• 2026年10月25日

【柏・我孫子】慢性気道感染とは?咳・痰が続く原因と治療【2026年版】

咳や痰が長く続くと、「感染が治っていないのでは」「抗菌薬を飲み続ける必要があるのでは」と心配になることがあります。

しかし、慢性的な気道の病気がある方では、痰から細菌が検出されても、その結果だけで抗菌薬治療の必要性は決まりません。普段と比べて症状が悪化しているか、どのような背景疾患があるか、今後の増悪リスクが高いかを合わせて判断します。

この記事では、慢性気道感染の基本から、気管支拡張症・COPDにおける急性増悪、長期管理、新しい治療までを解説します。2026年10月時点で確認できる国内外のガイドライン・学会提言・承認情報に基づいています。

慢性気道感染とは

慢性気道感染は、気道の構造や防御機能の異常を背景に、細菌が気道に持続的に存在し、炎症や感染による悪化を繰り返す病態を指して使われる言葉です。

一つの病名ではなく、気管支拡張症、COPD、びまん性汎細気管支炎などの背景疾患を確認することが重要です。

背景となる主な病気

疾患主な特徴
気管支拡張症気管支が不可逆的に拡張し、痰がたまりやすくなる
COPD気流制限や気道の防御機能低下があり、感染などを契機に増悪する
びまん性汎細気管支炎(DPB)細い気道を中心とする慢性炎症があり、咳・膿性痰が続く
肺結核後の構造変化気管支や肺の変形を背景に、感染を繰り返すことがある

気管支拡張症には、関節リウマチやシェーグレン病、免疫不全、非結核性抗酸菌症などが関連する場合もあります。背景疾患によって治療が変わるため、「慢性の感染」とだけ捉えず、原因を調べることが大切です。

痰の排出障害・感染・炎症が互いに影響します

気道には、粘液と線毛によって異物を外へ運び出す機能があります。

この働きが低下すると、痰や細菌が停滞しやすくなります。さらに炎症によって気道が傷つくと、痰の排出が一層難しくなります。気管支拡張症では、こうした要素が互いに影響して病状を持続させると考えられています。

気管支拡張症における気道クリアランス低下、痰・細菌の停滞、気道炎症、構造障害の相互関係を示す模式図。

図1.気管支拡張症における病態の相互関係 気管支拡張症では、気道クリアランスの低下、痰・細菌の停滞、気道炎症、気道構造の障害が相互に影響し、病態の持続・進行に関与する。矢印は各要素の相互関係を概念的に示しており、一定の順序で進行することや、すべての患者で各要素が同程度に関与することを示すものではない。

安定期と急性増悪はどう違うのでしょうか

安定期にも咳・痰や細菌の検出があります

気管支拡張症などでは、普段から咳・痰があり、同じ細菌が繰り返し検出されることがあります。

培養陽性だけを理由に、通常の抗菌薬を短期間ずつ繰り返すことは適切ではありません。

一方で、安定期だから治療対象にならないわけでもありません。緑膿菌の新規検出時の除菌治療や、増悪を繰り返す患者さんへの予防治療を検討する場合があります。

急性増悪は「普段より悪くなった状態」です

気管支拡張症の増悪では、次のような症状が普段の変動を超えて悪化し、治療の変更が必要になります。

  • 咳が増える
  • 痰の量・粘り・膿性が増す
  • 息切れや運動時の苦しさが強くなる
  • 倦怠感が増える
  • 血痰が出現・増加する

発熱を伴う場合もありますが、発熱がなくても増悪は否定できません。また、ウイルス感染も関与するため、増悪をすべて細菌感染と同一視することはできません。

黄色・緑色の痰は診療上の参考になりますが、色だけで治療は決まりません。普段から膿性痰がある方では、量や息切れ、全身状態の変化を合わせて評価します。

安定期と急性増悪を、咳・痰・息切れ・全身状態・喀痰培養で比較し、普段からの変化を重視することを示した図。

図2.慢性気道病変の安定期と急性増悪 慢性気道病変における安定期と、急性増悪を疑う症状の変化を比較。増悪の評価では、普段と比べた咳、痰の量・性状、息切れ、全身状態の変化を重視する。安定期にも喀痰培養で細菌が検出されることがあり、培養陽性のみで急性増悪とは診断しない。また、発熱がなくても増悪は否定できず、痰の色だけで抗菌薬の必要性は判断できない。安定期の予防治療は、増悪歴や日常症状などから別途検討する。

検査では何を確認するか

喀痰検査

喀痰のグラム染色・培養・薬剤感受性検査により、細菌の種類や抗菌薬の効きやすさを調べます。

気管支拡張症の増悪では、可能であれば抗菌薬開始前に検体を採取します。過去の培養結果も薬剤選択に役立ち、初期治療で改善しない場合は再検査を検討します。ただし、重症例では検査のために治療を遅らせません。

胸部画像・呼吸機能・酸素化

胸部X線やCTで、肺炎、気管支拡張、その他の病変を確認します。必要に応じて呼吸機能検査、血液検査、酸素飽和度などを評価します。

気管支拡張症は、CTでの気管支拡張に加え、慢性の咳・痰や増悪歴などを合わせて診断します。

背景疾患と抗酸菌の評価

原因や合併症として、非結核性抗酸菌症、免疫異常、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などが隠れていることがあります。

増悪を繰り返す場合は、単に抗菌薬を追加する前に、背景疾患や排痰管理を見直すことが重要です。

急性増悪の抗菌薬治療は、疾患ごとに考えます

気管支拡張症とCOPDを一括りにしません

「慢性気道感染だから同じ抗菌薬を同じ日数使う」という考え方は適切ではありません。

病態抗菌薬治療の考え方
気管支拡張症の急性増悪過去の培養、耐性状況、重症度などから選択。一般に14日間が標準的な目安で、軽症・速やかな改善では短縮を検討
COPDの急性増悪抗菌薬の適応を判断し、必要な場合は通常5日程度の短期治療を基本に調整
肺炎を合併した場合肺炎として、重症度・原因菌・治療反応に応じて判断

COPDと気管支拡張症を合併している場合は、COPD増悪の短期治療を機械的に当てはめず、気管支拡張症の病状、緑膿菌などの検出歴、重症度、治療反応を踏まえて薬剤と治療期間を調整します。

気管支拡張症では、特に重症増悪や緑膿菌感染で14日間が重視されます。ただし、この期間を支えるエビデンスには限界があり、患者さんごとの調整が必要です。

GOLD 2026では、COPD増悪のうち膿性痰、過去の細菌培養陽性、人工呼吸管理の必要性などを踏まえて抗菌薬を使用し、必要な場合の治療期間は5日を目安としています。COPDの増悪すべてに抗菌薬が必要という意味ではありません。

キノロン系薬を一律の第一選択にはしません

薬剤は、過去・今回の培養結果、地域の耐性状況、最近の抗菌薬使用、腎機能、アレルギー、併用薬などから選びます。

キノロン系薬が必要な場合もありますが、すべての患者さんへの一律の第一選択とはしません。例えばNICEでは、気管支拡張症増悪に対するレボフロキサシンを、他の選択肢が不適切な場合に専門家の助言のもとで使用する位置づけとしています。

緑膿菌は「新規検出」と「慢性感染」で対応が異なります

新たに検出された場合

ERS 2025は、気管支拡張症で緑膿菌が新たに検出された患者さんに、除菌治療を提案しています。

ただし、これは条件付き推奨で、エビデンスの確実性は非常に低いと評価されています。検出状況、過去の経過、治療負担などを踏まえ、専門医と検討します。

慢性感染があり、増悪リスクが高い場合

ERS 2025では、標準的な管理を行っても増悪リスクが高い患者さんに長期マクロライド療法を、慢性緑膿菌感染を伴う高リスク患者さんに長期吸入抗菌薬を強く推奨しています。

吸入抗菌薬には気管支攣縮や耐性化などの問題もあります。海外の推奨と、日本での各製剤の承認・保険適用は分けて確認する必要があります。

安定期の管理では、排痰療法を重視します

気管支拡張症では、気道クリアランス療法によって痰の排出を助けます。呼吸法や器具などを、病状や実施しやすさに合わせて選びます。

ERS 2025では、多くの患者さんに対する気道クリアランス療法と、運動能力が低下した患者さんへの呼吸リハビリテーションを強く推奨しています。

薬を追加する際も、排痰方法、背景疾患の治療、吸入手技などを見直すことが基本です。

マクロライド少量長期療法:増悪リスクから適応を考えます

増悪回数だけで機械的に決めません

ERSの2026年臨床解説では、高リスクの目安として次が示されています。

  • 年2回以上の増悪
  • 年1回の増悪に、強い日常症状を伴う
  • 年1回以上、入院を要する重症増悪

これは、該当すれば自動的に処方する基準ではありません。通常の管理を最適化したうえで、禁忌や副作用リスクと合わせて判断します。

日本ではNTMと適正使用への配慮が重要です

国内学会の2025年提言は、他の管理で十分に改善しない患者さんへの慎重な適応判断、定期的な効果判定を求めています。

特に、NTMの精査を十分に行わず、エリスロマイシンの代わりにクラリスロマイシンやアジスロマイシンへ安易に変更することに注意を促しています。同提言では、気管支拡張症に対する使用が適応外である点にも言及しています。

NTM感染を認める場合には、マクロライド単剤による耐性化を避ける必要があります。長期療法の開始前に評価し、胃腸症状、肝機能、心電図、聴覚、薬物相互作用なども確認します。

気管支拡張症の急性増悪治療、緑膿菌新規検出時の除菌、長期増悪予防について、目的と適応の違いを示した図。

図3.気管支拡張症における治療目的の区別 気管支拡張症の抗菌薬治療を、急性増悪の治療、緑膿菌の新規検出時の除菌、長期の増悪予防に分けて示した。ERS 2025では、緑膿菌の新規検出時の除菌は条件付き推奨とされ、エビデンスの確実性は非常に低い。長期予防治療は、背景疾患の治療や気道クリアランス療法などを行っても増悪リスクが高い患者で検討する。各治療の適応は異なり、海外の推奨と国内の承認・保険適用は区別する。マクロライド長期療法の開始前には、非結核性抗酸菌(NTM)感染の評価が必要である。

DPBの治療期間を他疾患に当てはめません

DPBでは、マクロライド長期療法が重要な治療です。

ただし、DPBに対する従来の投与期間を、気管支拡張症やCOPDへ一律に適用することはできません。対象疾患と治療目的を明確にし、効果と有害事象を定期的に評価します。

新しい治療:DPP1阻害薬ブレンソカチブ

2026年に国内で承認・発売されました

ブレンソカチブ水和物〔販売名:ブリヌスプリ錠25mg〕は、2026年8月24日に国内承認、10月19日に発売された非嚢胞性線維症性気管支拡張症の治療薬です。

DPP1という酵素を阻害し、好中球セリンプロテアーゼの活性化を抑える薬です。急性の感染を治療する抗菌薬とは作用・目的が異なります。

国内用量は成人および12歳以上で25mgを1日1回です。増悪歴、緑膿菌の定着、日常症状などから、抗菌薬を必要とする増悪を繰り返すリスクのある患者さんを対象に判断します。

ASPEN試験で示された効果

52週間の二重盲検無作為化試験では、1,721人がブレンソカチブ10mg、25mg、プラセボに割り付けられました。

国内承認用量である25mg群の年間増悪率は1.04回/人年、プラセボ群は1.29回/人年でした。率比は0.81〔95%信頼区間0.69~0.94〕で、相対的に約19%の減少です。

これは全員の増悪がなくなることや、拡張した気管支が元に戻ることを示す結果ではありません。また、主な比較期間は52週間で、長期的な効果・安全性の継続評価が必要です。試験は製造企業の資金提供で実施されています。

安全性と口腔管理

試験では過角化が多く認められました。国内の製品情報では、歯肉障害・歯周病への注意、口腔内を清潔に保つこと、異常時の歯科受診が記載されています。また、投与中の生ワクチン接種は避けるとされています。

なお、ERS 2025の作成時にはDPP1阻害薬の正式な推奨は示されていません。新薬の承認情報と、ガイドラインでの推奨は区別して理解する必要があります。

ブレンソカチブによるDPP1阻害の模式図と、ASPEN試験の年間増悪率を比較した図。25mg群1.04、プラセボ群1.29回/人年、率比0.81。

図4.ブレンソカチブの作用機序とASPEN試験の結果
A:ブレンソカチブはジペプチジルペプチダーゼ1(DPP1)を阻害し、好中球セリンプロテアーゼの活性化を抑制する。作用機序は概念的な模式図であり、細菌の除去や気管支構造の修復を示すものではない。
B:52週間の二重盲検無作為化ASPEN試験における年間呼吸器増悪率は、ブレンソカチブ25mg群で1.04回/人年、プラセボ群で1.29回/人年であった。率比は0.81〔95%信頼区間0.69–0.94〕で、プラセボに対する相対的な減少は約19%であった。この値は増悪回数の発生率に関する比較であり、増悪した患者の割合を示すものではない。Chalmersらの報告(N Engl J Med. 2025;392:1569–1581)に基づき独自に作成。

受診を急ぐ症状

以下の場合は、通常の予約を待たず救急受診を検討してください。

  • 安静時にも強い息苦しさがある
  • 会話が難しい、意識がぼんやりする
  • 多量の喀血や、続く出血がある
  • 呼吸状態が急速に悪化している

そこまで強い症状でなくても、痰・息切れの明らかな悪化、新しい血痰、発熱に伴う全身状態の悪化は、早めに相談してください。重症の徴候があれば、症状が何日続いたかにかかわらず対応します。

診察時には、普段の痰や息切れとの違い、過去の培養結果、最近使用した抗菌薬を伝えることが役立ちます。

強い呼吸困難・意識変容・多量の喀血は救急受診、痰や息切れの悪化・新たな血痰は早期相談とする受診目安の図。

図5.慢性の咳・痰がある方の受診目安 慢性の咳・痰がある方について、救急受診、早めの医療機関への相談、安定期の継続管理の目安を示した。安静時の強い呼吸困難、会話困難、意識状態の変化、多量または持続する喀血、呼吸状態の急速な悪化では、予約を待たず緊急評価を受ける。痰・息切れの明らかな悪化、新たな血痰、発熱に伴う全身状態の悪化では早めに相談する。重症の徴候がある場合は、症状の持続時間にかかわらず対応する。


■ご受診を希望の患者さんへ

長引く咳・痰や、普段と違う息切れがある場合は、内科へご相談ください。柏五味歯科内科リウマチクリニックでは経過を確認し、必要に応じて呼吸器専門医と連携します。

ブレンソカチブ(選択的可逆的DPP1(ジペプチジルペプチダーゼ1)阻害薬)などの専門治療を受けている方で、歯肉の腫れ・出血などがある場合は、処方医に伝え、歯科にもご相談ください。

内科のWEB予約

※強い呼吸困難や多量の喀血は、予約を待たず救急受診してください。

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■参考文献

Chalmers JD, et al. European Respiratory Society clinical practice guideline for the management of adult bronchiectasis. Eur Respir J. 2025;66:2501126.
DOI:10.1183/13993003.01126-2025

Chalmers JD, et al. The European Respiratory Society guideline for management of adult bronchiectasis: clinical summary. Breathe. 2026;22:260001.
DOI:10.1183/20734735.0001-2026

GOLD. Global Strategy for Prevention, Diagnosis and Management of COPD: 2026 Report/Pocket Guide.
公式公開ページ

日本呼吸器学会ほか.気管支拡張症に対するマクロライド系抗菌薬の適正使用のお願い.2025年.
提言PDF

Chalmers JD, et al. Phase 3 Trial of the DPP-1 Inhibitor Brensocatib in Bronchiectasis. N Engl J Med. 2025;392:1569–1581.
DOI:10.1056/NEJMoa2411664

PMDA.ブリヌスプリ錠25mg審査報告書/製品情報.
PMDA審査報告書
2026年10月改訂添付文書に基づく製品情報

NICE. Bronchiectasis (non-cystic fibrosis), acute exacerbation: antimicrobial prescribing. NG117.
https://www.nice.org.uk/guidance/ng117/chapter/recommendations

【本記事の執筆・医学監修】
■ 福田 匡志(ふくた まさし)
成田赤十字病院 リウマチ膠原病内科部長 / 柏五味歯科内科リウマチクリニック 医師
日本内科学会認定 総合内科専門医、日本リウマチ学会認定 リウマチ専門医
👉 福田匡志医師の詳しい経歴・専門資格はこちら

【クリニック共同監修体制】
■ 春原 優子(はるはら ゆうこ)(総合内科専門医・消化器病専門医)
■ 福田 涼子(ふくた りょうこ)(日本歯内療法学会専門医)

全国の患者様やご家族に向けて、関節リウマチ・膠原病・総合内科・消化器・歯科の各専門医が連携し、最新の医学的エビデンスに基づいた正確な医療情報を分かりやすく解説・発信しています。

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