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- 2026年11月8日
膠原病(全身性強皮症、皮膚筋炎・多発筋炎、血管炎、SLEなど)の死亡率は一般人口の2倍超|英国全国研究が示した感染症・呼吸器・心血管リスク
全身性強皮症、皮膚筋炎・多発筋炎、血管炎などの膠原病では、病気そのものの炎症や臓器障害に加えて、感染症や心血管疾患にも注意する必要があります。
では、こうした疾患を持つ患者さんの死亡率は一般人口と比べてどの程度高く、実際にはどのような原因で亡くなることが多いのでしょうか。
2026年11月3日、医学誌 Rheumatology に、英国の全国規模の医療データを用いて、希少自己免疫性リウマチ疾患の死亡率と死因を解析した研究が発表されました。
この研究では、年齢と性別を調整した全死亡率が一般人口の2倍以上であり、特に感染症、呼吸器疾患、心血管疾患による死亡率が高いことが示されました。
重要なのは、膠原病の治療が単に炎症を抑えるだけでは完結しないという点です。
今回は、この研究の結果を整理し、膠原病・血管炎診療にどのような意味を持つのかを解説します。
1.希少自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)とは?
RAIRDは、Rare Autoimmune Rheumatic Diseasesの略で、日本語では「希少自己免疫性リウマチ疾患」と呼ばれます。
免疫系の異常によって、自分自身の組織や臓器に炎症や障害が生じる疾患群です。
代表的な疾患には、次のようなものがあります。
- 全身性強皮症(Systemic Sclerosis:SSc)
- 皮膚筋炎・多発筋炎などの特発性炎症性筋疾患(IIM)
- 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
- その他の全身性血管炎
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
これらは単一の疾患ではなく、病態や臓器障害、治療法、生命予後が異なる疾患群です。
例えば、全身性強皮症では肺線維症や肺高血圧症、心病変などが問題になります。自己抗体の種類と臓器障害の関係も重要です。詳しくは全身性強皮症の自己抗体と病型で解説しています。
炎症性筋疾患では、筋力低下だけでなく、間質性肺疾患、嚥下障害、心病変などが生命予後に関係することがあります。
血管炎では、腎臓、肺、神経、皮膚などの血管に炎症が生じ、障害される臓器によって重症度が大きく異なります。
したがって、RAIRD全体の死亡率を理解する際には、疾患ごとの違いを考慮する必要があります。
2.今回の研究はどのような研究か?
今回の研究は、英国の全国規模の医療データを用いた後ろ向きコホート研究です。
研究者らは、入院記録にRAIRDの診断が記録されており、2013年時点で生存していた患者さんを対象としました。
これらの患者情報を人口統計データや死亡診断書の情報と連結し、2013~2020年の死亡状況を解析しています。
主な評価項目は、次のとおりです。
- 全死亡率
- 感染症による死亡率
- 呼吸器疾患による死亡率
- 心血管疾患による死亡率
- COVID-19による死亡率
- 疾患別の死亡状況
比較対象には、英国国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の一般人口データが用いられました。
研究対象集団では、女性が69.9%を占めていました。
また、追跡期間中に確認された死亡は53,237例でした。
ここで注意したいのは、53,237例という数字は研究対象者全体の人数ではなく、観察期間中に確認された死亡数であることです。
また、今回の解析は無作為化比較試験ではありません。
疾患活動性や治療内容を一定にそろえて比較した研究ではなく、全国規模の実臨床データから死亡率と死因を調べた疫学研究です。

図説: 英国の全国規模の医療データを用いた後ろ向きコホート研究の概要。入院記録に希少自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)の診断があり、2013年時点で生存していた患者を対象とした。死亡診断書などのデータと連結し、2013~2020年の全死亡率および原因別死亡率を一般人口と比較した。追跡期間中の死亡は53,237例であった。
3.主要結果①:全死亡率は一般人口の2倍以上
今回の研究で最も注目すべき結果は、RAIRD患者さんの全死亡率が一般人口と比べて2倍以上高かったことです。
年齢・性別を標準化した全死亡率比は、次のように報告されました。
2013年
死亡率比:2.6
95%信頼区間:2.6~2.7
2020年
死亡率比:2.3
95%信頼区間:2.2~2.3
全死亡率は2013年から2019年にかけて低下していましたが、COVID-19パンデミックが発生した2020年には上昇しました。
死亡率比2.3とは何を意味するのか?
例えば、ある年齢・性別構成を考慮して一般人口の死亡率を基準とした場合、RAIRD患者集団では死亡率が約2.3倍であったという意味です。
これは、個々の患者さんが一定期間内に死亡する確率が必ず2.3倍になるという意味ではありません。
また、すべてのRAIRDに同じ死亡リスクがあるわけでもありません。
年齢、臓器障害、疾患活動性、感染症の既往、併存疾患などによって、実際の予後は大きく異なります。
今回の結果は、RAIRDという疾患群全体で、一般人口との間に依然として大きな死亡率の差が存在することを示しています。

図説: RAIRD患者における年齢・性別標準化全死亡率比。一般人口と比較した全死亡率比は、2013年に2.6(95%CI 2.6–2.7)、2020年に2.3(2.2–2.3)であった。両時点とも一般人口より高かった。2020年はCOVID-19パンデミックの影響を受けており、2時点間の差を治療改善の因果的効果と解釈することはできない。
4.主要結果②:感染症による死亡率は約4.1倍
今回の研究では、死因別の死亡率にも大きな差が認められました。
一般人口と比較した死亡率比は、次のとおりです。
感染症
死亡率比:4.10
95%信頼区間:3.81~4.39
呼吸器疾患
死亡率比:2.90
95%信頼区間:2.82~2.98
心血管疾患
死亡率比:2.50
95%信頼区間:2.45~2.55
COVID-19
死亡率比:2.74
95%信頼区間:2.59~2.89
特に感染症による死亡率は、一般人口の約4.1倍と高い結果でした。
ただし、これは感染症の発症率が4.1倍であったことを意味しません。
また、感染症に罹患した場合の致死率が4.1倍であることを直接示した結果でもありません。
あくまで、人口当たりの感染症による死亡率を一般人口と比較した数値です。
なぜ感染症による死亡率が高いのか?
膠原病患者さんの感染症リスクには、複数の要因が関係すると考えられます。
第一に、原疾患による免疫系の異常があります。
第二に、ステロイドや免疫抑制薬など、治療に伴う免疫機能への影響があります。
第三に、間質性肺疾患、嚥下機能障害、腎機能障害などの臓器障害が、感染症の重症化に関与する可能性があります。
さらに、高齢、糖尿病、慢性肺疾患、心血管疾患などの併存疾患も重要です。
ただし、今回の研究では、これらの要因が死亡率の上昇にそれぞれどの程度寄与したかを明らかにすることはできません。
感染症による死亡率の上昇を、免疫抑制薬だけで説明することは適切ではありません。

図説: RAIRD患者における原因別死亡率比。年齢・性別を標準化した一般人口との比較では、感染症4.10(95%CI 3.81–4.39)、呼吸器疾患2.90(2.82–2.98)、心血管疾患2.50(2.45–2.55)、COVID-19 2.74(2.59–2.89)であった。これらは原因別死亡率の相対的な比較であり、死因構成割合や個人の死亡確率を示すものではない。
5.日和見感染症による死亡は比較的少なかった
今回の研究で興味深い点は、日和見感染症による死亡が比較的少数であったことです。
日和見感染症とは、免疫機能が低下した状態で発症しやすくなる感染症を指します。
代表例として、次のような感染症があります。
- ニューモシスチス肺炎
- サイトメガロウイルス感染症
- 進行性多巣性白質脳症(PML)
これらは膠原病診療において重要な合併症です。
しかし、今回の全国規模の解析では、日和見感染症による死亡は全体として比較的少数でした。
この結果は、日和見感染症への注意が不要であることを意味しません。
むしろ、重篤な日和見感染症への対策に加え、一般的な感染症の予防や早期診断も重要であることを示唆しています。
特に肺炎などの呼吸器感染症については、原疾患の肺病変との鑑別も重要になります。
一方、死亡診断書に記録される死因には限界があり、日和見感染症が実際より少なく把握されている可能性も考慮する必要があります。
したがって、今回の結果から日和見感染症の予防策を一律に減らすべきだと結論することはできません。
6.どの膠原病で死亡率が高かったのか?
今回の研究では、RAIRDの中でも、特に全死亡率が高い疾患群が報告されました。
主な疾患は、次のとおりです。
① 全身性強皮症(SSc)
全身性強皮症は、皮膚硬化だけでなく、血管障害や内臓の線維化を特徴とする自己免疫疾患です。
生命予後に関係する主な臓器障害として、間質性肺疾患、肺高血圧症、心病変、腎病変などがあります。
疾患活動性の評価に加え、呼吸機能や心機能などを継続的に評価する必要があります。
強皮症に筋炎を合併した場合の心病変については、全身性強皮症と筋炎の合併が心病変・生命予後に及ぼす影響も参考になります。
② 皮膚筋炎・多発筋炎(PM/DM)
炎症性筋疾患では、筋力低下だけでなく、肺病変や嚥下障害などが問題となります。
特に間質性肺疾患は、病型によっては急速に進行することがあります。
また、嚥下障害による誤嚥や、呼吸筋障害なども感染症・呼吸器合併症を考える際に重要です。
③ 顕微鏡的多発血管炎(MPA)
MPAは、主として小血管に炎症を引き起こす全身性血管炎です。
腎炎や肺胞出血、間質性肺疾患などが問題となります。
重症例では強力な免疫抑制療法が必要になることがあり、原疾患の制御と感染症対策の両立が重要です。
④ 分類不能動脈炎
今回の研究では、分類不能動脈炎も全死亡率が高い疾患群として報告されました。
ただし、分類不能という診断群には異なる病態が含まれている可能性があり、特定の血管炎と同じように解釈することはできません。
また、これらの疾患群で死亡率が高かったことは、疾患そのものの生物学的重症度だけを反映しているとは限りません。
患者さんの年齢、臓器障害、治療内容、入院歴などが影響している可能性があります。
7.呼吸器疾患と心血管疾患も重要な死亡原因
今回の研究では、感染症だけでなく、呼吸器疾患と心血管疾患による死亡率も一般人口より高いことが明らかになりました。
呼吸器疾患による死亡率比は2.90、心血管疾患では2.50でした。
呼吸器疾患への対応
膠原病では、間質性肺疾患などの肺病変を合併することがあります。
特に全身性強皮症、炎症性筋疾患、血管炎などでは、原疾患による肺病変に加えて感染症が生じる場合があります。
発熱、咳嗽、呼吸困難、酸素化の悪化などが認められた際には、感染症だけでなく、間質性肺疾患の増悪やその他の肺合併症も考慮する必要があります。
そのため、疾患や病態に応じて、呼吸機能検査、胸部画像検査、酸素化の評価などを組み合わせることが重要です。
膠原病に伴う間質性肺疾患の中には、時間とともに肺線維化が進行する病態があります。進行性肺線維症(PPF)とFIBRONEER-ILD試験では、その病態と治療研究を解説しています。
心血管疾患への対応
膠原病患者さんでは、疾患特有の心病変だけでなく、一般的な動脈硬化性疾患にも注意が必要です。
慢性炎症、ステロイド治療、身体活動量の低下などが心血管リスクに関係する可能性があります。
さらに、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの一般的な危険因子も重要です。
心血管疾患のリスクを評価する際には、原疾患の活動性だけでなく、これらの併存疾患も併せて管理する必要があります。
なお、今回の研究は心血管死亡率の上昇を示したものであり、その原因を慢性炎症や特定の治療薬に帰属させることはできません。
8.この研究から日常診療で何を考えるべきか?
今回の研究は、特定の治療法の効果を検証したものではありません。
しかし、膠原病・血管炎患者さんの長期管理を考えるうえで、いくつかの重要な示唆があります。
① 疾患活動性の制御と感染症対策を両立する
免疫抑制療法は感染症リスクに影響する可能性がありますが、必要な治療を中断すれば原疾患の再燃や臓器障害につながる場合があります。
そのため、感染症リスクだけを理由に治療を過度に弱めることは適切ではありません。
疾患活動性、臓器障害、年齢、併存疾患などを総合的に評価し、必要な治療を継続しながら感染予防を行うことが重要です。
② ワクチン接種歴を定期的に確認する
免疫抑制療法を受けている患者さんでは、年齢、基礎疾患、治療内容に応じて、インフルエンザ、肺炎球菌、COVID-19などのワクチン接種を検討します。
接種時期やワクチンの種類については、使用中の免疫抑制薬や国内の最新の推奨に基づいて判断する必要があります。
③ 感染症の初期症状を見逃さない
免疫抑制療法中には、感染症であっても発熱などの症状が目立たない場合があります。
発熱の有無だけでなく、咳、息切れ、全身状態の変化、尿路症状などにも注意が必要です。
特に呼吸器疾患を合併している患者さんでは、肺炎と原疾患の増悪を慎重に鑑別する必要があります。
免疫抑制療法中の患者さんでは、咳や痰が続く場合に感染症と原疾患の肺病変を鑑別することが重要です。慢性気道感染症の原因と治療も併せてご覧ください。
④ 呼吸器・心血管リスクを継続的に評価する
疾患に応じた間質性肺疾患や心病変の評価に加え、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などの危険因子を確認します。
必要に応じて、呼吸機能検査、心電図、心エコー検査、胸部画像検査などを組み合わせます。
ただし、検査の種類や頻度は疾患ごとに異なり、すべての患者さんに同じ検査を一律に実施するものではありません。
⑤ 口腔内の感染源にも注意する
膠原病患者さんでは、歯周病や歯性感染症など、口腔内の感染源を適切に評価することも全身管理の一部です。
特に免疫抑制療法中には、感染症が生じた際の対応を主治医と歯科医師が連携して検討することがあります。
ただし、今回の研究は口腔感染症と死亡率の関連を直接検証したものではありません。
口腔管理は、一般的な感染予防と口腔衛生維持の観点から重要であり、今回の死亡率データからその死亡予防効果まで推定することはできません。

図説: 希少自己免疫性リウマチ疾患の長期管理における診療上の視点を示した概念図。原疾患の活動性・臓器障害の評価に加え、感染症対策、呼吸器管理、心血管リスク管理を総合的に行うことが重要である。ただし、各介入の死亡率改善効果を今回の研究が直接検証したわけではない。
9.この研究の限界
今回の研究は全国規模の医療データを使用しており、希少疾患の死亡率を検討するうえで大きな意義があります。
一方、解釈にはいくつかの注意点があります。
① 入院データに基づく患者集団である
今回の研究では、入院記録にRAIRD診断がある患者さんを対象としています。
そのため、外来診療のみで管理されている軽症患者さんが十分に含まれていない可能性があります。
結果として、RAIRD患者全体の死亡率を過大に推定している可能性があります。
② 疾患活動性や治療内容による影響を分離できない
今回の研究から、死亡率の上昇が原疾患の活動性、臓器障害、免疫抑制療法、ステロイド使用量などのどの要因に由来するのかを判断することはできません。
また、特定の薬剤が死亡率を上昇させる、あるいは低下させると結論することもできません。
③ 死亡診断書に基づく死因には限界がある
死亡診断書に記載された死因は、実際の病態を完全に反映しているとは限りません。
例えば、間質性肺疾患を持つ患者さんが肺炎を合併して死亡した場合、呼吸器疾患と感染症のどちらが死因として記録されるかによって、原因別死亡率の解釈が変わる可能性があります。
④ 日本の患者さんに直接当てはめることはできない
今回の研究は、2013~2020年の英国における医療データに基づいています。
医療制度、患者背景、治療法、感染症の流行状況などは日本と異なります。
また、2020年にはCOVID-19パンデミックの影響が含まれています。
したがって、この死亡率比を現在の日本の患者さんの個別予後に直接当てはめることはできません。
10.まとめ:膠原病の長期管理では「炎症以外のリスク」にも目を向ける
今回の英国全国規模の研究では、希少自己免疫性リウマチ疾患の患者さんの全死亡率は、年齢・性別を調整しても一般人口の2倍以上でした。
特に感染症、呼吸器疾患、心血管疾患による死亡率の上昇が認められました。
また、全身性強皮症、皮膚筋炎・多発筋炎、顕微鏡的多発血管炎などでは、全死亡率が特に高いことが報告されました。
一方、この研究から、特定の治療薬や感染予防策が死亡率に及ぼす因果的な影響を判断することはできません。
今回の研究が示す重要なメッセージは、膠原病患者さんの長期予後を考える際に、疾患活動性の制御だけでなく、感染症、呼吸器疾患、心血管疾患の評価と管理を継続する必要があるということです。
膠原病診療では、炎症を抑える治療と、患者さんの全身状態を長期的に守る医療の両方が重要です。
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参考文献
Rutter M, et al. All-cause and cause-specific mortality in people with rare autoimmune rheumatic diseases in England using whole population data. Rheumatology. Published online November 3, 2026.

【本記事の執筆・医学監修】
■ 福田 匡志(ふくた まさし)
成田赤十字病院 リウマチ膠原病内科部長 / 柏五味歯科内科リウマチクリニック 医師
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医
👉 福田匡志医師の詳しい経歴・専門資格はこちら
【クリニック共同監修体制】
■ 春原 優子(はるはら ゆうこ)(総合内科専門医・消化器病専門医)
■ 福田 涼子(ふくた りょうこ)(日本歯内療法学会専門医)
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