、単なる年齢の変化と決めつけず、お気軽にご相談ください。
受診をご希望の方へ
【医科】総合内科・リウマチ膠原病内科・味覚異常・栄養状態の評価
亜鉛不足、貧血、糖尿病、お薬の影響、全身疾患などが疑われる場合には、内科でご相談いただけます。
土曜日は17時まで診療しています。
【歯科】口腔乾燥・舌の違和感・口腔衛生管理
お口の乾燥、舌や口腔粘膜のトラブル、歯周病などが気になる場合には、歯科でご相談いただけます。
土曜日は14時まで診療しています。
柏五味歯科内科リウマチクリニック
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参考文献
- 阪上雅史.味覚障害の診断と治療.日本耳鼻咽喉科学会会報.2012;115(1):8–13.原著リンク
- 味覚障害1,059例の原因と治療に関する検討.日本耳鼻咽喉科学会会報.2013;116:77–82.DOI:10.3950/jibiinkoka.116.77
- 脇野修ほか.亜鉛欠乏症の診療指針2024.日本臨床栄養学会雑誌.2024;46(4):224–288.DOI:10.60432/jjscnut.46.4_224

【執筆・監修医師プロフィール】
■ 福田 匡志(ふくた まさし)
成田赤十字病院 リウマチ膠原病内科部長 / 柏五味歯科・内科リウマチクリニック 医師。
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医。
■ 福田 涼子(ふくた りょうこ)
日本大学松戸歯学部歯内療法学講座兼任講師。
日本歯内療法学会専門医、日本歯科保存学会認定医。
■ 春原 優子(はるはら ゆうこ)
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。
全国の患者様やご家族に向けて、関節リウマチ・膠原病・総合内科・消化器・歯科疾患を中心に全身に関する最新の医学論文や正しい知識を分かりやすく解説・発信しています。
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