- 2026年5月16日
脚ブロックがあると心筋梗塞は見えにくくなる?
右脚ブロック・左脚ブロックを伴う心筋梗塞の見極め方【柏・我孫子の総合内科専門医解説】
「心電図で脚ブロックがありますと言われた」
「胸が痛いのに“心電図が読みにくい”と言われた」
「脚ブロックがあると心筋梗塞は分からないの?」
このような疑問を持たれる方は少なくありません。
急性心筋梗塞は、早期発見・早期治療が命を守る病気です。
しかし、**脚ブロック(きゃくぶろっく)**があると、心電図の波形が複雑になり、通常より診断が難しくなることがあります。
特に重要なのは、
- 「本当は危険なのに見逃してしまう」
- 「逆に危険ではないのに過剰に心配してしまう」
この両方を避けることです。
今回は、患者さんにもわかりやすい形で、
- 脚ブロックとは何か
- なぜ心筋梗塞が見えにくくなるのか
- 左脚ブロックと右脚ブロックの違い
- 医師はどこを見て判断しているのか
を解説します。
■そもそも「脚ブロック」とは?
心臓は電気信号によって動いています。
その電気の通り道が途中で遅くなったり、途切れたりする状態を「脚ブロック」と呼びます。

脚ブロックがあると、心電図の形そのものが変化します。
すると、
- 心筋梗塞による変化
- 脚ブロックによる変化
が混ざってしまい、診断が難しくなるのです。
■心筋梗塞では通常「ST変化」を見る
急性心筋梗塞では、心電図の「ST部分」が重要になります。
特に有名なのが、
- ST上昇
- ST低下
です。

しかし脚ブロックがあると、梗塞がなくてもSTが動いて見えることがあります。
ここが最大の難所です。
■左脚ブロック(LBBB)は“最大の難関”
脚ブロックの中でも、特に診断が難しいのが**左脚ブロック(LBBB)**です。
左脚ブロックでは、もともと心電図が大きく変形します。
特にV1〜V3誘導では、
- ST上昇して見える
- T波が反転して見える
ことが普通に起こります。
つまり、
「本当に心筋梗塞なのか」
「左脚ブロックのせいなのか」
の区別が難しくなるのです。
■医師は「不自然さ」を探している
左脚ブロックでは、単純に「STが上がっている」だけでは判断できません。
そこで世界的に有名なのがSgarbossa(スガルボッサ)基準です。
これは簡単に言うと、
「左脚ブロックとしては“不自然なST変化”がないか」
を見る方法です。
■重要なのは「方向」
通常、左脚ブロックでは、
- QRSが下向きならSTは上向き
- QRSが上向きならSTは下向き
になりやすいという特徴があります。

この「通常とは違う動き」があると、
- 心筋梗塞
- 重症虚血
を疑います。
■右脚ブロック(RBBB)は比較的わかりやすい
右脚ブロック(RBBB)は、左脚ブロックほど難解ではありません。
ただし、「本来あるべき波形」が崩れるため注意が必要です。
■右脚ブロックではV1〜V3が重要
右脚ブロックでは通常、
- V1〜V3でST低下気味
になることがあります。
そのため、
- ST上昇している
- 本来下がるはずが下がっていない
場合は、前壁梗塞を疑います。

■下壁梗塞は比較的見つけやすい
右脚ブロックがあっても、
- Ⅱ
- Ⅲ
- aVF
で明らかなST上昇があれば、
下壁梗塞を疑います。
また、aVL誘導で「鏡に映したようなST低下(鏡面像)」があると、診断の助けになります。
■aVR誘導には注意が必要
ここは非常に重要です。
右脚ブロックでは、aVR誘導でST上昇して見えることが普通にあります。
つまり、
「aVRが上がっている=即重症」
ではありません。

心電図は「1か所だけ」で判断すると危険です。
■医師は“心電図だけ”で診ているわけではない
実際の診療では、
- 胸痛の内容
- 冷や汗
- 息苦しさ
- 血圧
- 採血(心筋逸脱酵素)
- 心エコー
を総合して判断しています。
特に心エコーでは、
「心臓の壁が動いていない部分」
を確認できるため、非常に重要です。
■一回の心電図でわからないこともある
急性心筋梗塞は、時間とともに変化します。
最初ははっきりしなくても、
- 30分後
- 1時間後
にはST変化が明瞭になることがあります。
そのため、
「最初の心電図が正常だったから絶対安心」
とは言い切れません。
■胸痛を軽視しないことが最も重要です
特に注意が必要なのは、
- 強い胸痛
- 締め付け感
- 冷や汗
- 吐き気
- 息苦しさ
を伴う場合です。
脚ブロックがある患者さんでは、通常より診断が難しくなるため、
「様子を見よう」
が危険になることがあります。
■まとめ
脚ブロックを伴う心電図では、心筋梗塞の診断が難しくなることがあります。
特に、
- 左脚ブロック → 非常に難しい
- 右脚ブロック → 比較的わかるが注意点あり
という特徴があります。
重要なのは、
- 波形全体を見ること
- 過去心電図と比較すること
- 症状を重視すること
- 必要なら繰り返し評価すること
です。
「心電図異常がある」
「胸痛が続く」
「脚ブロックと言われたことがある」
このような方は、早めの医療機関受診をお勧めします。
柏・我孫子エリアで、胸痛や心電図異常に不安がある方は、循環器専門医や総合内科専門医へご相談ください。
今回の内容を医学的に詳しく知りたい方は下記へ
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