- 2026年7月18日
難治性てんかん:ドラベ症候群に対するZorevunersenの第1/2a相試験。失われたブレーキを復元する新薬と脳の体の仕組みを柏我孫子の総合内科専門医が解説
薬が効かない重い発作と発達の遅れ。遺伝子のエラーを直接修正し、コミュニケーション能力まで改善する次世代の希望
「ドラベ(Dravet)症候群」は、乳幼児期に発症し、既存の抗てんかん薬がほとんど効かない重篤なけいれん発作を繰り返す指定難病です。発作だけでなく、成長に伴って言葉の遅れや知的障害、行動異常が現れ、てんかんによる突然死(SUDEP)のリスクも高いという過酷な病気です。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、このドラベ症候群の「根本的な原因」に直接アプローチする全く新しい遺伝子標的薬「zorevunersen(ゾレブネルセン)」の臨床試験(第1/2a相試験)の画期的な結果が発表されました。今回はこの最新データに基づき、脳の興奮が止まらなくなる「体の仕組み」と、病気の進行そのものを変える未来の治療について柏我孫子の総合内科専門医が解説します。
1. 脳の「ブレーキ」が足りなくなる体の仕組み
ドラベ症候群の最も大きな原因は、生まれつき「SCN1A」という遺伝子にエラー(変異)があることです。この遺伝子は、脳の神経細胞を落ち着かせるための「ブレーキ(NaV1.1ナトリウムチャネル)」を作る設計図の役割を果たしています。 しかし、遺伝子にエラーがあると、このブレーキ役のタンパク質が十分な量作られなくなります(ハプロ不全)。その結果、脳内の「興奮」と「抑制(ブレーキ)」のバランスが崩れて全体が過興奮状態に陥り、激しいけいれん発作や発達の遅れを引き起こすという体の仕組みが働いてしまうのです。これまでの薬は「発作を抑え込む」ことしかできず、この根本的なブレーキ不足を解消することはできませんでした。
2. 遺伝子の「無駄な部分」をスキップさせる新薬
今回開発された「zorevunersen」は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)と呼ばれる最先端の核酸医薬品です。 人間の体は、遺伝子(DNA)から設計図(mRNA)をコピーしてタンパク質を作りますが、ドラベ症候群では設計図の途中に「無駄な部分(ポイズンエクソン)」が混ざってしまい、タンパク質がうまく作られません。zorevunersenは、この設計図にピタッとくっついて「無駄な部分を読み飛ばす(スキップする)」ように働きかけます。これにより、正常な設計図が大量に作られ、不足していた「脳のブレーキ(NaV1.1)」の量が元通りに増えるという、極めて精密な体の仕組みを利用しています。
3. 発作の激減と「コミュニケーション能力」の改善
今回の試験では、既存の薬で発作が抑えられない2歳から18歳の患者様に対し、腰椎穿刺(背中からの注射)でzorevunersenが髄液内に投与されました。 最も高い用量(70mg)を投与され、その後の延長試験に参加した患者様では、けいれん発作の頻度がベースラインから「58.8%〜90.9%も減少する」という劇的な効果が確認されました。さらに驚くべきことに、これまでの薬では改善が難しかった「自分の意思を伝える力(表出言語)」や「言葉を理解する力(受容言語)」といった適応行動(Vineland-3スコア)にも明確な改善が見られました。発作だけでなく、脳の機能そのものが回復しつつあることを示す画期的なデータです。
4. 安全性と未来への展望
新しいお薬であるため安全性も慎重に評価されました。最も多く見られた副作用は、腰椎穿刺に伴う症状や、髄液中のタンパク質の一過性の上昇(45%)でしたが、重篤なものは少なく、安全に管理可能であることが示されています。 ドラベ症候群の治療は、単なる「対症療法」から、病気の原因そのものを治療する「疾患修飾療法」の時代へと大きな一歩を踏み出しました。現在、さらに大規模な第3相試験が進行中であり、一日も早い実用化が待ち望まれています。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、遺伝子や免疫の異常がどのようにして全身の病気を引き起こすのかという**「体の仕組み」を丁寧に紐解きながら**、皆様のトータルな健康管理をサポートいたします。当院では小児の難治性てんかんの直接的な治療は行っておりませんが、持病を持つ患者様やそのご家族の感染症予防(肺炎球菌や帯状疱疹などのワクチン接種)、およびてんかん発作による外傷リスクや飲み込みの低下(誤嚥)を防ぐための徹底した医科歯科連携を通じ、安心できる生活環境づくりをご提供しています。当院の内科(リウマチ・膠原病診療)・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方のご相談にもしっかり対応いたします。また、当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで診療を行っております。柏・我孫子エリアで全身のトータルケアをご希望の方は、かかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。
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Laux L, Sullivan J, Perry MS, et al. “Zorevunersen in Children and Adolescents with Dravet Syndrome.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: 969-982.
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