• 2026年8月4日

【柏市・我孫子市】治らない皮膚のただれと急な「糖尿病」の悪化。「壊死性遊走性紅斑とグルカゴノーマ」の病態を丁寧に解説

皮膚は内臓の鏡。謎の痛みを伴う水疱の裏に隠された「ホルモン異常」と、手術をせずに病を鎮めた専門医の視点

「半年も前から足や背中の皮膚が赤くただれ、水ぶくれができて痛い。色々な塗り薬を試しても全く治らない」――もしご自身やご家族がこのような長引く皮膚のトラブルにお悩みであれば、それは単なる「ひどい皮膚炎」ではないかもしれません。 時に皮膚は、体の奥底で起きている重大な危機を知らせる「サイレン」の役割を果たします。今回、世界的権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』の「Images in Clinical Medicine」にて、治らない皮膚のただれから、膵臓(すいぞう)に潜む極めて珍しい腫瘍が発見された83歳女性の症例が報告されました。 今回はこの最新報告をていねいに解説し、一見無関係に思える「皮膚の病気」と「内臓の病気」がどうやって結びついているのかという「体の仕組み」と、病の根本を断ち切る内科治療の最前線について、柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 治らない皮疹と「急上昇した血糖値」の点と線

報告された83歳の女性は、6ヶ月間も続く痛みを伴う発疹を主訴に皮膚科を受診しました。彼女の足や背中、股の周辺には、赤黒く色素が沈着し、ジュクジュクとただれ、破れた水ぶくれが広範囲に広がっていました。 一見すると重症の皮膚病ですが、内科医の目を引いたのは彼女の「血液検査」の結果でした。彼女はもともと2型糖尿病を患っていましたが、たった4ヶ月前までは「6.6%」で安定していたHbA1c(過去1〜2ヶ月の血糖値の平均)が、「9.1%」へと急激に悪化していたのです。 「治らない特異な皮疹」と「急激な糖尿病の悪化」。この2つの徴候を繋ぎ合わせ、ただちに腹部のCT検査を実施しました。すると、彼女の膵臓の尻尾の部分(膵尾部)に、腫瘍(しゅよう)が発見されたのです。

2. 謎の皮疹の正体「壊死性遊走性紅斑」とホルモンの異常

組織検査の結果、この腫瘍は「グルカゴノーマ」と呼ばれる神経内分泌腫瘍であることが判明しました。 私たちの膵臓は、血糖値を下げる「インスリン」と、血糖値を上げる「グルカゴン」というホルモンを出してバランスを保っています。しかし、この腫瘍は勝手に「グルカゴン」を大量に作り出し、体中にばらまいていました。グルカゴンが異常に増えたため、インスリンが負けてしまい、血糖値が急激に跳ね上がっていたのです。 では、なぜ皮膚がただれたのでしょうか。実は、グルカゴンが過剰になると、体の中のタンパク質を強制的に分解してエネルギーに変えようとする「極端な異化作用(カタボリズム)」が引き起こされます。これにより、皮膚を作るための「アミノ酸」や「亜鉛」といった大切な栄養素が体から根こそぎ奪い取られてしまいます。その結果、皮膚の細胞が栄養失調に陥って壊死(えし)して剥がれ落ちていくのです。これが、グルカゴノーマの患者様に特有の「壊死性遊走性紅斑(Necrolytic Migratory Erythema)」が起こる恐ろしい体の仕組みです。

3. 手術以外の「体の仕組み(病態)」を鎮める内科的アプローチ

通常、このような腫瘍の根本的な治療は「外科手術での切除」です。しかし、この患者様はご高齢であることもあり、手術を希望されませんでした。 そこで医師は、腫瘍から異常なホルモン(グルカゴン)が分泌されるのを強力に抑え込む「オクトレオチド(ソマトスタチンアナログ)」というお薬を月に1回注射する内科的治療を選択しました。 効果は劇的でした。治療開始からわずか3ヶ月後には、半年間も患者様を苦しめていた皮膚のただれや水ぶくれは綺麗に消失し、HbA1cも「5.9%」と完全に正常値まで改善したのです。腫瘍そのものは残っていても、ホルモンの異常を薬で的確にコントロールすることで、全身の健康を取り戻すことに見事成功しました。

4. 木を見て森を見ず、にならないために

「皮膚の異常は皮膚科へ」「血糖値の異常は内科へ」と別々に診ていては、今回のようにお互いが密接に絡み合った「体の仕組み」を見抜くことはできません。人間の体は全ての臓器とホルモン、免疫がシームレスに繋がっています。治りにくい症状がある時こそ、全身を俯瞰して根本原因を探り当てる「総合内科専門医」の視点が命を救う鍵となります。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、患者様の症状を単なる「表面的な問題(点)」として片付けるのではなく、全身のホルモンや免疫、代謝がどのような「体の仕組み」で連動しているのかを線で捉え、隠れた重大な疾患を的確に見抜きます。当院の内科(生活習慣病・リウマチ診療)・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方の「急な血糖値の悪化」や「原因不明の長引く不調」のご相談にもしっかり対応いたします。また、今回の症例で皮膚の壊死を引き起こした「亜鉛不足」や「アミノ酸不足」は、お口の中にも『味覚障害』や『治らない口内炎(舌炎)』といったサインとして現れることが非常に多いです。当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで診療を行っており、お口の異常から全身の栄養状態や隠れた病気をいち早く察知し、医科と連携して治療にあたる(医科歯科連携)ことが可能です。柏・我孫子エリアで全身の健康管理をご希望の方は、手遅れになる前にお気軽にかかりつけ医である当院へご相談ください。

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Jia-An Hung, Ming-Chieh Lin. “Necrolytic Migratory Erythema.” New England Journal of Medicine. 2026; 394: 1430.

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