• 2026年7月21日

顔面神経麻痺(ベル麻痺)の思わぬ後遺症。顔面病的共同運動:Facial Synkinesisについて柏我孫子の総合内科専門医が解説

顔の麻痺が治った後に口が勝手に動く?再生する神経の「配線ミス」が引き起こす不随意運動の証明

「顔の半分が動かなくなる病気(顔面神経麻痺)になって治療を受けた後、しばらくして、眉を上げようとすると勝手に口角まで引きつって動くようになってしまった」——このような奇妙な症状にお悩みではありませんか? 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、全身性エリテマトーデス(SLE)を持つ30歳の女性に発症した「顔面病的共同運動(Facial Synkinesis)」の教訓的な症例が動画とともに報告されました。今回はこの最新報告に基づき、一度傷ついた神経が回復する過程で生じる「体の仕組み(エラー)」と、その後遺症について専門医が解説します。

1. 治りかけに現れる「勝手に動く顔」

この30歳の女性は、12週間前に右の顔面が動かなくなる「特発性ベル麻痺」を発症し、ステロイドによる治療を受けました。治療の甲斐あって、6週間前には麻痺の症状は改善してきましたが、それに代わって「特定の表情を作ろうとすると、意図しない右顔面の筋肉まで一緒に動いてしまう」という新たな不随意運動が現れ、リウマチ科を受診しました。 診察室で彼女に「眉を上げてください」と指示すると、右側の口角までがピクッと勝手に上に引きつってしまう様子が確認されました。これが「顔面病的共同運動」という現象です。

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm2506222?utm_source=print&utm_medium=qr

2. 神経の「配線ミス」が引き起こす体の仕組み

なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。ベル麻痺などで顔面神経がダメージを受けると、神経の繊維が一度断裂したり傷ついたりします。その後、神経は自ら修復しようと再生を始めますが、この時に「本来繋がるべき筋肉とは違う、別の筋肉にも枝を伸ばして繋がってしまう(迷走再生、過誤支配)」というエラーが起きることがあります。 つまり、脳が「眉を上げろ」という命令(電気信号)を送ったとき、その信号が誤って繋がった「口角を上げる筋肉」にも同時に伝わってしまい、結果として複数の筋肉が一緒に動いてしまうのです。人間の体が持つ驚異的な「再生能力」が、皮肉にも配線ミスを引き起こしてしまうという複雑な体の仕組みです。

3. 治療の選択肢と「治りにくさ」の現実

この顔面病的共同運動に対して、医師は過剰に動いてしまう筋肉をピンポイントで緩める「ボツリヌス毒素(ボトックス)注射」を提案しました。しかし患者さんはこれを希望せず、顔面筋の理学療法(リハビリテーション)を選択しました。残念ながら、3ヶ月後の経過観察では、この不随意運動に臨床的に意味のある改善はほぼ見られませんでした。 一度誤って繋がってしまった神経の配線をリハビリだけで元に戻すことは非常に難しく、後遺症として長く残ってしまうことが多いのが現状です。

4. 全身の病気が潜んでいないかを見極める

今回の患者さんは「全身性エリテマトーデス(SLE)」という免疫の病気(膠原病)を患っていました。顔面神経麻痺は、疲労やウイルス感染による一般的な「ベル麻痺」が多いですが、稀にSLEなどの自己免疫疾患や、他の重大なウイルス感染(帯状疱疹ウイルスなど)が引き金となっていることもあります。 「顔が動かしにくい」「治ったあとに顔が引きつる」といった症状が長引く場合は、単なる顔のトラブルと考えず、全身の神経や免疫の繋がりを的確に診ることができる総合内科やリウマチ専門医にご相談ください。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、リウマチ専門医・総合内科専門医の視点から、神経のダメージや免疫の異常がどのような**「体の仕組み」で起きているのかを丁寧に紐解き、全身の繋がりから正確な診断とサポートを行います。当院の内科(リウマチ・膠原病診療)・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方の長引く後遺症や、原因不明の神経症状のご相談にもしっかり対応いたします。また、お顔の筋肉や顎関節に異常を感じる場合、当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで**診療を行っており、医科と連携してお口周りの総合的な評価を行うことが可能です。柏・我孫子エリアで原因不明の症状にお悩みの方は、手遅れになる前にかかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。

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Ranjan Gupta, Rudra Prosad Goswami. “Facial Synkinesis.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: e21.

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