- 2026年7月19日
マダニ(軟ダニ)媒介性回帰熱:繰り返す謎の高熱と筋肉痛。NEJM症例を柏我孫子の総合内科専門医が解説
熱が下がっても油断は禁物。免疫の目を逃れて血液中で増殖する「らせん状の細菌」の罠
「数週間おきに突然の高熱や筋肉痛が現れ、病院に行っても原因がわからず、数日経つと自然に熱が下がってしまう」――そんな不思議で恐ろしい「謎の熱」の正体をご存知でしょうか。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』にて、発熱で入退院を繰り返していた74歳男性に隠されていた「軟ダニ媒介性回帰熱(Soft Tick Relapsing Fever)」という非常に教訓的な症例が報告されました。今回はこの最新の報告を、血液の中に潜む病原菌の「体の仕組み」と、アウトドアや古い家屋に潜む見えない感染症の危険について柏我孫子の総合内科専門医が解説します。
1. 自然に治ってはまた起きる「繰り返す発熱」
この74歳の男性は、発熱、筋肉痛、嘔吐を訴えて救急受診しました。来院時の体温は39.5℃に達し、激しい悪寒と発汗が見られました。実は、彼がこの症状で入院するのは、過去3週間でなんと「3回目」だったのです。これまでの2回の入院では、広範な検査を行っても原因が全くわからず、いずれも症状は数日で自然に治まって退院していました。 医師が行動履歴をさらに詳しく尋ねると、彼は症状が初めて出る1週間前の夏の終わりに、ヨセミテ国立公園にある「古い石造りの小屋(キャビン)」で2時間のワークショップに参加していたことが判明しました。
2. 血液の中を泳ぐ「らせん状の菌」と回帰熱のメカニズム
医師が彼の血液を採取し、顕微鏡で詳しく調べた(血液塗抹検査)ところ、赤血球の間を縫うように存在する「らせん状の細菌(スピロヘータ)」がはっきりと確認されました。PCR検査の結果、彼を苦しめていたのは「回帰熱」を引き起こす「ボレリア(Borrelia)」という細菌であることが判明したのです。 回帰熱とは、その名の通り「数日間の高熱と、無症状の期間が、何度も繰り返される」病気です。体内に入り込んだボレリア菌は、人間の免疫システムから逃れるために自身の表面のタンパク質を次々と変化させるという、非常に狡猾な「体の仕組み」を持っています。そのため、免疫が一度菌を抑え込んで熱が下がっても、変身した菌が再び増殖して発熱を引き起こすというサイクルを繰り返してしまうのです。
3. 気づかぬうちに刺される「軟ダニ」の脅威
このボレリア菌を媒介するのは「軟ダニ(Soft tick)」と呼ばれるダニです。日本でも山林などで注意喚起されるマダニ(硬ダニ)は皮膚に何日も食いつき続けますが、軟ダニは夜間などに数十分だけサッと血を吸ってすぐに離れてしまうため、患者さんは「ダニに刺された」という自覚がほとんどありません。 今回の患者さんも、国立公園の古いキャビンに滞在したわずか2時間の間に、気づかないうちにダニに血を吸われ、菌を移されてしまっていたのです。
4. 特効薬と「治療開始時」の危険な反応
診断がついた後、患者さんにはドキシサイクリンという抗生物質が投与され、1ヶ月後には症状は完全に消失しました。 しかし、この病気の治療には一つ重大な注意点があります。それは「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」と呼ばれる現象です。抗生物質によって血液中の菌が一気に破壊されると、菌の内部から大量の毒素が血液中に放出され、一時的に血圧が急低下したり、激しい悪寒や高熱が起こったりする恐ろしい体の仕組みです。そのため、適切な抗生物質であっても、治療開始時は医療機関での厳重なモニタリングが不可欠となります。
キャンプやハイキング、古い家屋への滞在後などに「原因不明の発熱」が現れた場合、見えない虫刺されが原因となっていることがあります。「数日で熱が下がったから大丈夫」と油断せず、全身の繋がりを的確に診ることができる総合内科へご相談ください。
柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、原因不明の発熱や長引く不調がどのような**「体の仕組み」で起きているのかを的確に分析し、詳細な問診(行動歴や渡航歴など)から隠れた感染症や自己免疫疾患を丁寧に紐解きます。当院の内科(発熱外来・リウマチ・生活習慣病診療)は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方の急な発熱のご相談にもしっかり対応いたします。また、当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで**診療を行っております。医科と歯科が連携し、全身のバリア機能を高めて皆様の健康を守り抜く体制を整えておりますので、柏・我孫子エリアで原因不明の症状にお悩みの方は、手遅れになる前にかかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。
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Lisa DePledge, Lucy Zhonglu Shi. “Soft Tick Relapsing Fever.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: e18.
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