• 2026年8月3日

心房細動の脳梗塞予防に新たな一石。最新試験(CLOSURE-AF試験)が明かす「左心耳閉鎖術」の現在地と血液サラサラ薬の体の仕組みを解説

カテーテル手術か、お薬か?出血リスクが高い患者様を守るため、世界的医学誌NEJMが示した「薬物療法の底力」

「心房細動と言われ、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を飲んでいるが、過去に胃潰瘍などで大出血したことがあり不安だ」「薬を飲み続ける代わりに、カテーテル手術で血栓を防げないか」――このようなお悩みをお持ちの患者様は多くいらっしゃいます。 心房細動による脳梗塞を防ぐためには、DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)などの「お薬」が標準治療ですが、出血のリスクが高い方にとっては悩ましい選択となります。そこで近年注目されているのが、心臓内で血栓が最もできやすい「左心耳(さしんじ)」という袋状の部分を、カテーテルを使って物理的に塞いでしまう「左心耳閉鎖術(LAAC)」です。 この手術を行えば、出血のリスクを伴うお薬をやめられるのではないかと期待されてきました。しかし今回、世界で最も権威のある医学誌『The New England Journal of Medicine(NEJM)』に、その常識に一石を投じる「CLOSURE-AF試験」の結果が発表されました。今回はこの最新報告に基づき、心房細動における血栓予防の「体の仕組み」と、専門医による安全な治療選択について柏我孫子の総合内科専門医が解説します。

1. 究極の選択を迫る「CLOSURE-AF試験」

このドイツで行われた大規模な試験には、「脳梗塞のリスクも高いが、同時に大出血のリスクも非常に高い(または過去に出血歴がある)」という、臨床現場で最も治療が難しい心房細動の患者様912名が参加しました。 患者様は、「左心耳閉鎖術(カテーテル手術)を受けるグループ」と、「医師が最善と判断した薬物治療(DOACなど)を続けるグループ」に半分ずつ分けられ、平均3年間にわたって追跡調査が行われました。目的は、手術を行うことで、薬物治療よりも脳卒中や大出血などの深刻なイベントを減らせるか(あるいは同等に安全か)を検証することでした。

2. 予想外の結果:手術は「お薬」を上回れなかった

試験の結果は、多くの医療関係者の予想を覆すものでした。脳卒中、全身の塞栓症、大出血、あるいは心血管死のいずれかが起きた割合は、薬物治療グループが「100人年あたり13.3回」であったのに対し、手術グループでは「100人年あたり16.8回」と、手術グループの方がむしろイベント発生率が高く、統計学的に「薬物治療に対して非劣性(劣っていないこと)を示せなかった」と結論づけられたのです。 手術グループでは、期待されていた「大出血の減少」も確認されませんでした。むしろ、カテーテル手術から最初の数ヶ月間に大出血が多く発生する傾向が見られました。

3. なぜ手術グループで出血が減らなかったのか(体の仕組み)

左心耳を塞げば抗凝固薬をやめられるはずなのに、なぜ大出血が減らなかったのでしょうか。その鍵は、手術後に発生する「体の仕組み」にあります。 体内に人工物(閉鎖デバイス)を入れると、それに血栓がつくのを防ぐため、術後数ヶ月間はどうしても「抗血小板薬(アスピリンなど)」を複数飲む必要があります。実は、出血リスクの高い患者様にとって、この術後の抗血小板薬が胃腸などからの出血の引き金になってしまった可能性が高いのです。つまり、「抗凝固薬」の代わりの手術が、結果的に「抗血小板薬」による別の出血リスクを生み出してしまったと言えます。

4. 「最善のお薬の調整」こそが最大の防御

今回の試験結果は、「左心耳閉鎖術が無意味である」と言っているわけではありません。むしろ、出血リスクが高い患者様であっても、専門医が患者様の「体の仕組み」を深く理解し、DOACなどの薬の種類や量を細やかに調整する「最善の薬物治療」が、極めて高い安全性と有効性を発揮するということを証明したのです。 カテーテル手術は画期的な技術ですが、すべての方に万能な魔法ではありません。お薬のリスクとベネフィットを天秤にかけ、定期的な血液検査などで全身状態をモニタリングしながら最適なお薬を選び抜くことが、皆様の命を守る最も確実な道となります。

柏五味歯科内科リウマチクリニックでは、総合内科専門医の視点から、患者様の心臓の働き、腎臓の機能、そして過去の病歴といった全身の**「体の仕組み」を立体的に分析し、心房細動に対する最も安全で効果的な抗血栓療法(血液サラサラのお薬の調整)をご提案します。当院の内科(生活習慣病・リウマチ診療)・発熱外来は土曜日の午後も17時まで診療を行っており、平日お忙しい方の不整脈のご相談や定期的なお薬の調整にもしっかり対応いたします。また、血液をサラサラにするお薬を飲んでいる患者様が最も不安に感じるのが、「抜歯」などの出血を伴う歯科治療です。当院の歯科は土曜日午後2時(14時)まで**診療を行っており、内科医が全身の血栓リスクを評価した上で、歯科医師と緊密に連携し、お薬を安全に継続しながら出血をコントロールする医科歯科連携治療を行うことが可能です。柏・我孫子エリアで心房細動のお薬に不安がある方、安全な歯科治療をご希望の方は、かかりつけ医である当院へお気軽にご相談ください。

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Landmesser U, Skurk C, Kirchhof P, et al. Left Atrial Appendage Closure or Medical Therapy in Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2026; 394: 1270-1280.

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