• 2026年8月2日

血流途絶の危機から肝臓を救う。「肝動脈緩衝反応」の体の仕組みと画像診断の落とし穴を柏我孫子の肝臓専門医が解説

血栓で血流が止まっても肝臓が壊死しない理由。アデノシンが引き起こす代償メカニズムと、誤診を防ぐ専門医の「目」

「急激な腹痛と嘔吐で入院し、検査の結果、お腹の血管に血栓(血の塊)が詰まっていると言われた」――このような深刻な事態に陥ったとき、私たちの体はただダメージを受けるのを待っているわけではありません。人体には、臓器への血流が途絶えそうになった瞬間に作動する、極めて精巧な「防御システム」が備わっています。 今回、権威医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』の「Images in Clinical Medicine」にて、急性膵炎に合併した門脈血栓と、それに伴う肝臓の神秘的な防御メカニズムである「肝動脈緩衝反応(Hepatic Arterial Buffer Response: HABR)」の症例が報告されました。 今回はこの最新報告に基づき、血栓症の恐ろしさと、危機的状況下で肝臓が自らを守る「体の仕組み」、そして画像診断における専門医の重要性について柏我孫子の肝臓戦も二・総合内科専門医が解説します。

1. 急激に悪化する腹痛と「門脈血栓」の発生

症例は、重症の特発性急性膵炎で小児集中治療室(PICU)に入院していた12歳の男の子のケースです。 入院6日目になり、彼の腹痛と嘔吐はさらに悪化しました。医師が造影CT検査を行ったところ、膵臓の組織が壊死(えし)して重症化していることに加え、腸から肝臓へと向かう極めて重要な太い血管である「右門脈」に血栓(血の塊)が詰まっていることが判明しました。門脈は肝臓を栄養する血流の約7〜8割を担っているため、ここが詰まると肝臓の組織が酸素不足に陥り、壊死してしまう危険性があります。

2. 肝臓を救う体の仕組み「肝動脈緩衝反応(HABR)」

しかし、この男の子のCT画像を見ると、血栓が詰まっているはずの右側の肝臓は壊死するどころか、血流が豊富になり(過灌流)、くさび状に「白く(明るく)」造影されていました。 これこそが「肝動脈緩衝反応(HABR)」という、肝臓の血流を安定に保つための生理学的な「体の仕組み」です。門脈の血流が減って肝臓が酸欠状態(低灌流)に陥ると、その局所に「アデノシン」という物質が蓄積します。このアデノシンが血管を強力に広げるシグナルとなり、もう一つの血管である「肝動脈」を大きく拡張させます。その結果、肝動脈からの血流が一気に増加し、失われた門脈の血流を代償して肝臓の壊死を防ぐのです。

3. 画像診断の落とし穴:正常な部分が「異常」に見える

この体の仕組みは、CT画像を読み解く医師にとって非常に厄介な「落とし穴」となります。 血栓が詰まっている側の肝臓が代償によって「明るく」造影されるため、隣接する『全く正常で健康な肝臓』の部分が、相対的に「暗く(造影不良に)」見えてしまうのです。この仕組みを知らない医師が画像を見ると、「暗く映っている正常な部分」を「血流が途絶えて梗塞(壊死)を起こしている異常な部分」だと誤診してしまう危険性があります。だからこそ、臓器の血流ダイナミクスを熟知した専門医の「目」が不可欠なのです。

4. 早期の抗凝固療法による完全な回復

この患者様には、直ちに血栓を溶かして血液をサラサラにする「抗凝固療法」が開始されました。 治療は功を奏し、2週間後のCT検査では門脈の血栓は見事に消失していました。血栓が消え、本来の門脈血流が戻ったことで、アデノシンによる過剰な代償反応も不要となり、肝臓の過灌流(異常な白さ)もほぼ正常化しました。退院から1ヶ月後のフォローアップでは腹痛も完全に治まり、軽度の膵臓の機能低下を残すのみで、危機的状況を脱することができました。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、肝臓内科専門医としては当然のこと、総合内科専門医としての視点から、血液検査や画像検査の結果を単なる「点」として見るのではなく、患者様の体の中でどのような**「体の仕組み」が働き、どのような代償メカニズムが起きているのかを「線」として立体的に分析し、的確な診断と治療へと結びつけます。当院の内科(生活習慣病・リウマチ診療)・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方の急な腹痛や、血栓症(エコノミークラス症候群など)のリスク管理のご相談にもしっかり対応いたします。また、重篤な腹部の感染症や炎症(膵炎など)は、実はお口の中の強い炎症(重度の歯周病など)から血流に乗って細菌が全身に散布されることと深く関連しているケースがあります。当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで**診療を行っており、医科と専門的な歯科が一つ屋根の下で緊密に連携し、お口から全身の血管・臓器を守り抜くトータルケアを行うことが可能です。柏・我孫子エリアで原因不明の腹痛や、全身のトータルな健康管理をご希望の方は、かかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。

■ 受診をご希望の方へ
👉 【医科】(肝臓専門医外来・総合内科専門医)WEB予約はこちらhttps://melmo-app.com/clinic/673d5e08785f0f0030870bdb/reservation?method=visit

👉 【歯科】(ホワイトニング・ドライマウス・膠原病関連口腔内ケア・根管治療・小児歯科など)WEB予約はこちらhttp://www.gomidental-kashiwa.com/reservation/

📞 お電話でのご予約・お問い合わせ(健康診断・ワクチンなど)

【医科】:04-7196-7531 【歯科】:04-7191-7081

🏥 柏五味歯科内科リウマチクリニック アクセス 〒277-0902 千葉県柏市大井764-1 バスでお越しの方:千代田常磐線 柏駅東口 東武バス1番乗場(「沼南車庫」「小野塚台」「手賀の丘公園」「布瀬」行き)よりバス15分 「大井」下車 徒歩1分 車でお越しの方:柏駅より約15分

Tushar Kumar, Sakura M. Noda. “Hepatic Arterial Buffer Response.” N Engl J Med 2026; 394: 1325.

■関連記事

1. 血流が悪くなる病気(血栓症や動脈硬化)のリスクが心配な方へ

今回の記事で紹介したように、血管に「血栓」が詰まることは、臓器の命を奪いかねない非常に危険な状態です。お腹の血管だけでなく、心臓(心筋梗塞)や脳(脳梗塞)で血栓が詰まるのを防ぐためには、血栓の土台となる「動脈硬化」を強力に予防することが不可欠です。最新のガイドラインに基づき、悪玉コレステロール(LDL-C)などを厳格に管理する総合内科専門医のアプローチについて解説します。

2. 脂っこいものを食べた後や、お酒を飲んだ後にお腹や背中が痛む方へ

「急性膵炎」の原因として最も多いのが、アルコールの過剰摂取と胆石です。みぞおちから背中にかけての激しい痛みがある場合、それは単なる胃痛ではなく、膵臓や胆嚢、あるいは腸の病気のサインかもしれません。全身の臓器の繋がり(体の仕組み)を立体的に捉え、見逃してはいけない危険な腹痛のサインを見抜く専門医の診断プロセスについてご案内します。

3. お薬(抗凝固薬など)を飲んでいて、抜歯などの歯科治療が不安な方へ(医科歯科連携)

今回の患者様のように、血栓を予防・治療するために「血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)」を飲んでいる方は、歯科治療の際に出血が止まりにくくなるリスクがあります。しかし、自己判断で薬を中止してしまうと、再び致命的な血栓ができる危険性があります。内科医が全身の状態とお薬を正確に把握し、歯科医師と連携して「安全に薬を継続したまま」治療を行う当院ならではの強みをご紹介します。当院の歯科は土曜日も14時まで診療を行っております。

柏五味歯科内科リウマチクリニック

ホームページ