- 2026年5月23日
失神発作を招く危険な不整脈「トルサデポアン(TdP)」とは?
QT延長を見逃さないために:突然死につながる心電図異常を総合内科専門医が解説【柏・我孫子】
「急に意識を失った」
「気づいたら倒れていた」
「動悸のあとに失神した」
このような症状の背景には、命に関わる危険な不整脈が隠れていることがあります。
その代表が、
Torsades de pointes(トルサデポアン:TdP)
と呼ばれる特殊な心室性不整脈です。
これは、心電図で「QT延長」と呼ばれる異常が進行した際に起こることがあり、放置すると突然死につながることもあります。
今回は、
- QT延長とは何か
- なぜ危険なのか
- どんな薬が原因になるのか
- 失神との関係
- 予防のために大切なこと
について、患者さん向けに極力わかりやすく解説します。
■QT延長とは?
心電図には、
- P波
- QRS波
- T波
という波があります。
このうち、
Q波からT波の終わりまで(QT時間)
は、
「心臓が電気的に回復するまでの時間」
を意味しています。
この時間が長くなりすぎた状態を「QT延長」と呼びます。

■なぜQT延長が危険なの?
QT延長が進行すると、心臓の電気活動が不安定になり、突然、危険な不整脈が発生することがあります。
その代表が、
「トルサデポアン(TdP)」
です。正式には、「Torsades de pointes(多形性心室頻拍)」と呼ばれます。
フランス語で「ねじれる先端」という意味があり、心電図波形がクルクルとねじれるように見えるのが特徴です。

■TdPが起こるとどうなる?
TdPが起こると、
- 強い動悸
- めまい
- 冷や汗
- 失神
- 心停止
を引き起こすことがあります。
特に怖いのは、
「突然失神する」
ことです。
場合によっては、転倒による外傷や骨折、さらには突然死につながることもあります。
■QT延長はどれくらいで危険?
心電図では「QTc(補正QT時間)」という値を確認します。
一般的には、
- 450ms超 → QT延長の疑い
- 475ms超 → 要注意
- 500ms超 → 危険域
- 525ms超 → TdP高リスク
と考えられています。
特に500msを超える場合は、
「致死的不整脈が起きてもおかしくない」
というレベルで慎重な評価が必要です。

■QT延長は「複数要因」で起こることが多い
実はQT延長は、単独の原因だけで起こるとは限りません。
多くの場合、
「マルチヒット」
で発症します。
つまり、複数の危険因子が重なって起こるのです。
① 薬剤の影響
最も多いのが薬剤性QT延長です。
原因となる薬は非常に多く、
代表例としては、
- 抗不整脈薬
- 抗精神病薬
- 抗うつ薬
- 一部の抗菌薬
- 抗アレルギー薬
- 胃薬(H2ブロッカーなど)
などがあります。
複数の薬が重なることで、急激に危険度が上がることもあります。

② 電解質異常
特に重要なのが、
- 低カリウム
- 低マグネシウム
です。
脱水や下痢、食事摂取不良、利尿薬などが原因になることがあります。
③ 心臓の病気
- 心不全
- 心筋梗塞後
- 徐脈
- 心筋症
などでもQT延長リスクが上がります。
④ 生まれつきの体質(先天性QT延長症候群)
遺伝的にQT延長を起こしやすい方もいます。
普段は問題なくても、薬や脱水が加わることで突然発症する場合があります。

■実際にあった症例
今回の症例では、78歳男性が失神発作を起こし、心電図でTdPが確認されました。
原因を調べると、
抗不整脈薬
ジソピラミド
による薬剤性QT延長が背景にありました。
薬を中止したところ、
1週間後にはQT延長が改善し、
危険な不整脈も消失しました。
※実際の症例
■「失神」を軽く考えてはいけません
特に注意が必要なのは、
- 突然倒れる
- 前触れが少ない
- 動悸を伴う
- 高齢者
- 薬の種類が多い
というケースです。
単なる立ちくらみと思っていても、実は危険な不整脈が隠れていることがあります。

■QT延長を指摘されたらどうする?
健診や病院で、
- 「QTが長いですね」
- 「心電図異常があります」
と言われた場合、放置せずに相談することが重要です。
特に、
- 薬をたくさん飲んでいる
- 動悸がある
- 失神歴がある
- 家族に突然死がいる
場合は注意が必要です。
■治療は「原因を見つけること」が最重要
QT延長の治療では、まず原因を特定します。
例えば、
- 原因薬剤の中止
- 電解質補正
- 脱水改善
- 徐脈治療
- ペースメーカー
- ICD(植込み型除細動器)
などが必要になることがあります。

■柏・我孫子でQT延長・失神・動悸でお悩みの方へ
QT延長は、単なる「心電図の数字の異常」ではありません。
背景には、
- 薬剤
- 心疾患
- 電解質異常
- 遺伝素因
などが複雑に絡んでいることがあります。
特に、
「失神」
「原因不明の転倒」
「動悸」
「薬が多い」
という方では、慎重な評価が重要です。
当院では、
- 総合内科専門医
- リウマチ専門医
- 肝臓専門医
- 消化器内科専門医
として、薬剤全体を俯瞰したDI的視点も重視しながら、
- 心電図評価
- 電解質評価
- 薬剤チェック
- 背景疾患評価
を総合的に行っております。
柏・我孫子エリアで、
- QT延長を指摘された
- 失神した
- 動悸がある
- 薬の飲み合わせが不安
という方は、お気軽にご相談ください。
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